Laub🍃

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2012.11.01
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カテゴリ: .1次メモ
「セッティーニ」

 ああ、くそ、その呼ぶ名前が俺の名前だったらよかったのに。

 今更己の吐いた嘘を悔やんでも遅い。

 じわじわじわじわ自分の所業が首を絞めてきやがる。


 色々勝手に悟られ、勝手に境遇を想像され、「はぁ…」としか返せないのを元気がないと解釈され更に飯とかを増やされ境遇を良くされ、そろそろ俺は限界だ。まだセッティーニ三日目だけど。

 自分じゃない自分を評価されるのって、こんなに気持ち悪いことだったんだな。

 そんなことをチムによって膝に乗せられた猫をもふもふもふもふしながら考える。やべえこの感触どんな毛皮よりいいわ。

 あんあん喘いでんじゃねーよちくしょーめ、どうせ誰にでも尻尾振ってんだろこの雌猫がー

「……首領めっちゃ馴染んでます?」


 ヒラ以下の水夫扱いされている元参謀がやっと尋問終わったのを機にやたら俺に構ってくるのをなんとかしてほしい。

「ンな事言ったって無理ありますよー、どうせ数日中にばれますって。一緒に逃げましょうよ今なら間に合いますって。俺達がこうやって出会えるってことは、あいつらも相当油断してるってことっすよ」
「いやいやいや間に合わねえよ、お前元気ない俺への対症療法として俺の近くに投入されただけじゃん、つうか俺とお前がちょっと仲良いのばれてんじゃん、下手に動いたら俺の正体までばれるじゃん、それに以前として俺達の周りあいつら取り囲んでるじゃん、警戒されてんじゃん、逃げる余地ねえよ」

 ぐちぐちぐちぐち言う俺を参謀が猫ごと抱き上げる、思わずぎゃあああと声を上げるがその口に若鶏香辛料漬けを放り込まれるうめえじゃなくて!!!

「もっ…てめっ…てめ、」
「ぐだぐだ考えるより、やれそうなことはやる!!ですよ、首領」
「…………」


 ま、まあいいか、たまにはこいつに賭けてみるのも。
 幼馴染の姿が妙にたくましく勇ましく見える、こいついつの間にかこんな身長伸びてたのか―――


「どうだー仲良くやってるかー?」
「はーいやってまーす」

「してないでーすそんな労力勿体なーい」


 てめえ。


 いきなり突入してきた海賊の一人・脳内あだ名残念なイケメンはいつもと変わらないかっぴらいた目と上がった口角でこっちをじっと見てくる。怖い。

「……ふーん…?んー…ま、取り敢えず私はその水届けに来ただけだから。仲良くやってんならいいや、これからも仲良くしなね。痩せこけてたのも、冷遇されてたとかじゃなくてあの船全体が貧しいだけだったみたいだし。ほなまた~」

 嵐のように残念なイケメン、もといツトイとかいう男が立ち去った後。


「復活以前に壁があったら即座に引き返す奴が何を」
「世の中に通用するのは正攻法だけじゃねえってこと首領は分かってるでしょうが」
「いや、まあ、けどよ…」
「ということで作戦練りましょう作戦。あ、これ貰っていいすか」
「おいそれ俺の飯…」
「首領が一番いい生活してんですからちょっとくらいいいでしょう」


 不安だ。とてつもなく不安だ。あと今日チムに会えてないつらい。

「……逃げたい…」
「じゃあ作戦立てましょう」


 だからその作業からもお前からも逃げたいんだよちくしょう。





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最終更新日  2015.12.27 02:01:22
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