猫まっし!なクロノス記

猫まっし!なクロノス記

ぼやき -1-

ぼやき -1-

やぁ。
初めまして、と言うべきなんだろうな。

なにから話せばいいんだろか・・・。
そうだな、じゃぁ、自己紹介なんてものをしてみるか。


俺はクロノスで、冒険者稼業をしている。
しかし、冒険者というよりは強くなるための修行に精を出してるって方が正しいな。

職業はウォーリア、得意はシャウトだ。
盾を持つなんて器用な戦い方は出来ないから、両手でハンマーを振り回してる。
巷には斧とか様々な両手武器が出回ってるが、俺にはこの伝説の武器と言われている「スタウトハンマー」これが一番しっくりくるんだ。
ここだけの話、実はあんまり強くない。
基礎体力にはかなり自信があるんだが、筋力はいまいちなんだよ。


他には、だな。
兄弟は全部で4人。俺は2番目だ。
上には姉が一人、そして下に妹が2人いる。
家族が多いってのは、賑やかでいいんだが、たまに・・・いや、けっこう・・・、しょっちゅうかもな・・・、うるさかったりする。

女が3人集まって、姦しい。
先人はよくも言ったもんだ。
あ、ちなみに、このことも内緒な?


俺はこの頃、冒険に出ることが少ない。
それというのも、一家の大黒柱である姉貴に「外出禁止令」なるものを発令されてるからだ。
いや、むしろ「冒険家業停止令」という方が、正しいかも知れない。


そのおかげで、今日も俺は、クロノス城の城壁に腰をかけて、ぼーーーーーっと通りを行き交う人の流れをただ眺めている。

「狩りに、行きたいよなぁ・・・・・・。」

思わず漏れるつぶやきに、傍らの相棒 -スタウトハンマーだ- も頷いた。

「おっ!そうだよな?お前も行きたいよな!」

もしかしたら、気のせいだったのかも知れない。
けど、俺には本当にこいつが頷いたように感じたんだ。
なんせ、戦うための武器だ、こんな所で甲羅干しされて言い訳がない。

「あああああ、行きてぇよー!」

つぶやくにしては、やや大きめの声。
ま、雑踏に紛れて誰にも聞こえやしないだろ。


「まぁた、こんな所でぼやいてる。」

不意に足下から、声がした。
慌てて、足の間から下を覗くと、妹の一人、棒(ぼう)が苦笑いをして立っていた。

「ぼやく直前に、ちゃんと確かめたはずなんだが・・・。」

「ちゃんと、ねぇ・・・。そんなとこで叫んでちゃおかしな人だよ。兄貴?」

今度は後ろからだ。
またまた慌てて後ろを振り向くと、してやったりの笑顔が飛び込んでくる。
もう一人の妹、桧だ。

「第一、兄貴はもっと全体を見ないから、榛(しん)姉にも怒られるんだよぉーだ!」

耳が痛い・・・。
末っ子の特徴だろうか、桧は辛口だ。
でも、正論なだけに言い返す術もない。

「反省してるって・・・・・・。」

「とりあえず兄さん、毎日毎日そんなに甲羅干しばっかりしてると、そのうち干物になるよ?」

棒(ぼう)がいまいち微妙なフォローを入れてくれる。

「・・・そうだな。」





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