Mystery Novels

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2011.06.01
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 黄昏刻の学園都市。
 常盤台中学一年生の婚后光子は、『学舎の園』の街の中にある薄暗い路地を歩いていた。
 そして、足を止める。振り向く。
(……?)
 人の気配を感じるような気がするのだが、何度振り返っても背後には猫一匹いない。
 そして原因を探るのを諦めるように前を向き、また数歩歩く。しかし、すぐに立ち止まって再び背後に視線をやった。数秒の静寂の後、婚后は思い切って口を開く。
「どなた? 私を常盤台中学の婚后光子と知っての狼藉ですの?」
 梅の文様があしらわれた扇子を広げ、口元に翳した。そしてそのまま警戒するように、後方に足をにじらせていく。と、
 ドン! と、身体が何かにぶつかった。

 ビリッ!! と、脊髄に衝撃が走った。
 扇子が宙を舞い、鈍い音が響く。数秒後、そこには意識を失った婚后が仰向けに倒れていた。そして、彼女の頭の傍らに立つ少女が一人。しかし、その制服は常盤台のそれとは異なるものだった。
彼女は婚后が気絶したことを確認すると、薄く薄く笑みを浮かべた。

「楽しみですね……『学舎の園』!」
 天気は雨。
 滴がガラス窓を斜めに伝うバスの中に、初春と佐天は乗っていた。
「って言ってもさ。それって、女子校が集まってるだけの街でしょ?」
 目を輝かせる初春に、佐天が冷静な声で突っ込む。
「その集まってる学校が、普通じゃないんじゃないですか! 常盤台中学は勿論、どれも名だたるお嬢様学校ですよ!?」
「そりゃそうだけどさ……」
「今日は白井さん達が招待してくれたから入れますけど、そうじゃなかったら私みたいな庶民は、一生縁が無い場所なんですよー……」

「卑屈だなぁ……大体初春はさー、」
 と、初春が佐天の鞄からはみ出ている『四角い何か』に視線を止めた。
 そして気付く。佐天は頬に一滴、汗が流れていると。
「あれ、これって……なーんだ。佐天さんだって、今日行くケーキ屋さん、チェックしてるじゃないですか」
 一瞬で赤面させた佐天は拳を強く握って熱弁を振るう。

「……佐天さんって、意外とミーハーなんですね」
 ぐっ、と言葉に詰まる佐天。その時、バス内のアナウンスが流れてきた。
『えー、次は学舎の園入口、学舎の園入口です……』
「あ、」
 ポーン、という音と共にチャイムが点灯し、バスの速度が徐々に落とされていく。
 憧れのお嬢様学校はもうすぐそこだ。





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Last updated  2011.06.02 00:55:07
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ドクターマーチン@ Re:イメージつくけど名前が分からない! なクイズも ――第17回(04/10) 1980年代には、ファッションデザイナー、…
鳰原公尚@ Re:「鳰原」さん(01/07) このみよじは、群馬県渋川市(旧 子持村 …
松田統 @ Re:コメント失礼します☆ masashi25さん コメント有難うございま…
masashi25 @ コメント失礼します☆ ブログ覗かせてもらいましたm(__)m もし…

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