旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪太陽はひとりぼっち≫



さて、今日の映画日記は、
   ≪太陽はひとりぼっち≫です。

ミケランジェロ.アントニオーニという監督の作品、
わたしは
今日紹介する≪太陽はひとりぼっち≫と≪情事≫という作品しか
見た事がないんですね。

1962年度作品。
といえばまだまだドロン様は27歳。
とっても美しいです。

ストーリーは不毛の愛を描いたモニカ.ヴイッテイーの
渇いた愛を焦点に描いた作品で、
多分アンとニーオーニという監督の
カラーなのだろうと思うが、
見る人にとっては非常に分りづらいだろうと思われます。

1962年といえばフランスではヌーベルバーグが台頭し始め、
イタリアでは高度経済成長の真っ只中で
世の中が退廃の陰りを見せた時代でもアル。

同時期に活躍したフエデリコ.フェリーニにと並び、
世の退廃をテーマとした映画作りをしていたのではないだろうか。

フェリーニの甘い生活や、8.1/2に見られる
社会の退廃を描いた作品を見てみるとなるほどと思うからである。

画像はまるで、写真のカットを繋ぎ合わせたような流れ、
乾いたコンクリートのビルの谷間、ひと気のない公園、
濁った水溜りをモノクロで映し出す。

それはあたかも人の心がそうであるように映る。

主人公ヴエロニカ(モニカ.ヴイッテイー)も
そういった社会の乾きに飢えたように
投げやりで、愛にものめり込む事が出来ない心の疼きを
感じながら毎日が過ぎてゆくといった

見るものが共感できないようなヒロインである。

しかし、共感する必要はない。

なぜなら、そういった社会の落とし子であるからだ。

ブルジョワの男と同棲し、その愛に応える事が出来ずに
一方的に別れを告げ、母の元に帰る。
その母も株にのめり込み大損をするがそれを冷ややかに見るだけ。

母の株を世話していた証券の仲立ちマンのドロン扮する
ピエールとは顔見知りで、母の件から、急速に親しくなる。

ピエールはヴエロニカのはっきりとしない態度にも
ふたりはピエールの事務所で結ばれるが、
ヴエロニカの本当の愛なのか、芝居なのか迷う。
”明日も会える?明後日も会おう、明々後日も会おう”と
二人は約束する。

そういった軽い行動を起こしているように見えて
ヴエロニカは何かを捜し求めているように思われる。

その心が画面に映る乾いたコンクリートの壁やビル、
ひと気のない公園や、大型団地の群れ
そしてかなり長い間映し出される証券取引所の中の様子で
代弁されている。

こういった証券取引所の中の虚構の金の動きをも
ドライだとみなす監督の意図と見るべきなのであろう。

30年ほど勤めた最後の会社に入る前に
私は二度ほど会社を変った。
そのひとつに某放送局の株の担当をしていた事があって
証券取引所のブースのなかに毎日缶詰になっていた。

その時の会社の上司から言われた若い私たちへの言葉は
証券取引所の若いアンちゃんたちの
誘いに乗ってはいけないといわれたことである。

今思えば吹き出すような言葉だが、その当時は忠実に守った。
それこそ高度成長時代の花形の職業で金回りの良い
お兄さん方には遊び人が多かったようであった。
そんなこともあって、
この作品の意図する長いショットはよくわかるのである。

あの巧妙な手の動きも、今でもわかる。

一瞬に動く大金をひとのお金でありながら自由に動かす事を
職とし、その乾いた館内はまるで怒涛のように活気がある。

しかし裏のうつろもまたしかりである。

そういった乾いたものをヒロインに投影すれば
分りやすい作品とも...言えるのではないだろうか?

そういった中でこの作品はやはりドロンの美しさであろう。

この監督もドロンの美しい顔のアップを余すところなく
映し出す。
真正面の整った顔。横顔のまつげの長さ。
形の良い鼻。形の良いあご。ふさふさとした髪。形の良い眉。

このヒロインの相手が何故ドロンなのか?
乾いた館内でもひときわ目を引く美しい青年。
そんなにも美しい青年でさえも、ヴエロニカの渇いた心を
繋ぎとめる事は出来ないのか...?

気を引きながらも、
さらりと交わすヒロインを
追い求め、振り回され、結局彼女の心をつかめない。
しかし、明日も今日とかわりなく日は過ぎてゆく....

カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞している。

9,10,11月と一連のドロン作品を紹介しまして、
今月はいつもと違う彼の作品が並びます。
フランスの監督の作品もこの他にジュリアンデヴイヴイエの
≪フランス式十戒≫や、≪悪魔のようなあなた≫も
まだ紹介していません。
≪太陽が知っている≫、≪世にも怪奇な物語≫、
≪カサノヴアの恋≫、≪百一夜≫、≪スワンの恋≫
≪ジェフ≫,≪リスボン特急≫、
≪ショック療法≫
といった作品が残っています。

その中から何本かを
残りの日々に紹介したいと思っております。

考えてみると初期の彼の作品を監督している面々は
そうそうたる監督群ですよね。

それらの作品はページ一覧の
アラン.ドロンの部屋でご覧になってくださいね。

昔、彼のことに触れた誰だったかは忘れましたが、
彼ら監督達はドロンを大事に大事に撮っている・
これは他のスターには見られないことだと...

今1960年代のドロンのポスターが馬鹿売れだとか、
面白い現象ですね。わたしも欲しい!!

どなたかお持ちではないですか??
額にいれて飾りたい!!



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