Laub🍃

Laub🍃

2011.06.30
XML
カテゴリ: .1次メモ
 さあさあ笑え、さあ笑え。

 自分がクズだってことは自分が一番分かってるんだ。
 頭を抱えて唸ったってそれは変えられない、だから出来ることはもっと行動力がある俗にいう厄介なクズになるだけだ。

 ニヒルで不可解本心隠す笑みを浮かべながら今日も魔の巣窟に足を踏み入れる。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず。これが出来るのはクズの特権でもある。
 何を犠牲にしてでも目当てのものは掴み取るっていうガッツのあるクズ、それが俺達だ。

 ここはゲーム世界へのトリップを果たした数年後の世界。多くのプレイヤー達は固く守られた町の中で、帰る方法も分からず絶望して、それぞれの「楽しみ」を見出している。

 ウォレン、クネン、ミュッセン、モーゲン、ゾレン、ダルフェン。 
 彼女らは有名な支援職のNPCだ。

 そういったNPCに何を覚えさせるかは各人に委ねられている。
 布の山を与え衣服を作らせることも出来るし、戦闘の時に代わりに戦ってもらうことも、盾になってもらうこともできる。勿論回復役になってもらうこともできるし、娯楽用ではあるが単純な会話だって楽しめる。

 -しかし、近年このシステムは完全に悪ふざけによって遊ばれるためだけのものと化していた。
 NPCを嬲るプレイヤーが多数発生しはじめたのだ。

 聖者職でありながら、嬲り回復することを旨としているプレイヤーの彼らにとってはこの上ない遊びであった。

「ゾレン、いつものアレをやるぞ」
「……はい」
 奴はこちらの渡した聖剣を受け取る。
 横なぎに数回剣を振り、最後に逆袈裟斬りで真っ二つ。
 時間が経てばなんてこともなく修正されるのだからもしNPCにまともな人格があったら発狂していたことだろう。

 こういうときには、やっていることを把握しながらも目の焦点をずらすのがお奨めだ。彼らに痛覚はない人格はない。鑑賞者が見て見ぬ振りをすればいいだけの話だ。


「俺はこんなんじゃなくて、お前らの取り扱ってる別のもんを拝みてえんだよ早く寄こせ」
などとまかり間違っても言っちゃあいけない。
 なんだかんだ、表層上の情報だけでも選定は済ませてあるのだから結果は得ないと。

「ふむ、いい使い勝手だな。……で、君たちの求めるのは……この街での販売証、と」
「ええ。更にプレイの幅が広がるかと」



 そういった、建前。その更に建前がこういった金持ちの道楽への説得だった。

「よろしい。……許可しよう」
「ありがとうございます!」





 そう、俺には本当の目的がある。

「ウェルデン……待っていてくれよ」

 魔物寄りな彼女達だけが、何故か俺達がやってきたときに逃げ出して魔王サイドについた。
 もとより彼女たちは特殊な嗜好によって虐められる…たとえばモンスターにわざと攻撃させられるなどの目に遭っていることが多く、そうして俺もそんな遊びをするプレイヤーの一人だった。

 魔王を倒して、いや魔王ごと、この世界を支配したい。
 先ほど目を逸らしていたのは残虐さに眉を顰めない為ではなく、思い出して興奮しないためだった。

「必ずまたいじめてあげるから」

 きっと今は怯えているのだろう。その姿を想像するだけで、俺の口角は悪魔のように吊り上った。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.11.21 04:19:35
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: