Laub🍃

Laub🍃

2011.03.03
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カテゴリ: .1次メモ
殺風景な檻を乗り越える。
ふわりとどこからかやってきた赤桃色の花びらが、ビルのコンクリートに灰色の夜明け前の空に彩を添える。
そういえばひな祭りの日ですね、なんて一人ごちる。
ここからは私がお花になる番だ。
何もかもが灰色の世界で生きていることを実感するにはこうした手段しかとれないのだ。
信じていた唯一の彼さえも、今は遠い。
彼に助けてと求める声も、彼は助けてくれないと自分に言い聞かせる声になった。
そう、これは自分の決意なんだから。
彼の為に編んだ真っ赤なマフラーをしっかりと巻く。途中でほどけないように。

彼の笑顔がちらつく。行かないでくれと幻は言っている。
けれど私は知っている、それらは全て彼が自分自身を飾る為のものだと知っている。
子供で居たくないと言った私を彼は突き放した。
彼は私と、対等に付き合う気がなかったのだ。ペット感覚だったのだろう。

ーなら、人間同士でないなら、いいのかな。

そう思ったから、彼には一足先にあちらに行ってもらった。
眼下にはひとつの花が咲いている。眠ったままあちらに行った彼が咲いている。
それを目印に、これから行くのだ。

そうしたら、真っ白いなにかになって、一緒にどこへでも行ってしまおう。
今度は私が手を引いて。





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最終更新日  2017.01.17 09:50:31
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