旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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≪地下室のメロデイー≫




初めて手にしたジャズのEPレコードは
高校時代に父から買ってもらったフランス映画のテーマ曲
4曲入りのものでした。
その曲は
”危険な関係のブルース”
”墓につばをかけろ”
”殺(や)られる”
”死刑台のエレベーター”でした.
アートブレーキーの演奏する歯切れのいい
危険な関係のブルースのとりこになり、
物悲しい、マイルス.デイヴイスのトランペットが
奏でる死刑台のエレベーター.

1950年代後半からサスペンス映画にJAZZが
用いられるきっかけを作ったのが、
この死刑台のエレベーターであろう。

ルイ.マルのシャープな映像とマッチして、マイルスのプレイは
相乗効果を増し、モダンジャズを好きになった人は多いと思う。

かくいう私もそのうちの一人である。
レコードやの友人から、試聴盤というヤツを頂いたり、
まずはこの映画音楽のテーマ曲、フランス系のJAZZからの
入門でした。

まあーモダンジヤズ゙ーについては
またの機会に述べることにして、
今日はそのトップシーンで、歯切れの良いジャズのプレイに乗って
5年の務所暮らしを終えて、すっかり辺りの変わった
寒々とした風景の中を家路に着く老ギャングの
ジャン.ギャバンの登場から始まる作品.
≪地下室のメロデイー”≫を紹介しましょう。

アラン.ドロンのたっての願いで、ギャバンとの共演が
実現した、カジノを襲撃する老ギャングとチンピラ青年の
共謀による完全犯罪を目論むストーリーである。

宝石のようなシチュエーションのラストが待っています。

ストーリーとしては単純なもので珍しいものではないが
主導権を握るギャバンの渋さと使われるドロンが
どの角度から映してもハンサムで顔に眼が行ってしまい
それだけでも充分満足しました。.

ギャバンを待っていた妻は結婚してから2度も刑務所の
お世話になっている彼が刑務所に入るときに残していって
くれたお金には殆ど手をつけていない。

そのお金を元手にどこか海辺の小さなホテルでも買い取って、
二人で老後をゆったりと暮したいと願っていた。

しかし彼はやすっぽいホテルを経営して、安月給取りから
お金をむしり取るようなケチな商売などしたくはないと言う。

また、大きな悪さを企んでいるようだ。

昔からの仲間と連絡を取るが、彼は病み上がりで無謀なことは
体力的に無理だと言って、
あるカジノの図面をくれる。

その相棒として白羽の矢があたったのは、
ドロン扮する親のすねかじりのアンチャンであった.

それから、どうやってカジノの金庫まで行き着くか??
まず、エレベーターの箱の上から屋上へ出て、
屋上から通風パイプを潜り抜けて...。

途中、ブリキのパイプがネットに変わっている所があり、
網の上を這いながら下を見ると、そこはカジノのど真ん中で
タキシード姿の男たちがプレイをしている。

上手く金庫から札束を持ち出し、鞄をトイレの
普段使われていない物置に隠し、
着替えて何食わぬ顔で、賭博場へ向かうドロン。

それぞれ、バラバラに部屋をとる。

一晩明けると、
新聞にでかでかと強奪事件の記事が写真入で出ている。
写真の右端にはドロンさんがちゃんと写っている。

別に落ち着いて考えれば客の一人であるから
慌てることもないのだが、
ギャバンは1週間ほどおとなしくして、それから
ズラかるつもりでいたのが
計画が狂ったと言う。

両手に鞄を提げてホテルのプールサイドへ来ると
そこには何人もの刑事たちが、
屋上にいる男と話したりしている。
どうやって金庫へ辿りついたかを発見したようで、
プールサイドにじわーっと座っているドロンの耳に
刑事たちの話す内容が聞こえる。

どうやら今度はどんな鞄だったかと....
またぞろ、じわーっと鞄をイスに引き寄せ見えないように....

そして、プールを挟んだ向こうにはキギャバンが
サングラスの下の眼でじーっとドロンと刑事の動きを見ている。

さーーて困ったドロンはどういう手を??
鞄をプールにそろっと入れたのですね。

サングラスの下の目はドロンに”何をするんだ!このバカが”
と言っているように見えます。

鞄は布製なんです.
刑事たちは引き上げていきました。

慌てて浸けることはなかったのよードロンちゃん!
そのとき、あれ、なんていうのかしら?
要するにプールの水を増やす為に口が開いて、
水がぶくぶく入り出したのね。

ホテルマンが叫ぶ。”おーい見てみろよ””いいから見てみろよ”

4,5枚の札が固まって浮いてきたかと思うと、
鞄の口が開くのが見えます。
見る見るうちに札束が水面いっぱいに広がって水面は札面と
化したのであります・
刑事は引き返して来て、人々が騒ぎ出し、背を向けて下を向いた
ドロンの背中は”畜生!せっかく苦労して...。”と
言っているようで、
お向かいのギャバンは”バカタレが!フイにしやがって”と
言わんばかりに持っていた新聞を広げて読む?のでした.

せっかく苦労して手に入れたお金が意外な展開となり、
パーになってしまったこのラストは”宝石”でした!
ラストの音楽は曲は同じなんだけど
コンチェルト風にアレンジされていて、
葬送曲のようでありました!

お気の毒!

プールサイドの場面が結構長くてハラハラどきどきで
結構上手く出来てますよ。

リアルタイムで見ているのですが、改めて観てみると
音楽とこのラストはしっかり覚えていたのに
途中は記憶になくて楽しませてもらいました。

制作  仏 1963年度
監督  アンリ.ヴエルヌイユ
出演  ジャン.ギャバン/アラン.ドロン



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