旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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≪ライムライト≫


   真面目にして純粋な映画フアンのなかには、
彼をどうしても好きになれない人が結構いる...という記事を
読んだことがアル。

  チャールズ.チャプリンの事である。


正直、、私もあまり好きではない。
山高帽にどた靴で演じる彼のボードヴイル。

どうしても受け付けない。

しかし、監督としての作品全体を観たときに
そのすばらしさは否定しようが無い。

黄金狂時代、街の灯、独裁者、殺人狂時代。
生理的に受け付けない。

ただ、彼の出演していない2作品のうちの
一作..≪巴里の女性≫と、戦後の≪ライムライト≫だけは
好きな作品である。

今夜の作品は≪ライムライト≫です。

≪ライムライト≫は彼がハリウッドを
追われた時の作品であり、
老兵..老俳優の最後とハリウッドを後にせざるを得なかった
彼のハリウッドでの最後の作品である。(後にもどるまでの)

彼の俳優、監督人生の集大成のような気がして
ならない。

独裁者や殺人狂時代の作品などが持つ、社会への抗議が
影をひそめ、落ち目の喜劇役者の個人的な悲劇...
つまり、チャプリン自身と重なるから。

そっぽを向かれた老芸術家の悲哀が胸に迫ったのは
彼がハリウッドを追われた心境と同じように
私は受け止めた。

作品は最も古風な手法と古風な人物像で古風な人情を
描ききった。

2時間の長丁場を殆ど、チャプリントクレア.ブルームの
ふたりで演じている。すごい自信である。

いつもの山高帽ではない、彼のボードヴイル芸はさすがである。

1889年、ロンドン生まれの彼は20歳でアメリカに渡り、
マック.ゼネットに見出され、独特の山高帽にどた靴の
いでたちで観客の前に登場した。

しかし、その後、あの問題の≪独裁者≫においてアメリカ世論を
刺激してしまった。

ヒトラーへの痛烈な非難はいち映画人としては越権行為であると、
”非米活動委員会”の喚問にまで発展した。
しかし、彼はそれに屈することなく、殺人狂時代をまた
作り出した。

そして、1952年の、≪ライムライト≫を最後に
アメリカを追われたのである。

その後、スイスで悠悠自適の生活を送り、約20年後に
再びハリウッドの地に足を踏み入れた。
アカデミー賞特別賞を贈られたのである。

その4,5年後にレマン湖湖畔の地で88歳の天寿を終えている。

関節炎で足を痛めた踊り子テリー(クレア.ブルーム)が
世をはかなんで、自殺を試みるが、
かつては、
自分も舞台の花形だったことのある、カルヴアロ(チャプリン)が
彼女を助け、
この娘に健康と自信を持たせることだけに
ただひたすら努めた。

ラストは彼女の舞台での成功とその昂ぶりから
カルヴアロに結婚して欲しいと訴えるが、

自分の人生がもう終わったと
感じているカルヴアロは
辞退して息を引き取るというストーリーである。

作品から放たれる画面は後に、ルネ.クレールや
ハリウッド映画の原点ともなった初期の作品、
≪巴里の女性≫、その後の一連の作品の集大成とも言える
手法で圧倒される。

音符が読めない,書けない彼はすべて口から出るメロデイーを
ピアノで弾いてもらうという手段をとっていたが
この主題曲、作品中に流れるメロデイーは本当に美しく、
彼の多彩な才能は見事というほかは無い。

幾ら好きでなくても、巨人は巨人であることを
認めざるを得ない....




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