Laub🍃

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2016.08.07
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カテゴリ: .1次題
非王道転校生 にありがちなこと
※メタネタ
※荒ぶる腐男子




 前の学校でよく分からない理由で追放処分を受けた俺には、教室のドアがいやに大きく見えた。

「入ってきて~、桜戸天くん!」

 金髪のホストみたいな先生の声。よし、行こう。今度こそ、俺を受け入れてくれる筈だ。
 だって俺はーーーーーー

「うわー!!王道転校生だー!!!うわー!!!」

「おい、黙れ布田」
 教室に一歩足を踏み入れた途端、俺と同じようにもさっとして眼鏡をかけた奴がこっちを指さして叫んできた。戸惑う俺の目の前で、取り押さえられる眼鏡。なんなんだここは。
 前の学校も変な所だったけど、やっぱりお坊ちゃんの集まる学校ってのはどこも変なもんなのか。

「ごめんなぁ、こいつちょっと暴走気味な所あって…」
「別にいいぜ!!気にすんな!!!」

 爽やかにこっちにあいさつしてくれたのは、眼鏡の隣の男子だった。野球少年なのか、1cm位に髪を切りそろえているが、普通にかっこいい。
 因みに眼鏡のほうはといえば、俺の反応に対し更に盛り上がって「うわあああ…!!!」と変な笑みを浮かべていた。顔は悪くないようだけどいかんせん性格が関わりたくなさすぎる。
 髪の隙間、厚底伊達眼鏡の向こうの世界を観察する。
 教室の中では俺を皆、滅多に見ない奴を見る顔と、とてつもなく期待する顔と、どこか妙な距離感を抱いた顔で見ていた。

「…おい、転校生だったのかお前」

 突然教室の後ろがガラガラと開き、目付きの悪い男が現れた。



 パンを咥えて走っていたら、曲がり角から現れたこいつにぶつかったんだった。

「ベタだ」「ベタすぎる」

 周囲がざわざわしているけど、俺にはそんなこと気にならない。こいつは失礼なことを言って走っていったんだ、ここで会って、同じクラスだと分かった以上、謝ってもらわないと引き下がれない。

「……お前、変な時期に転校してくるんだな。しかもまりも頭に眼鏡なんて、へーーーんなやつ」
「ちょっと降世、攻めすぎ」

「王道転校生だ」
「だから黙ってろ布田」

 教室は俺達の喧嘩を止めようとする人半分、なんか変な目で見ている人半分だった。
 前の学校でも同じようなことが起こった気がするけど、その時とは違ってなんか、妙な違和感を感じる。



「お前が王道転校生か……」
「「「キャアアアアアアア!!!」」」

 次の瞬間、俺は偉そうな男にキスをされていた。

「何すんだ、てめー!!」

 当然殴り飛ばした。そうするとそいつはニヤリと笑い、

「くくく……気に入った。そうだよ、この反応だよ……!!!」

 と言い、更に俺を抱き寄せたのだった。

「てめー、はな……」

カシャ

「ん?」

「あーはいはい、音立てて撮るの禁止禁止ね~」

 思わず目線をやると、朝見た布田含め何人かの奴がこちらにカメラを向けていた。

「見せもんじゃねーぞ!!!」

 思わず怒ると、そいつらが「この反応!かわいいねー初々しいねー!!!」「これで数週間はいける」「もっと罵ってください」なんて言ってきた。なんだこいつら。わけわからん。

「……よそ見をするなんていけないやつだ…」
「はいはいそこまでー!君、かわいいねー!かいちょーにはもったいないよー!!俺と付き合わない!?」

 会長?

 そういえば、前の学校でもこんなことがあったような。転校することになった一連の事件のショックでよく覚えていないけど。
 会長と呼ばれた奴はちゃらちゃらした軽そうな奴におしのけられた。こいつが確かさっき撮影するの止めてくれてたみたいだけど、油断はできない。こいつも変なニヤニヤ笑いでこっちを見ているからだ。

「お前とも付き合う気はないからな!!」
「……うん、合格!!ねえねえ、この子生徒会に入れない!?駄目!!?」
「はぁ!!!?」
「会計、それはいけませんよ。この子はあくまで生徒会部外者であるべきです」
「……そう……そのままで…いい……余計なこと…するな」
「だからなんなんだよお前ら!?」
「「気にしなくていいよ、転校生くん★あ、僕達は庶務の双子、憧と夢だよっ★」」


 俺の知らない所でどんどん事が進んでいく。前にもこんなことが転校する前にあった気がする。

「王道転校生総受け」
「いや、敢えての会計×会長だろ」
「書記→会計→会長のほうがいいだろ」

 ぼそぼそと聞こえるよくわからない呪文みたいな言葉はなんとなく、どんどん増えている気がした。……本当になんなんだ、この学校。





 その後、俺は会長や会計や副会長や書記や庶務にありとあらゆる理由で襲われたが、逃げるのに成功したり、途中で邪魔が入ったり、襲ってきた側がその気を失ったりで今の所半年が経つが俺はまだ清い身のままだ。

「やっぱり副会長が全ての黒幕でいいんじゃない?」
「いや、書記も侮れない。書記様が興奮する薬盛られ覚醒編はよ」
「お前がやってこいよ」
「いやお前が」
「王道転校生総攻めもいいな」

 そして事件が起こる度にどこからか聞こえる声はどんどん増えていっている。最早俺の幻聴なんじゃないかと疑うレベルだ。なんなんだ、この学園は本当になんなんだ。





「風紀委員長だ!生徒会をリコールする!!!まずは貴様だ、嘉市鷹!!」
「あ゛ぁ?なんだてめぇ」
「あ……!」

 俺が生徒会のことで困ると相談していた風紀委員。その上司がやってきた。

『前々から風紀委員長はリコールする時を待っていたんです。あなたが来てくれたおかげで訴えることが出来ました。本当にありがとうございます』

 無表情ながら嬉しさを滲ませていた風紀副委員長は、叫び続ける委員長の隣で静かに佇んでいる。俺が嬉しそうな顔をすると、しー、と口に人差し指を当てた。……そうか、俺が相談していたことは、他の奴には秘密なんだもんな。気を付けないと。

「おい、やめろよ!確かに生徒会は変な奴らばっかだけど、悪い奴らじゃないんだってばっ!!」
「罪があるのは貴様もだ転校生。貴様が来てから生徒会は問題ばかりになった。全員をはべらせて、いい御身分だな。他の人々にしわ寄せがいくとも知らずに……それとも、君が誰か一人を恋人に選ぶか?そいつだけは免れさせてやってもいいが?」
「え……っそんなの、選べるわけないだろっっ!!!」

 そして、生徒会はみんなリコールされてしまった。
 それでもみんな、どこか楽しそうで、俺は弁当のウインナーみたいに奪われ合いながらもどこか楽しさを感じていた。



 そして俺は、無事卒業式を迎えることができた。後輩たちはみんな笑顔で見送ってくれた。
「この二年間、いいネタをありがとうございます」
「……?おう、こっちこそありがとな!」
 相変わらず一部の生徒達の言っていることはよくわからなかったけど、これからも俺は愉快な仲間たちと生きていこうと思う。
 二つ下の弟も問題をよく起こして転校させられているけど、この学園に連れて来たらきっと少しは楽しく暮らせるんじゃないだろうか。おじさんに言ってみようかな。






「~(非)王道転校生の愉快な仲間たち~誰も選ばず円満退職END、ですか」
 以前副会長と呼ばれていた男含めた7人は、卒業式後、元生徒会メンツの為に作られた秘密の部屋でひそかに落ち合っていた。
「……せっかく、念願の王道転校生がやってきてくれたって言うのに…」
 陰気そうにつぶやくのは俺様と言われた面影をかけらも感じさせない男、元生徒会長。
「せっっっっかくキャラ作りしたのに!!!」
 そう叫んだのはいつもテンションの高かった会計と呼ばれていた男ではなく、いつもはぼそぼそと温かみを感じさせる声で話している元書記。
「まあまあ、ほのぼのものならありじゃないか。そんな状況でも周囲の皆は楽しんでくれたようだし。ネタを提供するのが僕達の仕事であって、事実関係はそこまで大事なものではないよ」
 にこりと落ち着いた雰囲気を醸し出しているのは元会計。
「転校生がやってきてくれたおかげで、ちょっとはBLっぽくなったよな?俺達だけじゃどうあがいても、ヤラセの枠を抜けられないから」
「でもなぁ~…理事長の時代にはまだ、ほんとの非王道学園らしい展開が見られたんだろ?ねえ、理事長のもう一人の甥ちゃん」
「あはは、清おじさんからこの学校の昔話聞いて、昔っから入りたいって思ってたんだけどねえ」
 諦めきれない様子の書記に睨まれたのは、転校生のやって来た初日叫んだ男、布田。……まあ、それがオープン腐男子の「役」である俺なんですけど。
「そんな学校あったら三次元BL見たい腐男子が集まるに決まっていましたね。……彼の一年前、転校生が来たと思ったらご同類でしたし。ねえ、降世さん」
 苦笑する副会長に、以前見られた腹黒らしさはもう無い。
「三年間楽しかったし、いいじゃんいいじゃん!」
 爽快に笑い飛ばすのは、不良らしく髪を赤く染めた男。
「同人誌も割と売れたしな。こいつに最初にBL本薦められたときは驚いたけど、はまればはまるもんだよな」
 スポーツ少年ポジション割と疲れたけど、つかず離れずで観察できてよかったわ、と少し伸びた坊主頭の親友は言い、一人酒を注いだ腕を上げる。
 他の青年たちもジュースや茶が注がれたコップを掲げた。
 そして口を揃え、叫ぶ。
 きっと前の先輩方も叫んでいたであろう言葉を。



「「「「「「「(非)王道学園に乾杯!」」」」」」」




 その数年後、元(非)王道転校生はスポーツ少年の部屋で見つけた本によって
魔の扉を開くことになるがそれはまた別の話。



*****





・副題: (ドキッ! }腐男子だらけの王道学園


 王道転校生が転校してくる数年前:


・新入生が王道学園に苦労して入学して蓋を開けてみたら自分含め全員腐男子。
・自分はネタを眺めているだけでいい系腐男子。
・幼少期から居る人たちも大抵親兄弟から「いいか…ネタをとってこいよ……」と言われている
か、同級生に感化され自分も腐る。
だからいざネタ(転校生)が来ても

「どうぞどうぞ」  ×全員。
・役職持ち(不良含む・委員会決めのように立候補と多選で決められる)はそれでも多少はネタと周囲へのサービスのため演技するが、相手と自分がくっつく気は毛頭ない為他の役員達の為当て馬に率先してなろうとする。だから他の人の邪魔が入る。

例:

会長「桜戸……!?」
王道「っ…鷹ぁ……!!こいつが、無理矢理」
会計「チッ、見付かった…転校生ちゃん、まったねー♪」
会長「てめえこんなとこで何してんだ!!(またわざと見付かりやがってこの野郎…!)」

・風紀委員長は短気な単一カプ派。
・平凡は一応ずっといたけどオープン腐男子の暴走と転校生が割とまともだったことで出番がなかった。
・春にはまた新しい転校生・桜戸光が問題起こして変な時期に転校してくる。





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最終更新日  2017.03.20 16:58:34
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