ももも。のおスイス暮らし

ダンナのためにできること。




ダンナのために私にできること。






      実はダンナが入院した。


      理由は「胆石」。



      幸い、まだ石は胆嚢内にあって、胆道に石が詰まる前に見つかった。
      詰まると相当な痛みが起こるらしいし、さらにひどいと破裂することもある。



      今回ダンナが入院することになって、とても考えたことがある。
      自分の気持ちの記録として、ここに書き留めておくことにする。






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      症状が出たのは12日の木曜日。
      15時半頃からお腹が痛み出したらしい。
      その日は地元でマーケット(日本で言うところのお祭りの出店)が出ていて、
      そこでご飯を食べようと、17時に待ち合わせをした。

      ダンナは「お腹が痛むから食べれない、長時間うろうろできない。」と言った。
      ふたりとも、ちょっとした食中りだろうと思っていた。

      でも歩けば歩くほど、痛みが徐々に増え、私はスーパーで買い物をしたかったので、
      ダンナを先に家に帰らせた。横になっていれば治るだろうと思っていたし。


      家に着くと、ダンナの症状は悪化していて、トイレで吐いていた。
      そしてベッドの上で「痛い、痛い」と丸くなるダンナ。

      痛がり方が普通ではないと察した義母が、まずホームドクターに電話をした。
      義母はすでに石ではないかと思っていたそうだ、義父も10年前にやっていたから。
      すでに時間が遅かったのもあるが、木曜日の午後はたいていの医者は休診日。
      ホームドクターには連絡がつかなかった。
      そして街の緊急医に連絡をしてくれ、タクシーを呼んで、3人でそこに向かった。


      緊急医で超音波をして、石が見つかった。
      そのまま紹介状をもらって、カントンシュピタール(県立病院)行きとなった。

      看護士の問診後、栄養の点滴、そしてドクターの診察後、痛み止めの注射と
      点滴に痛み止めが加えられた。
      その後、超音波検査。

      そして入院が決まった。すでに23時だった。





      この日にすごく思った。

      「私に何ができるのだろうか」と。



      まず、義母がいなければ、緊急医やタクシーの手配もできなかった。
      電話番号さえも知らない。
      二世帯住居でなかったら、ダンナはどうなっていたのだろうか。


      私は車の運転さえもできない。
      この家ではダンナしか運転できない。
      だからダンナがこうなった場合、タクシーを呼ぶしかない。
      もし私が運転できていたら、もっともっと早く医者にたどりついていただろうに。


      そして幸い、痛みに苦しみながらも、ダンナの意識はしっかりしていて、
      自分で症状を医者や看護士に伝えることができた。
      もし、ダンナがもっと重症だったら、私は代わりに伝えることができたのだろうか。


      問診はすべてスイスドイツ語。
      そのやり取りはたまに推測はできるが、全部はとんでもわからない。


      代わる代わるいろいろな医者が来たが、中にはドイツ人もいた。
      もちろん標準ドイツ語をしゃべっているのだが、早すぎてわからない。
      そして専門用語もわからない。




      本当に私はダンナの横にいるだけだった。
      そこにいて、ダンナの手を握ったり、さすったりすることしかできなかった。

      私は彼の奥さんなのに、こんなことしかできない。
      悲しかった。

      カルテに「妻」として、私の名前を書かれたのも恥ずかしかった。
      やり取りを全部理解できず、アホみたいにその場にいるだけだったから。

      彼にとって、私が横にいるだけで安心するのはよくわかる。
      精神的に。

      でも行動では何の役にも立たない。
      ここがもし日本だったら、全然問題なくこなせたことなのに。





      スイスに移住して、2年弱。
      いきなり全てがこなせるようになれないのは、よくわかっている。
      焦っても仕方がないのも、よくわかっている。


      でもやっぱり、もっと努力をしないと。
      いつまでも人に頼ってばかりじゃいけない。
      もっともっと自立をしないと。

      今まで避けてきた車の運転の練習も始めよう。
      ドイツ語ももっと頑張らなくては。
      スイスドイツ語も理解できるように頑張らなくては。
      将来子供ができて、病気になったとき、おろおろしてられない。
      自分がしっかりしていなきゃ。


      私が彼を守らなきゃ。
      私の大切な家族を守らなきゃ。
      精神的だけじゃなくて、行動でも。

      スイスにおける自分、強くありたい、強くならなきゃ。
      もっともっと、ここスイスにしっかり足を踏ん張って生きていこう。



      ダンナの手を握りながら、そう思った。



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      入院した翌日に手術の予定だったが、急患が何件か入って、結局土曜日の夜になった。
      手術と言っても、開腹手術ではなく、数箇所お腹に穴を開けて内視鏡を入れて、
      モニターを見ながら、石のある胆嚢ごと切除する。
      開腹ではないので、傷の治りも早く、退院も早い。

      今朝電話があって、手術も無事終わり、朝食にヨーグルトを食べたし、
      自分でトイレも行けたそうだ。

      面会時間は13~20時なので、私も一日中病院にいるわけではないし、
      手術室の前で手術が終わるのを待つ、とかいうのもできない。


      でもいれる限り、彼の横にいる。
      彼には私が必要だし、こういう時こそ、私もそばにいたい。




      それが今の私にできること。





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