Laub🍃

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2012.11.18
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カテゴリ: .1次メモ
 殺されるかと思った。


「・・・・・・お前、自分の昔話、ほとんどしないんだな」


 きっかけは、ニースのそんな一言。

 参謀役のこいつがそんなことを言うなんて、絶対に何かあると警戒していた俺に、数日後やはり転機が訪れた。


「・・・・・・飯、できた、ぞ・・・・・・」

 そう言ってあの集団の中に飛び込んだ直後、俺に向けられたのは、なんとも形容のしがたい目。


「・・・・・・え?」


「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」


 え、なんだ、なんなんだ、これ。





 結論。・・・・・・とうとう、ついに、俺の正体がばれてしまったのか。


 ばれても未だに演技してる馬鹿だとか「・・・・・・白々しい」飯に毒盛ってるとか「何が入ってるんだそれ」そんな幻聴が聞こえる。

 なあ、たのむよ、何か言ってくれよ、お願いだ、お願いだ頼む、なあ、チム、助けてくれ・・・・・・っ

「す、すまない、なにやら大事な、話をしてたのだな、邪魔してごめんなさい」


 どうにか取り繕ってその場を逃げ出す。鍋だけ置いて。



 後ろから、リシカとチムの「お、おい」「セッティーニ」という声が聞こえてきたが、聞こえないふりをして逃げ出した。



 怖い。



 なによりも、無反応が一番、こわい。




 顔も上げずに、がむしゃらに道も確認せずに走った。

 どこだ、ここは。知らない。知らない。でも、怖いから、足を踏み出すしかない。




「「わっ、すみませ・・・」」

「・・・・・・あれ?ハイハ・・・・・・?」

「・・・・・・え・・・・・・」



 そこには、かつて俺達が滅ぼした村に居た、かつての友達が居た。


「・・・カッフィ?」



 少し疲れたような、その笑顔。

 けれどその顔には、俺への敵意など微塵もなくて。

「・・・・・・カッフィ~~~・・・」
「え?ちょ、ハイハ!?」


 皮肉だ。俺のやってきたことを碌に知らない人にこそ、俺に優しいだなんて。
 俺のことを知らないほうが、俺のことを追い払わないなんて。

「・・・・・・取り敢えず、俺の部屋来るか?最近下っ端からちょっとだけ昇進したんだ」
「・・・・・・うん、ああ」


 あんなに不安を煽っていた廊下の薄闇が、今ではこんなに暖かいだなんて。





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最終更新日  2016.02.13 12:21:15
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