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2006.01.22
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サトシの怒鳴り声が車内に響いた。
うるさい奴だ。
車を運転しながらイクオは心の中で呟いた。
初対面なので、元々話すこともないが、話したとしても会話が続かないだろう。
誘拐事件という大胆なことをしでかして、簡単に会話など出来るわけない。
サトシの投げかけに反応しないのはそのためだ。

後部座席でサトシは怒り、ようやくテツが口を開いた。
「聞こえているよ、サトシ」
テツが助手席から振り返って言った。

なだめる様に、だが睨みを効かせた。

「だ・だってよぉ・みんな無視なんだもんな~」
熱しやすく冷めやすいタイプなのか、サトシは怒ってはみたものの、すぐにトーンダウンした。
最後には声が小さすぎて何を言ってるのかわからなくなった。

「・・・・で?なんだ?」
溜息をついてテツは聞いた。
もう振り返ってはおらず、前を見据えていた。

「・・い・いや・大丈夫かな・・と思ってさ」

「なにがだ?」

しばらく言うのかどうしようか迷った後、サトシは口を開いた。
「あいつを・・こんな・・誘拐なんて」


我々は、世間でも最高に有名な人間を誘拐したのだ。
つい1時間前のことだ。

テツは振り返った。
今度は明らかに怒りに満ちた顔だ。
「今更何言ってやがる」


「じょ・冗談だよ!冗談!」
慌ててサトシは訂正し、窓の外へ顔を向けた。
それからは口を開かなくなった。

車内はまた静けさで覆いつくされて、イクオは運転に集中できた。

つづく

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第1回





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最終更新日  2006.01.22 22:25:02
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