Laub🍃

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2012.09.29
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カテゴリ: .1次メモ
「いつ気付いた?」

 いや、気付くって何を?

「……え、えーと、何をですかね?」

 この人が俺の妹に興味があることか屋上で夜中に肝試しがてら飲み会してたことかこの人が頭おかしいことか。

「答える気がないなら、いい」
「え?ちょ、ちょっと待って下さいよ先輩…」

 俺の情けない声にも全くぶれない後ろ姿はどんどん遠ざかっていく。

 おい待て待て、そりゃねえだろ。

 と同時に体に突然の寒気、全身から血が抜けていくような脱力感。


「全部奪い取るまでだ」





*****


 後輩は、本当になにも知らなかったようだ。

『早まったかな』
『いや、周囲に広められる可能性もあったわけだから、仕方ないんじゃない』

 それでも、やはり後悔はしてしまう。俺はある程度あの後輩を気に入っていたから。
 あの後輩のほうは、ある程度、ではなかったようだが。

『しかし、愛されてるね君』
『一回見れば十分だこんなもの』

 全く、記憶をチェックする時に寒気がしてしまった。

 俺がエイリアンだということは全く気付いていなかったものの、それ以外の全てをここまでつぶさに調べ上げている後輩。ちょくちょく挟むのは昔の記憶、他の人間をストーカーしていた時の記憶。
 どこまで調べ上げれば相手を知ることが出来るのか、調べ上げたゆえの言葉を言ったらどんな反応をするのか。
 偏執狂とも呼べるその執着で何人もの人間を不安の渦へ突き落して来た男の次の標的は俺だった。
 しかし、性格をいくら分析されようともただ一つ宇宙人であるということさえばれなければ、まだ謎が残っている、俺の方に分がある。あいつはそれに我慢がならなかったらしく、とうとう俺と仲間の関係に割り込んできた。

 そいつとの間柄は悟られないようにしていたのに、流石ストーカー歴10数年、伊達ではない。



 何をだ。

 そう思った瞬間、疑いの芽を摘みにかかった。俺にしては珍しい速さだ。

『クールな君が翻弄されるなんてね』
『別に翻弄はされていない』
『だって君優柔不断だからなかなか対処しなくて被害増やすじゃん?今回の相手は余程君を苛々させたんだね。お蔭で僕達は仕事が減ったけど』

 寒気がしたんだから、仕方がない。

『勿体ないね、ここまで君に執着してるんならこっち側に引き込んで協力させてやればよかったのに。見たところ能力も悪くないみたいだし』
『65の二の舞は御免だ』

 ……そう、あいつに再会したようで。俺は今更ながら、寒気が止まらないのだ。



***




万能エイリアンVS未知数人間





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最終更新日  2015.10.04 21:51:26
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