旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪噂の二人≫


    特集2作目は

        <噂の二人>です。

怖い映画である。
ひとりの子供の嘘が三人の一生を狂わせ、別のひとりの少女の心に
深い傷を負わせた。

元には戻らない...

<ローマの休日>で初々しく,瑞々しいオードリーを
世界の恋人に仕立て上げた、ウイリアム.ワイラー監督の作品。

そして、やはり<ローマの休日>のフリッツ。プラナーが
モノクロでこの閉鎖的な町を陰鬱に撮り、
しっかりとした台本に守られ、
オードリーとシャーリーの苦しみの表情を
哀しくそして美しく映し出した名作である。

前半は原作の<子供の時間>のとおり,
二人の子供の性格に焦点をあて、
作品の問題点のきっかけを作るまでを、

後半は被害を受けた二人の女性の
心の葛藤を徐々に,徐々に盛り上げクライマックスへと運ぶ。

追い詰められ,追い詰められての悲劇のラストへと一気に向かう、
オードリーとシャーリーの迫真の演技が見ものである。

ストーリー

カレン:オードリー.ヘップバーン
マーサ:シャーリー.マックレーン
ジョー:ジェームス.ガーナー


カレンとマーサは学生時代の同級生で一緒に
緑溢れる郊外で、
寄宿学校を経営している。

マーサの叔母のモールは売れない舞台女優で
文無しになってここに転がり込んでいる。

疫病神にようなこの叔母は減らず口、余計なおしゃべりが
誤解を招くような事ばかりする。

カレンにはテイルホード夫人の甥で医師の
ジョーという恋人がいる。

寄宿学校の生徒は10歳から13歳くらいか。
テイルホード夫人の孫娘のメアリーは病的なほどのわがままな子で
嘘と権力でカレン先生とマーサ先生をいつも困らせている。

それは普通の子供が困らせるような種類のものではなく、
他の生徒に影響があってはならないほどの悪質なもので
ほとほと困っていた。

叱責すればそれは何倍もの仕返しとなって
返ってきた。

そして、自分は二人に嫌われていて、ふたりが嫌がらせをすると
祖母には告げていた。

最初は二人は立派な先生だと言い、
子供のたわいない言葉だと取り合わない祖母であった、

授業に遅れるとゴミ箱の花を拾って
モールに渡して許してもらったりと大人を食っている
小憎たらしいガキだ。

ジョーとカレンが婚約した。

あまり喜ばないマーサに叔母モールは

”あんたは二人が一緒にいることを喜ばないね。小さい時から
嫉妬ぶかかったよ。異常なくらいにね”

そんな嫌がらせも普通はなんでもないことだが、
それをひとりの子供が立ち聞きした事や、それをまた、
メアリーにはなした事で、
メアリーは子供の目から、色々なことを組み合わせて,
作り話をデッチあげ、二人への仕返しの為に
祖母に、”二人はヘンな関係”だという意味合いの事を告げて、
学校に戻らなくて良いように仕組んだのである。

たったそれだけの理由でした事だったが、ことは思わぬ
大きな問題となった・

話はすぐさまテイルホード夫人によって広まり、
我が子を迎えに来る親たちで学校はごった返した。

だれもいなくなった学校。
理由のわからないふたりは呆然とした。

ひとりの子供の父親に強行にわけを聞き出すと
それはカレンとマーサが同性愛だと言うものだった。

無論、真っ赤な嘘である。

すぐさまテイルホ^ド夫人の下へ向かう二人に
彼女は聞く耳を持たなかった。

  ”あなたがもてあそんでいるのは私たちの一生よ!”と
マーサは抗議した。
  ”わたしたちは弁明する事なんて
            何も無いのよ”とも。

”あなたのおかげで私たちの生活は泥まみれよ”とカレン.

ジョーも来ていて、
彼女からカレンとの婚約を破棄するように言われていたが、
彼は二人と一緒に法廷で闘うと言った。

  ”ここもきれいにしたら?メアリーは?”とカレン。

ジョーは”これは三人の一生を左右する事になるんだ、
メアリーを呼んで、もう一度聞いてみるんだ”とジョー。

  ”許しません”と夫人。

  ”邪悪な子供と邪悪な老人...”とカレンはつぶやいた。


メアリーは、話は本当だと言って譲らなかった。

しかし、辻褄の合わないことでとうとう
今度はロザリーに聞いたと、
盗癖のある子の名を出し、
またしても嘘を上塗りした。

脅されているロザリーは問い詰められ、
横で、まるでやくざのチンピラのように二人だけに分る言葉で
ロザリーに圧力をかけ、
とうとうロザリーは耐え切れなくて、泣き出し,
自分が言ったことだとと言ってしまった。

裁判にも負けた。
証人として呼ばれたモールが出席せずに
不利となったのだ。

そして、人々の好奇の目に晒され、全国の新聞にも書かれ、
だれもいない、寄宿舎で、ふたりは寄り添うように
話し合い,泣き、なす術はなかった。

そして、ジョーまでが一瞬疑ったのを見逃さなかったカレンは
絶望のどん底に落ち気力を失った。
カレンは”友達、愛、子供、恋人”の言葉の意味が変ったわ”と
つぶやいた。

カレンとマーサはお互いに自分のせいだと言い、
泣き、苦しみ、未来の希望も失ってしまった。

ジョーと別れたという言葉に、マーサは自分のせいだと責め、
とうとう自分の気持ちに気付き、カレンに
こうなって初めて自分の気持ちはあの子が言ったとおりだと
分ったわとカレンに告白した。

そして自分を汚らしいと責めた。
黙って聞くカレンだった...。

そんな時、叔母モールが又,文無しになって戻ってきた。
”あなたのおかげでとんだ人生だわ,出て行って!”と泣き叫ぶ
マーサ。

テイルホード夫人の邸に泊まっていたロザリーを
迎えに来た母親が、
彼女がこれまで盗んで隠し持っていた
いろんなものを見つけたのを機に
ロザリーから全てを聞いたテイルホード夫人は
学校へ謝罪にきた。

”判決も取り消してもらったし、賠償金も払います。
できるだけのことはします”と。
しかし、カレンにとって、
   ”安らぎをお金で買うの?間違いよ、
    なにも頂きません,お引き取りください”と
        言うのが精一杯の抵抗だった。

マーサは狂ったように泣き笑いをし、二階へ上がった。
”ここを出ましょう、ふたりでやり直しましょう"と
言うカレンにマーサは
ありがとうと言って眠った。

外の空気を吸いに出かけたカレンはふと嫌な予感がして
振り向き、狂ったように駆け戻った。

マーサの部屋は鍵がかかっていて開かなかった。

物置からブロンズ像を持ち出しドアを叩き壊そうとするカレン。

部屋の中からカメラはドアに映るロープの影を映す。

ドアを開けたカレンが見たものは首を吊っていたマーサだった...。

マーサは一方的だけれどカレンを愛していたことに
気付いていたときから、また新たな苦しみに
襲われた結果の自殺であろう。

野辺の見送りには遠くから子供の親たちと一緒に
テイルホード夫人、ジョーが見守っていた。

カレンは”マーサ,一生忘れないわ”とつぶやいて

みなの行列の中を一瞥もくれずにさっそうと歩いていった。
無論、ジョーなどには見向きもしなかった。

そして空を仰いで微笑んだ...。

★カレンは冷静で穏やかだが芯が強く、
噂になってからも人々を畏れなかった。

感情的なマーサは本当はデリケートで淋しがりやで
弱い女性でした。

そして、ジョーがカレンを疑った事でマーサは
張り詰めていたものが一気に崩れ落ちたのですね。

本来守ってやるべきジョーもそんな程度の男性だった。
町医者としての立場を名士から釘を刺され、カレンとのことに
迷いが生じたのだ。
マーサが責任を感じるほどの男ではなかったのに,,,,・

謝れば済むと言うテイルホード夫人のような高慢な女性もいた。

口は禍の元、の典型の無知な叔母は反省もしていない。

そんなこんな問題をいっぱい提起した内容の深いドラマです。
おそらくこの作品も舞台劇であろうと思わせる
すばらしい台本です。

許せない子供の嘘も大事な課題ですが、
それによって大人の汚い本性が吹き出た事により
二人の女性が不幸になった。

それをきめ細かく、また二人の女優が熱演しています。
シャーリーも大好きな女優なのでとても好きな作品です。

この作品もアカデミー賞に撮影賞、音響賞、美術賞にノミネートされ、
叔母モール役のフェイ.ヘインターが助演女優賞に
ノミネートされました。

オードリーはこの年、ティファニーで...のほうで主演女優賞に
ノミネートされていました。

1961年度作品




© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: