Laub🍃

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2012.07.13
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カテゴリ: .1次メモ
 救いなどない。神も悪魔もない。あるのは俺のこの執念ただひとつだけだ。

 ……と、馬鹿なことをあたしの部屋でぶつぶつと呟いているのは、私の幼馴染深助。
 どうやら学校で虐めにあっているらしい。
 今日も一言も言わず、隣の家の窓からこっちの窓を叩いてきたので入れてやったというのにお礼も言わずぶつぶつと呟いている。どうでもいいがあたしのパソコンで裏サイト見るのは勘弁してほしい。管理癖のある母さんにばれないよう履歴消すの面倒臭いんだよね。

 聞くところによると。今日もこいつは中二病節を発揮してクラスの不良的な存在にからかわれたらしい。
 中学の時はまだしも、高校になると大人な奴はより大人に、子供な奴はさらにどうしようもなくなるからなあ。
 からかわれるたびに反抗するけど、いじり方がひどくなるだけらしい。

 ……反応すればするほど面白がられるのに、馬鹿な奴。

 そう思うあたしもあたしで学校では孤立しているのだけれど。無視に無視を返す関係は心地いいようでいて、たまに不便なのでやっぱりどっちもどっちだろうか。




「ある日マフィアがやってきて、俺のこと跡取りにしてくれねえかな」
「あほか…」

 すぐに漫画の影響を被るこいつは見てて面白いが、若干面倒臭い。

 不良にはなれない、普通にもなれない。なら私たちはなんだろう。ふ、ふ……腐乱死体?

 社会からのはみ出し者としては不良やら怪物やら大人の社会やら電脳の向こうやら、「外の世界」に憧れ、普通でない存在や力と、ともすれば近いと自分を錯覚してしまうけれど、あたしらにそんな機会は多分一生来ない。

 たまに「普通」でなくてよかったと思うときはある――気味悪がって近付かれない池の魚の埋葬役やら、新たなスケープゴートを生み出さないための絶対的な敗者やら、あたしの役回りがあるときは、幸せだ。

「誰かが不幸だから誰かが幸せになる。あたしらはそういう仕事役なんだと思えばいいじゃない。代わりにあたしらの欠陥を決定的に排除しないでいてくれるのよ?」

 殺害などされたらさすがに困るけれど、これくらいは別にいい。何年1人に慣れたと思っている。

「……俺だけならいいよ。だけど、……新しく、ダチができたんだ。そいつ、巻き込みたくねえ」
「……え?」

 友達?




「…なんか、俺の反応が面白いんだと。変な奴」

 そう言って笑う深助は、ごまかしてはいたけれど心底嬉しそうで。

 ……だから、


「ねえ、深助。だったら力、手に入れようよ」

 だから、不相応な力を深助に与えた。


 せっかくできた唯一の、きっとはじめての友達を遠ざけないといけないような力を。

「案外簡単にアウトローってなれるものだよ?」


 失うことを恐れなければ。



*****


 華穂幸陽:自分より不幸な人を救うのが大好き。
 緒木深助:大嫌いな奴の不幸で今日も飯がうまい。


 幸陽が人を陥れる系/新興宗教系のバイトを初めてから、すべては変わり始める。
 むかついた奴を深助が不幸にし、幸陽が救済し、仲間(友達ではない)を増やし、気が付いたら大きなアウトロー軍団結成。
 拳で黙らせる深助と言論封殺する幸陽のタッグは一帯を支配するように思われたが、そこに異能バトルが食い込み始めてから事態は思わぬ方向へと以下略





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最終更新日  2016.04.25 01:53:58
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