Sep 17, 2004
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日に3度、人によっては5度6度と食事の回数はそれぞれだが、何度食べようとも一生の内に口に出来る量は限られている。

散歩に出かけた公園で、事もあろうに柿の木から実を一つもぎ取った。
まだ熟れてもいない、育ってもいない、青い実。
一緒にいたおねえは、目が点。何するの、おばちゃん?
「柿!」
嬉しそうに、微笑む。(なんか、今書いてる小説みたいになってきたな)
……違った、勝ち誇った様子でおねえにその実を見せる。
それを見たおねえ、ビックリなんてもんじゃない精神状態。

もしかして、ちょっと早いけどボケ症状か?
実はおねえは、それが柿の木だと知らなかった。植物に関心のないおねえは、木も花も、自分にとってどっちでもいい存在なのだ。
花が咲いていても「ああ咲いてるね~」くらいで、ソレほど感動しないのだ。
おねえの中でそんな風に位置付けされている草花だから、個体の区別など興味を持つ筈もなく。柿の木なんだか、桃の木なんだか。実を見れば分るけどね、位の判断しか出来ない。
たまたまおねえの手に渡った花は、不幸にもそのほとんどが途中で枯れてしまう。けれどおねえにとっては枯れてしまう点だけが、興味深い。
草花は育てる人の心を感じて成長する。
花木を触る人の、「愛情をかければかけるほど、きれいに花を咲かせてくれる、こちらの想いに応えてくれる」という話を聞いたことがある。
愛情をかける以前、その存在を忘れているかのように扱うおねえに、植物は応えずに。
無視という形を枯れるという姿で表すのだ。なるほどねえ。感心するおねえ。
そんな薄情なムスメに、県立公園の柿の木から実をもぐハハオヤ。どっちもどっちもだがこの場合、おばちゃんのした事は間違いなく泥棒行為だ。
何故そんな事を?

だから、目の前にぶら下がる未だ青い実でも「柿だ!」と目を輝かせてしまう。それ位柿好きなのだ。いけない事とはいえ、そんなに柿が好きなのか?凄いな。それに青くて、まだ食べられませんけど。
とはいえ、取ってしまった実は戻せない。おねえはおばちゃんに厳重注意をし、そそくさとその場を立ち去った。ごめんなさい、柿の木さん。公園の管理の人。もう、2度としませんから。
本当に、何考えてるんだか。なんだか、柿を食べさせてないみたいじゃないか。人の何倍も、食べてるじゃないか!おねえはもう、怒り心頭である。
おばちゃんは「あっ!」と、柿に惑わされた自分の心を今頃になって反省している。遅いよ。
さて、数日後。

……の中に生けてある、青い実の付いた「柿」の木。30センチ。
「あーっ!また!今度は折ってきたんか!!」
前は実だけだったが、今度は枝!何をするんだよ、まったく。頭から煙を吐く勢いで、おねえはトイレから走り出る。
そんなおねえを軽くいなして、呑気におばちゃんはのたまうのだ。
「台風で、折れててん。道に落ちとってん」
な、なるほど。その前日は、もの凄い風台風がこの近所を通ったのだ。
「他にもたくさん折れとったんやで」
他って、もっと拾ってきたかったという事か?おばちゃん。どこまで柿好きなのか、底が知れないな。
そして青かった実は数日かけて、花瓶の中で夕焼け色にその身を変えた。
誰かの愛情に応えてそうなったのか?もしかしてそれは。
柿好きのおばちゃんの、柿に対する恋にも似た切ない想いがこもった「食べたい」という愛情のせい?





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Last updated  Sep 17, 2004 08:40:24 PM


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