Laub🍃

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2012.09.22
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カテゴリ: .1次題
「あ!いたいた!こーすけ!!!」
「……は…?なんでお前がここに……」
「そりゃもちろン゛ッ」

 ゴッ

「……位置に着け。ここからは揺れるぞ」


 アホな幼馴染に鉄槌を落としてくれた司令官まじぱねぇっす惚れるっす。





 ひりひりと痛む頭を抑えながらこっちを見てくる幼馴染、その視線を避ける俺。
 その間には異国風情漂う人々やヤの字の付く方々。




「あー…何度も繰り返しているから分かっていると思うが…これからお前たちは戦場に送られる。喩え一度生き残ったとしても、送られ続ける。死ぬまでな。それが死刑執行を避ける唯一の道だということで選んだのはお前たちだから分かっているだろうが。……それと、これも何度も繰り返し言っているから分かっていると思うが形式上言わせてもらう。一度でも逃げようとしたら足折って麻袋にブチ込んで敵陣に放置する。以上」

 聴いた当初はびっくりしたもんだが、こう何度も聞かされていると慣れる。俺も幼馴染もその他ガラの悪そうな方や言葉通じなそうな方々もあくびこそ漏らさないが至極つまんなそうな顔で聞いている。

「つまんねえって顔してやがるな…まあ、いいだろう。そろそろ到着だしな。お前ら犯罪者にとっちゃ俺達の説教よりかこっちで人を殺りまくったりスリル味わったりする方がイイんだろ?…俺には理解できねぇがな」

 ガク、と俺達を乗せたトラックが唐突に止まる。勢いでつんのめるが、地面や壁に叩き付けられることはなかった。

「……いたい」
「す、すみません」

 肉の壁。結構勢いよくぶつかったはずなのに、衝撃は吸い込まれてしまった。
 それでも相手が顔をしかめるのを見ると、戦闘への緊張をぶつかってしまった申し訳なさが凌駕する。

「……ふ」

 しかし、謝ると何故かそいつは笑った。薄暗い中光る藍色の瞳。

「……極悪人なのに、礼儀正しい奴」


 うるせえ、極悪人になろうがへたれは治らなかったんだよ。

 藍色の含み笑いと幼馴染の呆れた目線を無視して、「ありがとうございます、これからよろしくお願いします」と言うと何故か更に笑われた。

「ははっ……初戦で死ぬかもしれないのに、のんきな奴」
「……たっ、確かに死ぬかもしれないですけど…だからこそ、ですよ」

 お互いにある程度知っておかないといけないじゃないですか。一期一会なら猶更。


「聞いてたんですか……そうですよ、こうすけです」

「おい、早く出ろ!!3813、3861!!」

「行くか、3813」
「生きましょう、3861」


 殺すことから逃げる為に死のうとしたのに、死ぬことから逃げる為に殺そうとしている。

 皮肉なものだ。

 それでも、この手は、今なら誰かを生かせるのかもしれない。

 ぐっと握りしめた掌を解く。


 そしてその掌で、腰に着けた手榴弾をそっと覆った。
最終更新日 2015.12.27 18:39:28





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最終更新日  2017.03.20 17:12:41
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