マルスの遺言

マルスの遺言

インドでこんな夢を見た



仏陀のゆかりの地、アショーカ樹の下で誕生したネパールのルンビニ、お城跡のカピラバァストゥ、悟りを開いたブッダガヤの菩提樹、スジャータに救われたネーランジャラー河付近、等を巡ろうとインドを旅している途中である。

鹿野苑では、覚醒した仏陀の初めての説法が行われたところである。

私は、古ぼけたホテルの一室で、明日そこへ向かうことを楽しみにして寝た。

鹿野苑とは、鹿の原という意味で、かつては野生の鹿が沢山いた場所だった。

私はそんなことを知ってかしら知らずか、鹿の夢を見た。

なぜか夢の中で私は見知らぬインド人の少年と歩いていた。
そして、突然林の中から現れた鹿に驚いて少年が私に「見て!見て!鹿だよ!鹿が出たよ!」と指差した。

目が覚めた私は、あまりのリアルな夢に現実のような錯覚を覚え、その理由を必死で考えた。

まず、インド人の少年なんて知り合いもいないし、ましてや鹿なんていくら鹿野苑でも今の時代に野生の鹿がノコノコと人の目の前に現れたりはしないだろう・・・とそれ以上深く考えることはしなかった。

私は鹿野苑へ向かうバスで、二人のインド人少年と出合った。

日本から持ってきたガムを不思議そうに見るので与えたら彼らは親しげに話しかけてきて最終的に鹿野苑の案内を買って出てきた。

私は断る理由もないので二人と一緒に園内を回ることにした。

と、そこに、小さな動物園があった。彼らはここによく来るというので私は二人と共に入った。

回っていると鹿が出てきた。そして、少年が指差した!「見てみて!鹿だよ!鹿が出たよ!・・・あんたはラッキーだね!」って。

まったく夢と同じ少年のポーズと笑顔で、林から出てきた鹿の位置も、構図まで一緒だった。

「あ!これだ!昨日夢で見たよ!まったく同じだよ!・・・君がこうやって指差して!・・・」お兄ちゃんの方が照れくさいように笑い出したので私も恥ずかしくなって止めた。

でも、夢で見たのはこの状況だったのだ。

まったく不思議なことがあるものだ。インドを旅していると不思議なことが数多く起こる。

大したことではないし、勘違いじゃないの?って思われればそれだけの話だが。

でも二人と別れた後、私は大勢のインドの子供たちに助けてもらうことになる。アイスクリーム売りのおじさんから!

彼らは皆、仏教徒だといっていた。インドでは迫害されている少数派だ。

バスに乗った私を走っていつまでもいつまでも追いかけてきて手を振った彼らのことを、私は忘れないだろう。





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