旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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かくも長き不在  過去を持つ愛情


  1.≪かくも長き不在≫
  2・≪過去を持つ愛情≫

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1.≪かくも長き不在≫

昨夜は久しぶりに仏映画を見ました・
アリダ.バリが圧巻の《かくも長き不在》

1961年度作品
監督  アンリ.コルビ
出演  アリダ.バリ/ジョリュジュ.ウイルソン


1961年度のカンヌ国際映画祭の
グランプリ受賞作品である・

テレーズはパリの下町でカフェを営んでいる。
彼女に心寄せる男もいて、バカンスに誘われている。
一緒に行っても良いかなと思ってはいる。

彼女は一応未亡人である。
第2次世界大戦後戦地に行っていた夫はゲシュタポに捕らえられ
死んだと聞かされていた。

が、この2,3日店の前を通る浮浪者にふと
夫の俤を見た。

川のそばに住んでいるその男を訪ねてみて、テレーズは
夫だと思ったが男は記憶喪失であると知った・

彼女は戦前イタリアに夫と住んでいたが今は
こうしてパリにいる。

イタリアの親族に会ってもらうため男を店に呼んで
知り合いに似ているからと
イタリアでの暮らしなどを聞かせたが
無反応でなにも思い出す風はない。

おばさんという人も”もし仮に夫アルベールだとしても
今は別人さ”と言う。

が、優しかった夫との昔の生活を思い出すにつけ
どうしても彼に記憶を取り戻してほしいが、彼女は彼に
私はあなたの妻よとは言わない。

記憶を取り戻して妻だと気づいて欲しい.

食事に招いて過去のことを話すが記憶は戻らない。
好きだったチーズも用意した。
もちろん好きだったワインも.

二人でよく聞いたシャンソンをジュークボックスで
聞くが、曲は覚えているのに記憶は戻らない。

彼は戻そうという気力もなくテレーズをただ良い人だとしか
言わない。
二人で想いでのダンスを踊る.
彼の頭に触った時に傷跡に気づく。
彼である証拠だ.
胸がいっぱいになるがどうする術もない。

店を出ていく夫に後ろから”アルベール”と叫ぶ。
店の常連客も心配して来ていて一緒に”アルベール、止まれ”
と叫んでくれたその時、彼は立ち止まって両手を上げる。

戦時中の断片的な記憶が戻ったのか突然おびえて走りだし..
真正面から車のヘッドライトが....

命に別状はなかったが、彼は町を出ていった。
彼女は呟く”冬になったら又、戻ってくるわ、それまで
待とう”と.

これは女性の側から見た戦争の傷後を見つめなおした映画である。
それまでになかったものだ.

淡々と、だが緊張を盛り上げていきながらの演出である。
アルベール役のJ.ウイルソンが無表情のなかに
哀しみを漂わせ、
アリダ.バリが過去の思いでと現在のせめぎというか
解決しなくては戦後が終わらない、その苦しみに立ち向かう女を
力演している・
日本の女優にはない凄みがアル.

二人が誰もいない片付いたカフェで《三つの小さな音符》という
曲をバックに、ダンスを踊るシーンの悲しさが感動的でした。
ちょっと余談だけどダンスシーンで素敵なのは、
セント.オブ.ウーマンのアルパチイーノがタンゴを
踊るシーン..素敵だったわん!

そして店を出ていく彼の背中に彼の名を呼ぶその哀しさが
切なくて.....泣

アリダ.バリ....
プロパガンダ...政治的宣伝映画のこと...への出演を
拒否した強い意志を持つ女優。

彫りの深い顔立ちはノーブルでもあり、凄みでもあり
クールでもアル。張り出たおでこに鋭い眼光..
独特の雰囲気を持った魅力的な女優である。

第三の男でのクールさ、
愛の嵐 での愛に狂った恐ろしいまでの業の深さを演じた彼女が

この映画では地味であるが貞淑で深い愛で夫の帰りを
待ったいじらしいが高貴でさえある女性を見事に演じている。

ご覧になっていない方は是非、
観ていただきたい仏映画の佳品です.


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2.≪過去を持つ愛情≫

ファドというジャンルの音楽をご存知でしょうか。
アマリア.ロドリゲズスという歌手が

映画≪過去を持つ愛情≫の中で歌って日本でも大ヒットした.
その後、知る人ぞ知るジャンルの音楽となってしまったが、
CDというものが出始めた時にすぐに買い求めた。

数年前に引退後何年振りのNHKに出演したちあきなおみが
このフアドなるものを絶唱した。

歌唱力とその人の持つ雰囲気が
絶対に影響するジャンルのものであるが、
さすがであった.

ポルトガル版民謡とでも言おうか。
その哀愁を帯びた歌声とロドリゲスの雰囲気はなんと形容したら
よいだろう?

一度聴いていただきたいな.
そして≪過去を持つ愛情≫も
メロドラマでもあり、サスペンス風でもある、、
1950年代、オードリー.ヘップバーンがハリウッドに
登場したときでさえ、この映画の主役の
フランソワーズ.アルヌールは彼女をしのいで
日本人には人気NO.1であった.

卵型のこ作りな顔立ち、広いおでこ.
小柄でもグラマラス.。
まさに日本人好みの美少女の典型であった。

そう、仔猫のような女性。
過去を持つ愛情の 後の≪ヘッド.ライト≫で演技者としての
評価を決定的にした.

≪ヘッド.ライト≫はまた後日、紹介するかも?で
今日はこの≪過去を持つ愛情≫を簡単に紹介します。
映画も良かったが、それよりなにより
フアドに出遭えたという事でまず、印象深い作品なのだ.

    ≪過去を持つ愛情

ストーリーは.。
ポルトガルのリスボンで出遭った二人...
ピエール(ダニエル.ジュラン)は自分を裏切った妻を殺した。
キャスリーン(フランソワーズ.アルヌール)は夫を亡くし、
莫大な財産を相続。

ある日、家にいたキャスリーンのところに
家具を配達に来たピエールがこの魅力ある未亡人に
普通の女性と違う魅力を感じたところから、接近していく展開。

お互いに暗い過去をもつ身で愛し合うようになるには時間が
かからなかった。
しかし、ロンドン警視庁のルイス警部(トレーバー.ハワード)は
彼女の夫の事故死は彼女が手を下したものと確信していて
追いまわす。

ピエールは最初、ルイス警部の尾行を気にしていなかったが
次第に彼女の行動に疑問を持つようになる。

とうとう、キャスリーンはピエールに真実を告白。
二人は逃げるしかないと南米行きの船に乗るが、

二人を引き合わせた”過去”が今度は二人を裂こうとする....

そして、本当に夫を殺したのかどうか
今だに分かりませんの。

アルヌールの魅力いっぱい。
きっとみなさんも好きになると思います.
ハリウッドの人工的な美貌や容姿と比べて
極めて人間臭い、ヨーロッパの女優さんたち.

この後に作られたヘッド.ライトは老優、ジャン.ギャバンとの
共演、これはストーリーよりもギャバンとアルヌールが
そこにいるだけでドラマテイックになった佳品である.

しかしこの≪過去を持つ愛情≫はギャバンという大物ナシで
アルヌールの魅力をたっぷりと味わっていただきたい映画である.
そして、二人がデイトをするクラブでロドリゲスが切々と
歌う♪暗いはしけ♪にドラマは情緒満点になるのです.

制作  仏  1954年度
監督  アンリ.ヴエルヌイユ
出演  フランソワーズ・アルヌール/ダニエル.ジェラン




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