りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年06月13日
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カテゴリ: オレとボク
今日の日記


「アイツとオレ45」



オレはすっかり秋なんだと思った。

もしも、あの時、
彼女に行くなと言っていたら、
ここに彼女はいてくれたのだろうか?

オレは、海の写真を見ながら思う。
多分、彼女の故郷、近場の海なのだろう。
隅にメールアドレスが書いてある。


彼女
タカダさんと初めて寝た日、
結局離れられなくて、
翌日の夜に彼女を送った。
車の中では、ずっと彼女の手を握っていた。

満たされたと思った心は、
離れた途端に彼女を思うようになり、
すぐに会いたくてたまらなくなった。

ありがたいことに翌日が会社だったので、
彼女の顔を見て、
いつもと同じように仕事ができてホッとした。

今日もメールが入っている。


  赤木くんの歌、聴きました。
  スゴイね!
  どうしてプロになろうと思わなかったの?


オレは返事を書く。


  なりたいと思った時期もあったし、イイ線いきそうなこともあったけど、
  オレの中ではどうしても家族が欲しかったし、
  音楽一本で養っていくほどの才能があるとも思えなかったから。


あ…、何か暗いな…。

  でも、まだこれから、ライブやってって、
  どうするか考えるよ。
  気楽な独り者だしね!
  ジジイになってもバンドやってやる!
  って、オレは思ってる。


そう書いて、返事を出した。
特に、今日会おうとか書かなかった。
タカダさんからも返事は来なかった。

仕事が終わると、やっぱり会いたいと思ったけど、
もう彼女は会社にいなかったし、
家に電話するのも気後れした。

明日は会えるか聞いてみようかな…。

オレはそう思いながら、
ふと思いついて、
タカダさんといつも待ち合わせるバーレストランで飯を食べて帰ろうと思った。

中に入って驚いた。
タカダさんがカウンターにいたからだ。

「あれ?どしたの?」

驚いた顔をしたタカダさんは笑顔になった。

「まさか来ると思ってなかったよ。
今日も夕飯作らなくていいの。
そしたら、足が自然にココに向いちゃったのよね。」

「オレもそうだよ…。
なんだ。じゃあ、誘えば良かったな。
どうしようか迷ってた。」

「ホントに?」

「うん。」

オレも注文をして隣に座った。

「あ、そうだ!」

タカダさんはゴソゴソとバッグから何か取り出した。

「はい、これテープ。どうもありがとう!」

「ああ、サンキュ。あれ?コレ何だ?」

「まだ読んでないって言ってたから、本。」

「ああ~、アレかぁ!ありがとう!」

「でね、もし良かったら、このテープ、ダビングさせてもらっちゃダメ?」

オレは本を見て、思い立ってテープをタカダさんの前に置く。

「あげるよ。」

「え?いいの?大事なものでしょ?」

「だいじょぶ。コレのマスターをバンドの友達が多分持ってるから。」

タカダさんは嬉しそうに、テープをバッグに入れた。

「ありがとう。すっごい嬉しいな~。
有名になってね!大事にしておくから!レアテープになりますよ~に!」

「はは!そうなるといいな~!」

「がんばってね!楽しみにしてるから。」


翌日も、約束はしなかった。

ずっと約束はしなかった。

それでも、その店に行くと、タカダさんがそこにいた。

オレが先に来ている時もあったし、

タカダさんんが、すぐに帰らなきゃいけない時もあった。

オレが残業で、閉店間際に行った時も、

彼女はそこにいた。

オレを待っていた。


彼女が会社を辞める日まで、それは毎日続いた。

飲むだけの日もあったし、食事だけの日もあったし、寝た日もあった。

オレたちは、ワザとこれからの話を避けて、

ただ、そこに、お互いの存在があることを確認した。

会えた時は、これが二人きりでいられる最後になるんじゃないかと思うのに、

今の状況が永遠に続くような錯覚をしそうになった。


そうして、会社最後の送別会の日があって、
流石に、その日はもう会えないだろうと思った。

前日、会った時に何か約束すれば良かったのに、
もう最後だと認めたくなかったのかもしれない。
オレたちは、いつものように別れていた。

彼女の、送別会での挨拶の話だと、
今、家には一人で残っていて、
後片付けをしたら、行ってしまうらしい。

タカダさんに酌をしに行って、隣に座った時に、小声で耳打ちした。

「明日会おう。会える?」

それを見て、先輩が「赤木、オマエどさくさに紛れて、何、内緒話してんだよ!」
と、騒いだ。

「愛の告白しようとしてんですから、邪魔しないで下さいよ!」
と、オレが言うと、

「じゃあ、オレも混ぜろよ!」
と、訳のわからないことになってしまって、
オレは押しのけられ、
みんなが一人一人、タカダさんとしんみりしゃべっていた。

タカダさんが主役だから仕方無い。
もう、会えないのかもしれない…。
そんな不安が送別会の間、ずっと心にあった。

終電ギリギリまで騒いで、お開きになって、
タカダさんは、先輩たちに囲まれていて、
同じ方面の帰る人たちとタクシーに乗って行ってしまった。
残った人間は週末だからと、他へ流れた。

オレは終電組といっしょに帰った。
帰ったら、家に電話してみようと決心していた。
飲んでも何だか酔えない。
頭の中が妙にハッキリしていた。

寮に向かう道で携帯の音が響いた。
タカダさんからだった。

「明日、会おう。」

「うん。
迎えに行く。」


アレがタカダさんに会った最後の日だったんだな。

オレは思い返す。

この手に抱き締めたぬくもりも、彼女の体も、
まだ昨日のことのように覚えている。

もしも、あの時、
オレがもう寮を出ていて、一人暮らしをしていたら、
ひきとめられたのだろうか?

もしも、あの時、
あの場所に戻れたら、
強引に連れ去ってしまえたら、
何か変わっていただろうか?


でも、これで良かったんだと思う。
やっぱりひきとめなくて、良かったんだ。

貴女はそこで幸せでいて…
オレの分まで幸せになっていて欲しい。



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最終更新日  2010年03月27日 17時29分12秒
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