Laub🍃

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2012.08.25
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カテゴリ: .1次メモ
 逃げられることが、居なくなられることが当たり前だと思っている友助を、どうしても放っておけなかった。

 俺のこの選択は間違っていたのだろうか。

 友助は、友という名がついている割に、友達が少ない。というか、俺しかいない。友助は、いじめられていた。

 友助は頭がおかしい。すぐに約束を忘れるし、たまに会話が成り立たない。けれど優しい奴だった。俺は友助と一緒に居るのが楽しかったし、友助はそんな俺を珍しがりはすれど俺の姿を見るたびに目を輝かせてきた。その純粋さが俺の癒しだった。友助がいじめられていようと、それは関係なかった。

 -これだけなら、もう一人、俺の隣にそんな奴がいた。
 護。彼は一匹狼の不良だった。黙っていれば恰好いいのに、そのきつい目線と態度で人を怖がらせてばかり。遠巻きに視線ばかりいつも送られるのだとぼやく彼と俺は、生物部で唯一ちゃんと世話をしている同士だった。

 その不器用さで彼は人を怖がらせてばかりで、生物部に居ると言ってもいつかうさぎや鳥を取って食うつもりだ、とか根も葉もないうわさをたてられていた彼を俺は放っておけなかった。だから彼が喧嘩を売られている時に先生を呼んだり、彼の仲間だという不良の人とも話をしたりした。

 そんな折、友助が事件を起こした。護を刺したのだ。

「神野は俺の、友達、なんだ。とるな。とるな」








 そして今、俺の目の前には二つの遺影が飾られている。

 俺は、友助と護が争っていても常に見て見ぬ振りをしてきた。そしていつもいつも、争いがないときにだけ関わってきた。二人はきっと、納得していたんだと思う。争いに俺が入らない事を半ば喜び、半ば諦めていたから。

 そうして二人とも刺し違えて死んでしまった。俺が、手を出したせいか。ーいや、もっと深く手を突っ込んでいれば、きっと或いは。


 あれから十年が経つ。

 何故か俺は、俺のことを傷付けないーけれど、ライバルにあたる人間は排除しようとする人によく好かれるようで。彼らの周囲には無数の遺影が並んでいる。
 ゆえに俺は知っている人間からは「可哀そうな姫」だの「死神」だの、好き勝手に言われている。だから今日も引っ越しをして、丁度今遺影を並べ終えた所なのだ。

 たまに朝起きたり家に帰った時、遺影が偶数枚倒れている気がするが、夜中誰も居ないのに目線を感じることがあるが、まあ、大丈夫だろう。

 俺が彼らに手を出せなかったように、彼らはきっと俺に手を出せないのだから。
 きっと十年後も俺の両手は空っぽのままなのだろう。
 ああどうして皆、片手同士繋ぐのでは満足してくれないんだろうか。






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最終更新日  2016.07.16 19:55:55
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