Laub🍃

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2011.03.22
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カテゴリ: .1次題
大柄で寡黙な友人は昔からガムばかり食べている。物をかむと落ち着くのだろうか。
 思い返せば小さい頃は爪を噛んでいたような気がする。やめろと言ったら「じゃあお前の爪を噛ませろ」と言われドン引きした。その後ガムの存在を教えたら歯ごたえが足りないと文句を言いながら食べていた。

 しかし、会長がリコールされ、今は俺の上司でもあるこいつが書記をリコールされるかどうかの瀬戸際では、ガムをずっと噛んでいるということもマイナスイメージにつながりかねないため一時的に中断させた。
 日に日にこいつの貧乏ゆすりがひどくなる。

「リコール選挙戦が終わるまで堪え切れ、あとちょっとだ」
「…………」

 あと少し、あと少しの辛抱だと言った瞬間。
 ゆらりと、やつが立ち上がった。

「……!?おい、ま…」


 みしみしと大きな体がきしみ更に大きく膨らんでいく、どういうことだ、いつのまにここはファンタジー空間になったんだ。同時に納得する、常にこいつが自分の本能と、血と戦っていたことを。

「……!?」

 そうして、俺の首元に牙が立てられた。

「おま、や、やめーーーーー」

 けれど、言っている途中ではたと思った。
 ーーーーーーーどうせ卒業してもつまんない人生が待ってるんだ、最後にこいつの手助けになればーーーー

「……ご、ご…ごめん……っ」
「え?」
 けれど、甘噛みを一瞬した途端、目の前の巨体は理性を取戻し、命の覚悟までした俺は呆然とすることになったのだった。
 結局、狼人間とはいえど血は継がれるごとにどんどん薄くなっており、今はもうガムなどで代用でき、本当に噛みたいものに至っては甘噛み数回で満足できるということらしかった。
 その後俺はこいつの噛まれ友になった。


「……フラスト…レーション……が溜まりにくい立場になった…し、もう…お前に…そんな心配……かけない…」
「いや、お前がそれでいいならいいんだけどな…」
 そう話し合う俺達の目の前を、元会長が通り過ぎる。立場を追われたというのに、とてつもなくすっきりとした顔をしている。
「……そういえば…かいちょ……リコール…されたのも……幼馴染……親衛隊長……に…変な…キスマーク……つけまくってた…からだって……」
「へー、妙な偶然もあるもんだなー……うーん、今更だけど…本当隠しきれなくてごめんな…」


 血。血、ねえ。
 お前の血、ここで絶てたらいいのにな。


******




会計は淫魔の末裔
庶務はレイス系の末裔
最終更新日 2016.08.24 03:11:57





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最終更新日  2017.11.06 21:22:45
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