Laub🍃

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2012.05.31
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カテゴリ: .1次メモ
 男は生命を作りたかった。

 力尽きかけている見知らぬ老婆が相談に来たのだ、「私を新たな命に生まれ変わらせてくれ」と。

 作ろうとした。

 彼女はアンドロイドだったが、間違いなく生命だった。

 男は願いをかなえてあげたかった。と同時に自身の力も試してみたかった。

 生命から生命を生み出したかった。

 たくさんの資料を集め、ライバルの手法さえも真似をして、作り上げたそれは、ただのごみの塊だった。

「こんなんじゃだめだ」

 そう言って男はもう一度解体した、組み立てなおした、それでも何回やってもそれは姿を作らない。


 男は頭をかきむしる、フケが飛ぶ。男は、ああ、俺生きている、と思う。

 その生を彼女にも与えたかった。

 けれどそうこうしている内に、男の寿命が来てしまった。

「孫よ、この機械に生命を与えてくれ。今は休眠しているが、がらくたではないから丁重に扱ってくれ」






 孫はその場ではうなずいたが、男の視線の外で、地面に投げ捨てた。

 地面に埋もれたそれには緑が芽吹き、鳥が巣を作った。

 それは確かに命だった。

 彼女はもう二度と目を覚ますことはなかったけれど。





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最終更新日  2015.10.28 15:43:33
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