マルスの遺言

マルスの遺言

日が暮れる



昔の映画で主人公の少年が、ノートのページに夕暮れ、夕暮れ、夕暮れと書きつぶすシーンがあった。まさに青春を象徴するシーンだと思う。夕暮れの赤く染まった空が目に焼きついている。

年の暮れも同じだ。一年という年が、一周期終えて暮れようとしている。生き物は皆、夕暮れ時には寂しい。だから大人は仕事で忙しくしてそれを忘れようとする。年の暮れも行事や仕事で忙しくあっという間に過ぎる。

孤独なのは子供たちだけだろうか?不良たちや、遊びを覚えた年齢の子供たちは、自分で忙しさを作り出して、気を紛らわすこともできる。あるいはごく普通の子供たちも、学校や親からテストや、学期末行司や、塾なんかで忙しさを与えられるのかもしれない。

いつか見たドキュメンタリーで、若さとは、誰にも必要とされていないんじゃないかという恐怖と戦うことだと外人のスペシャリストが言っていた。そう、誰も望まれずに生まれてきた人はいない。誰も、人生に目的がなしに生まれてくる人はいない。好きなことを見つければ、目的もおのずと分かるはず。それが他人にはつまらないことでもいい。だから誰にも必要とされていないんじゃないかなんて、怖がることはない、って。

大人も子供と違って忙しいとはいえ、心の片隅では理由のない寂しさを子供や動物と同じように誰もが抱えている。家庭の主婦も、OLも、老人たちも、自分だけが抱える秘密の感情は持っているはず。それが、表に出るか出ないかの違いだ。狂気や嫉妬などの悪い形で出ることは人間として許されない。しかし、人間には孤独や寂しさも必要なのだ。誰でも”動物”?”人間”らしい幸福な問題を抱えている。いくら殺人的な仕事に追われていても、いくら押し付けられた勉強や、せつな的な遊びに忙しいとしても、人間、そうであって欲しいと思う。




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