Laub🍃

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2012.11.09
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カテゴリ: .1次メモ
 頭上で響いている戦場の音。

「チム…くそ……っ」
「おい、首領!止まって……止まれよ!!!」
「止まらねえよハゲ!!」
「禿げてねえよバカ!!」

 馬鹿に構ってられねえ。

 バカっていうほうがバカなんですーと適当に返しながら、階段を駆け上がる。この船の構造本当クソだわ。入るのも入られるのも楽じゃない。
 それでもどうにかハッチまでたどり着く、ここを越えたら甲板だ。

「は~いさっさと帰れ~」







***



「お前…言ったよな?一応人質なんだし条件もうちょっと工夫すれば交換の余地あるかもしれないんだから身の安全確保しろって」
「はい…」

 ピンク頭グラサンの前で説教を受けるお坊ちゃん(俺)と監督不行き届きの責任を問われているレボ。
「レボ、お前、前の船でもこいつの世話係やらされてたんだろ?だったら慣れてんだろ取り押さえるのなんて、なあ」
「……さーせん」

 こら、この人にそんな口使いすんな!!と思いながら横目で見ると「よそ見するな」と言われる。怖い。

「……まあ、いい。今回はそんなに損害が出なかったからな」
「…………何があったんだ?」

 うまい、レボ。今の質問で俺一気にお前の株上げたぞ。

「…セッティーニに聞かせるなよ」



「……なるほどねー」

 お前意味深な顔してんなよ、後で絶対教えろよ、という期待を込めて、ピンク頭に意識を向けつつこっちをちらちら見てくる奴を見つめ返すとふいっと目線を逸らされる。あってめえ。



***



「……前の船のツートップいたじゃないすか」

 仕方がないのでレボに徹底的に冷たい態度を取った所、折れてくれた。流石俺の直属部下。



 ころりと態度を変えると「うわー露骨ー」と言われたが流す、情報入手にはなんでもするのが俺様だ。

「海の藻屑になってた筈のそいつが仲間引き連れて新しい船乗って襲ってきたんですよねー」
「復活早くないか!?」

 ありえなくはないが、俺達が襲われてから一週間だぞ。そんなに立て直す余裕があるのか?
 あの時はあいつがどうなってるかもよく分からないまま交戦のさなか保身の為にお坊ちゃんの扮装してたから、あいつが海の藻屑になったという言葉を立ち聞きして、少しショックに陥ったけれど。

「ま、あいつなんだかんだ要領いいっすからねぇ」
「……もしかして、俺達を助けにき」
「あ、それは多分ないっすね、大砲結構なりふり構わずぶっ放してたみたいなんで完全に怨恨を晴らす目的でしょう」

 ちくしょうめ。

「じゃ、じゃあ、俺達がここに居るってこと分かれば助けてくれ……」
「それもないですねー首領基本人望ないじゃないっすか」
「ぐっ」
「今回こちらさんの海賊船と会い見えたのも首領が暴走した結果ですし」
「しょ…しょうがねえだろー!いい感じのお宝がありそうだったらその情報手に入れてすぐ行動するに限るだろー!!!」
「だからって碌に戦闘や生活の準備も出来ないまま駆り出された俺達の気持ちにもなってみろよ」
「あっハイ」

 唐突にレボの声が低くなる。やべえ。こういう時は殊勝な態度決め込むに限る。

「……取り敢えず、アンタは俺達を置いてけぼりにして暴走した、あいつらもアンタを居ないものとして扱っててもおかしくないってことだ。海の上での恨みは晴れない。…分かってるよな」
「…わぁってるよ……くそ、ルーク…あいつ理性的なほうだと思ってたのに…」
「本人が理性的だからこそ、許せない線っつーものがあるかもしれないだろ」

 いずれにしろ、色々と(正体か命か知らんし知りたくもないが)覚悟しとくことだなとだけ言い残してレボは去って行った。俺の前に残されたのは台所と大量の剥かれたじゃがいも。じゃがいもはあいつが剥いた分だけやたらと綺麗で多い。

 ……俺も、しばらくじゃがいも剥いて心を整理するとするか。





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最終更新日  2015.12.27 17:37:33
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