2004年08月28日
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「…ん?」
どこか…すぐ近くで、何かが鳴っている。
「…携帯電話?なんでこんなところに…」
手に取ろうとしたその時。
『ダメッ!!』
彼女のあまりにも大きな声に、『僕』は驚いて彼女を見つめた。
彼女は、ゆっくりと、電話を手にとり、ボタンを押した。
『…はい…はい…分かっています…はい…分かりました。戻ります。』
なんだか、あまりいい話ではないようだ。しばらくすると、彼女は電話を切り、ゆっくりと、『僕』を見つめた。

「え?どうしたんだい?突然。」
『時間が来てしまったの。私は戻らないと。』
「行くって言われても…どこへ?」
『迷う事はないわ。ほかに行くところはないんだから。』
「でも…えっ?」
『僕』は自分の目を疑った。
今まであった、普通の風景…それが、目の前から消えていた。
右も左も、見渡す限り水…
これは、海ではないらしい。塩の匂いが、まるでしないのだ。
だが、更に不可解なのは、ちょうど『僕』と彼女の分、2人分の道が、なぜかまっすぐつながっているのだ。
水は、僕達の頭の上の高さまで、水はあるというのに。

『私…行かなくちゃ。』
「どうして…どうしてだよ?僕は、もっと君と話がしたい。僕が忘れているいろんな事を、君の口から教えて欲しいんだ。」
『ごめんなさい。それは、できないの。私は『こちら側』の住人じゃないから。
私はまだ、貴方の世界には行けないから。』
「…」

「…分かったよ。とにかく、僕は行くしかないんだ。
この先に何があるのか、分からないけど、行ってみるよ。
どうせ、死んでる身なんだ。何があっても驚きはしないさ。」
『…それじゃ。』
「ああ。」

~~~

『僕』は、彼女と別れた。
左右、そして後ろも、水に囲まれている。
…ふう。
前に進むしかない、か。
『僕』は、1人で、歩き始めた。





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最終更新日  2004年08月28日 21時58分11秒
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Re:夢幻回廊:6(08/28)  
桜紫OKEI  さん
★前に歩き出すしかない。
そう、ひとりで―


★こんばんわ。

急に涼しくなって・・こうなると寂しいですね。
(わがまま!)


風邪ひかないように、ね。

(2004年08月28日 23時39分20秒)

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桜紫OKEI @ Re:夢幻回廊:6(08/28) ★前に歩き出すしかない。 そう、ひとりで…
桜紫OKEI @ Re:夢幻回廊:5(08/25) ★わかった。 元気でいること!   …
桜紫OKEI @ Re:夢幻回廊:4(08/23) ★きちんと情景が読んでとれますよ。 今…
唯音☆ @ おひさしぶりです♪ 届いてほしい願いって届かないですよね。…

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