マルスの遺言

マルスの遺言

理不尽というウイルス


自然のままならイエスが言ったように神は日々の食べ物を約束し、衣服を約束し、住居を約束してくれる。自然のままなら唐突な大波も起こらないし、海鳥は重油漏れによる被害も受けず、魚の餌に困らずに暮らしていける。唐突に自然を変えてしまうのは人だけだ。
考えてみると「理不尽」なこととは「人」だけが作り出す。

台風に遭って理不尽な思いをした、恋人に会いに行く日に雨が降って逢いに行けず理不尽な思いをしたとは普通言わない。それは理不尽とは違う。

自然による被害には、ある程度仕方ないと受け入れる気持ちがなければ生きていけない。神に対して理不尽に思うかもしれないが、神を恨んでも誰も救われない。

ネイティブアメリカンの場合、そういう仕方ないことで愛する人が死んだ時、思いっきり泣いてどれだけ自分がその男を愛していたか自分の身体をナイフで傷つけてまで悲しみを表現し、泣き通して涙も涸れた後、翌日からすっかり吹っ切って普段通りの生活に戻るそうだ。

しかし工場が汚水を流し、魚が取れなくなって漁師たちの生活が出来なくなった場合それは理不尽だ。
職場で好きな仕事をし、良く働いて上手くいっていたのに嫌な上司がいて理由もなく自分を追い出そうとしている、それは理不尽だ。
PCにメールが来た、開けてみたらウィルスに犯された、それは理不尽だ。
高度成長期に木材の確保を狙って植えた杉の木が今、使い道を失ってほったらかしになった結果、多くの花粉症の人々がスギ花粉で悩んでいる、これも理不尽だ。
乗った飛行機が整備不良で事故を起こし、夫が亡くなった、それも理不尽だ。
黒人であるという理由で日常的に差別され続けている、それは理不尽だ。
戦争で多くの人が死んだ、それは理不尽だ。
理不尽とは「人」が作り出す。

理不尽とは心の中の葛藤を現す。それが無ければ、こんなことにはならなかったのに。それとは自然ではなく、人が作り出すもの。
理不尽は大きなストレスになる。
ストレスは病気の元で、人を大きな病にし、死にまで至らしめる。
よって理不尽は人を殺す。
精神的にも、物理的にも、間接的にも。
理不尽は世の中を不幸にする。

自然のままの世界はもはや存在しない。
しかし考えてみよう。それが”もし”自然なままだったら・・・。
それを具体的に考えれば、何が不自然か、目に見えるように分かってくる。

人が起こす理不尽こそが、地球のウィルス(害)になっているのかもしれない。






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