猫まっし!なクロノス記

猫まっし!なクロノス記

門出 -3-

門出 -3-

「じゃぁ、そろそろ。」

目覚めた時のこわばったような竦んじまうような緊張感は、もう遙かどこかに飛んでいっている。
いま感じてるのは同じ緊張感でも、どこか心地よいそれ。
あとは第1歩を踏み出すのみ。

「門まで一緒に行くよ。」

「兄さんのせっかくの門出だしね。」

「門から兄貴の倒れる姿が見れるかなぁ?」

相変わらず桧が痛烈な言葉を放ってくれたが、それでも一緒に来てくれることが嬉しい。


姉貴・棒(ぼう)・桧が先に外に出た。
扉の脇に並んで、俺を待ってくれている。
どうやら花道のつもりらしい。
3人しか居ないから迫力には欠けるが、俺にとっては最高の花道だ。


「うっし。」

一声気合いを入れて、外に飛び出す。


花道を駆け抜けながら、差し出された棒(ぼう)と桧の手のひらを軽く打ち、 姉貴の拳に俺のを合わせる。
そのまま駆け抜け、目指すは南門。


草の匂いがする。
ぎゃあぎゃあと声がする。
いままで耳に入っては居ても、気にしてこなかった城周辺の音・匂いがどんどん鮮烈味を増してゆく。
その匂いに、音に、集中しようとした瞬間。


俺の両脇を風が通り抜けた。
風は俺の前、5メートル程前に立ち止まると、

「兄貴、最悪!」

「今回ばかりは桧に賛成・・・。」

いきなり罵倒を浴びせかけてきた。


棒(ぼう)と桧だ。


最悪とか言われても、こっちには全く身に覚えがない。
いや、それどころかせっかく集中しかけてたところだったってのに。


「いきなり何だってんだよ。」

さすがに、俺の口から出た言葉も少しばかり刺々しくなる。

「なんだ?じゃないよ!その格好!最悪!さいってーっ!」

そんな俺の言葉を綺麗に無視して、桧ががなり立てる。


「桧!」

さすがに俺の横に並んだ姉貴が制止したけど、そういう姉貴の声もいまいち迫力がない。

「何なんだよっ!」

俺の格好が何だって?!
人のせっかくの初陣をぶち壊しやがって。





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