Laub🍃

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2013.01.06
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カテゴリ: .1次メモ
「・・・・・・ティモ・・・」
「久しぶりだね、ハイハ」

 ぎいいいと木の鳴く音を聴きながら踏み出したその世界は古びた小瓶のようで。

 詰め込まれた空気を吸い込む。

「・・・・・・どうして、こんなところに居るんだ」
「・・・この船には、君に恨みを持つ人々が自然と集まる」
「・・・・・・お前らもか?」

 カッフィは、優しげなタレ目に似合わず率直できつい。泣きそうだ。

「まあね。・・・でも、僕たちは君に感謝もしているんだ。君のお陰であそこから逃げ出せたようなものだから」

「・・・うん。あのさあ、家のしがらみの嫌さ、お互いに話したよね。ハイハ」
「・・・・・・ティモの「兄さん」のことか」
「うん。兄さんたちが居なくなって、ぼくが祭り上げられて。血縁重視の家なんてそんなもの。だから逃げ出してやった。兄さんたちが居たまんまだったらきっと、厄介払いくらいにしか思われなかっただろうけど、これでやっとあいつらに復讐できた」

 余所者の俺にさえ優しかったティモが唯一目を吊り上げ子供らしからぬ顔になるのが、家族のことを話すときだった。
 俺達からしてみれば十分に恵まれた幸せな家に見えたのだが、外と中の見えるものは違うらしい。

「ねえ、ぼく達にかくまわれなよハイハ。詳しくは聞かないけど、逃げ出してきたんだろ?どこかから」
「いや、まだ大丈夫だ」
 がたがたと震える奥歯をかみ締める。
「無茶しないでよ。ねえ、船もそろそろ陸に着くよ。一緒にこっそり降りて逃げてしまおう」
「後になればなるほど難しくなると思うけど?」
 脂汗のにじむ目をこじ開ける。

「終わりにして、次に行こうよ」
「だめだ」




 だって、お前らは目の前で、死んだんじゃないか。







「ないけど?」
「え?」

「いや、一応僕ら資産家と貴族の家だよ?替え玉くらい用意してるから」
「・・・・・・お前ら、幽霊じゃない?」
「失礼だな!生きてるってば!!!」
「カッフィ幽霊じゃなかったんだ!」
「ティモまで!!!?」
「いや、だってぼく霊感あるし。こんなはっきり見えたのはじめてだし、隣に立ってる子と違って存在感あるなーと思ってたけど」
「居るの!?この場に幽霊!!!というか僕の隣!!!?現在進行形かよ!!!」
「・・・・・・よ、よかったー」
「よくねえよ!全くもってよくないから!!!」
「ふふ、まあカッフィには害与えてこなさそうだし大丈夫だよ。ハイハには攻撃しようとしてるけど通らないからぜえはあ言ってるし」
「俺幽霊に攻撃されてんの!?」
「大丈夫大丈夫、ハイハにb・・・強いから大丈夫だよ!それより、逃げるタイミング見失うと本当にぼくらまで幽霊になっちゃうかもね」
「ひっ」
「じゃあ冷静になった所で脱出作戦練ろうか。まあ、僕ら下っ端だから船の大体の構造と飛び交ってる噂くらいしか知らないけど・・・・・・」



 話は二時間くらいだっただろうか。
 背中は冷や汗でぐっしょりと濡れている。
 そうして俺は、逃げ出すことを決意した。





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最終更新日  2016.03.29 15:22:07
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