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DIARY
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the Fourth Avenue Cafё
EP2:evergreen,3
共和国ソロの上空に巨大帝国船RAVENが姿を現した。都に住む人々は誰一人それに気付かなかった。てっきり共和国の新飛行機が飛んでいるのだろうと勘違いしているのだ。
RAVENの底が開き、大量の小型戦闘機が飛んできた。全部で50機。始めの5機は八方議員用の議会建物に突進した。ディール等が先程いた部屋はもちろん全てが爆破し消え去った。そこでようやく住民達は一大事に気付き、慌てだした。道路は人々で混乱し、空路は小型車の衝突事故で荒れ始めた。帝国小型戦闘機10機ほどが街に襲いかかった。爆弾投下でどんどん破壊されていく。
とうに爆破され、崩れた議会建物の後ろにそびえる議会塔(議員達のシンボル)と同時にソロ軍本部基地である場所から共和国ソロ軍小型戦闘機が発進された。全部で23機。始めの捨て身の5機と街を襲う10機を抜いても、帝国の方が断然有利である。平和な街が一瞬に戦場と化した。高層ビルは見るに耐えないほど容易く倒れていった。人々は何処へ逃げて良いかもわからず、炎の街ソロを彷徨っていた。上空戦、次々に共和国戦闘機が墜ちていった。
ディール、アントニオ、ミッドは議会塔に移っていた。下の入り口でフルサーバス王が恐怖で歪んだ顔を走って彼らの所へきた。頬、額は粒汗がにじみ出ている。「どうなっておる!何故帝国軍が攻めて来おったのじゃ!残りの八方議員は!何処へ行っておる!」ディールは急ぎ足で通路を歩いていた。「大丈夫です。貴方とその親族は殺されることは無いでしょう。王室で静かに待っていてください。帝国軍は来ても、その指示に従うこと。それをすれば、今は命を失わずに済むでしょう」フルサーバスは立ち止まった。そして我に返り、ディールの袖を掴み、振り向かせた。「そんな!冗談じゃない!他の議員は!居なければお主達でワシを守れ!娘も妻の腹にいるのだぞ!それに息子だって!」ディールはアントニオとミッドに指で指示をし、先へ行かせた。「大丈夫です。彼らの目的は私達。我らも戦闘準備に入るので。そう、他の国で騒動を起こしたのも、この期を生み出すだけの騙し玉にしか過ぎません。もし彼らに我らの場所を聞かれれば、中央階段電源中枢橋にいると伝えて貰えれば光栄です」ディールは微笑み、ミッド達の後を追った。残ったフルサーバスは心に大きな穴の空いた感覚になっていた。その穴から怒りが噴き出してくるような。彼は近くの壁を本気で蹴り、王室へ戻った。
3人は大きな煙突のようなところへ出た。ここが中央階段電源中枢橋である。直径100メートルは超える巨大な筒の中にいるようだ。壁には幅の広い手摺りのない階段のようなスロープのような坂がずっと続いている。スロープは地下深くから続き、遙か高くまである天井へと続いている。途中スロープは反対のスロープと手摺りも囲いも無い橋で繋がっている。それが中央階段電源中枢橋の橋の部分だろう。3人はそのスロープをゆっくりと上っていった。彼らの待ち受けている未来へ階段を上っていくように。
空中戦。共和国は既に壊滅寸前であった。帝国はこの期の為に戦力を無駄遣いせぬよう、5年も待っていたのだから。ここで破れれば、今までの苦労が水の泡となるから、彼らも必死であった。
そんな時1機が議会塔の天井で留まり、そこで停止した。船内から黒衣を来た男と白髪の男が現れた。上空で強風が吹き、黒衣をはためかせ、長い白髪をなびかせた。2人は天井の非常口へ向かって歩いていき、そこから黒衣の男が手をかざし、全く触れずに非常口を開けた。扉は強風にあおられ、千切られ、空高く飛んでいった。2人はその扉の中に入っていった。
塔内。空高い天井で物音がなり、煙突内に反響した。
「ようやく来ましたね」アントニオは自分の武器である柄が四方向に分かれた刀を左手(彼は一応、左利きである)で握った。そして右手で十字架を指で辿り、祈った。「やっとだ。あいつを殺せる。この手で」ミッドは震え上がるほど低い声音で言い、自分の刀を抜き、左手にレーザー銃を構えた。2人は戦闘準備に入ったのだが、1人だけディールは杖をついたまま、動こうとしなかった。ただ空一点を見つめていた。天井の扉が開き、そのわずかな隙間から入ってきた日の光を。3人は何本も出ている橋の1つに各々立ち、待っていた。天井が少し空いただけだが、地下からの風と反発しあい、風が巻き起こり、3人の服をなびかせていた。手摺りも囲いもない橋はそう考えると危なかった。落ちると一貫の終わりだ。そして空気を貫くような足音が聞こえてきた。「いよいよだ」
スロープをゆっくりと下りてきた2人は一番上にいるミッドを見過ごし、今度は1つ下の橋に立つディールを見て、そして一番下にいるアントニオの顔を見てから、ディールの立つ橋が繋がっているスロープの位置で止まった。つまり3人の立つ橋の丁度真ん中のスロープの位置で止まったということだ。
ミッドは走り出した。そしてディールの立つ橋へ飛び降りようとしたその時「止まれ!」と彼を一瞬で止まらせた声が鳴り響いた。ミッドは声も出ないまま、その場で止まってしまった。どうやら叫んだのはディールのようだ。「止まれ、ミッドよ。焦るな。焦れば動きを読まれる。そんなことも忘れたか!」ミッドは歯を食いしばり、先程のように仁王立ちになった。
しばらく時間が止まった気がした。
黒衣の男シリウスは黒いフードの中でにやけていた。「お久しぶりです、ディール議長。それとも初めましてかな、爺」「黙れ。お主に馴れ馴れしく話しかける筋合いはない」ディールはきっぱりと言い返した。シリウスは大口を開けて、腹を抱えるほど笑った。「筋合いね。まぁ話をしたくないのはわかるが、久々の師弟の出会いではないか」シリウスは黒衣のフードを取り、素顔を見せた。サルファードはそれに焦った。「シリウス卿!こんなところで素顔を見せられては!」「構わぬ」彼は後ろに立っているサルファードに手で止まるよう示した。「よう。前はこの身体では無く、リストの身体だったがな。それでも頭の片隅には記憶がある。お前ごとき爺に教えられていたということを」シリウスは黒衣の中から十字架が括り付けられている長い刀を取りだした。そしてそれをディールに突きつけた。「お喋りはこれまでだ。俺達がここへ来た目的を知っているだろ」「あぁ。共和国を帝国に取り込ませろ、ということだろ。結局は強硬手段を執るしかないとわかっていながら、話し合いに来たのか」ディールはシリウスを睨んだ。一方彼は真に受け止めず、子供じみた笑顔を見せ、笑っていた。「わかっているではないか!」
ディールは何か大きな掌に押されたように、橋の上を飛んでいき、向かいの壁に激突した。ミッド、アントニオは一瞬のことだったので、何が起きたのかもわからなかった。それでもミッドは橋を飛び降り、手をかざしているシリウスに飛びかかっていった。シリウスはミッドの方にも手をかざした。ミッドは無抵抗のまま、飛ばされ、2つ下の橋まで落ちた。そのまま橋にむち打ちになり、刀を手放してしまった。アントニオはディールの立っていた橋まで飛び移り、シリウスに刀を振り下ろした。しかしその刀はシリウスに当たらず、間に入ったサルファードの刀とぶつかった。刀と刀の触れ合う金属音が反響する。アントニオはそのままサルファードに押され、橋の中央まで行った。「シリウス卿には何人たりとも触れさせぬ」2人は何度も刀と刀を重ね合い、それぞれの攻撃を避ける。激しい攻防戦が繰り広げられた。
壁にぶつかり、倒れていたディールはゆっくりと起きあがった。真ん中にアントニオとサルファードを挟んでシリウスと睨み合っている。その時、2つ下の橋まで落とされたミッドがシリウスの所まで跳んできて、刀を抜き、彼の腰を真っ二つに切るようにそれを振った。しかし、当たった感触はなく、また掌で押されるように、突き飛ばされた。飛ばされたミッドは1つ下の橋で着地したものの、飛ばされた反動で刀を地下深くまで落としてしまった。刀は真っ暗闇の中で何かに当たり、音がした。「くそ!」ミッドは素手でシリウスに立ち向かっていこうと、シリウスの所まで跳んだ。シリウスは彼の方に手をかざし、またもや飛ばした。ミッドは煙突の壁まで飛ばされ、そこに激突した。そしてぐったりと動かなくなった。
「くそ」ディールは真ん中のアントニオに当たらぬように、シリウス目掛けて、レーザー銃を連射した。何発か、アントニオと戦っているサルファードに弾かれたが、残りは全てシリウスに当たった。
と思われたが、先程のように彼は手をかざし、それらを他方向へ飛ばしていった。壁に当たり、そこが焼焦した。
アントニオとサルファードの刀は重なったまま、2人に持ち上げられていき、アントニオがそれを振り払った。サルファードはバランスを崩し、無抵抗になった。そこにアントニオは刀を振り下ろした。「なぬ!」サルファードは刀で防御もできないまま、アントニオの刀を腰へ入れてしまう、ところだった。アントニオの動きが止まった。「な、くそ」アントニオの胸には焼けた黒い跡とそこから立ち上る焼煙があった。彼はシリウスを見た。彼は笑いながら、銃を持っている。
アントニオは血を吐き、その場に崩れた。素手で防御していたサルファードはしばらく動かなかったが、アントニオが崩れるのを見ながら、笑って立ち上がった。「はは。どうした」アントニオは動かない。「どうした。アントニオ副議長!」彼はアントニオを蹴飛ばした。「やめろ!」ディールは今度はシリウスではなく、サルファードに照準を合わせ、発砲した。サルファードはそれを刀で受け止め、もう片一方の手で銃を抜き、ディールを撃とうと構えた。
「やめろ」シリウスの低い声が2人を止めた。サルファードはディールを注意しながら、反対方向のシリウスに顔を向けた。「爺は俺がやる。割り込むな」シリウスは初めてその場から動き、サルファードの方へやってきた。ゆっくりと黒衣を揺らしながら。
アントニオは胸の痛みを抑えながら、その橋から1つ下の橋に無惨に落ちた。
サルファードは無言で下の橋へ飛び降りた。そして下でうずくまっているアントニオを蹴って、仰向けにした。「起きろ。もう一度始めるぞ」ディールはまたサルファードに攻撃しようとしたが、シリウスの視線を感じ、止まった。そしてシリウスを見た。「はっはっはっはっは。そんな恐い顔するな。幸福が逃げるぞ」「すでにこの世から幸福は消え去った!」ディールは床を思いきり蹴り、今までに見たこと無い速さでシリウスの懐まで跳んでいき、、小刀を抜いた。シリウスはその速さに圧倒され、手をかざせなかった。が、見事にディールの刀を避け、自分の刀を抜き、ディールのと重ね合わせた。初めての対等な戦闘。
アントニオの方はゆっくりと起きあがり、サルファードが床においてやった刀を握り直し、再戦が始まるところだった。アントニオの息は相当上がっている。
十五、
共和国クルタウロン、第1ロボット収容倉庫。誰もいなくなり、静かな一室で電子音がなり始めた。120ダース収納されたロボット棚が59列並んでいる中、1体が首を回し、動き始めた。ゆっくりと首を回し、辺りに誰もいないことを確認してから、勢いよく棚から出てきた。すると前の列にぶつかり、キュィーンと音を出した。そしてまた首を回してから、列に沿って、倉庫の出口に向かって、6本足で走っていった。
扉の前に着くと胸から細い手を出し、カードキーの鍵穴に差し込み、2秒もいじらない内にすぐに鍵を外した。鍵が開く音に反応し、また首を回した。何事も無いことを確認し、扉を開けて外に出た。出た直後、扉の前には帝国軍がいて、ロボットに気付いた。「おい!お前は何だ!」男は銃をとり、それを撃とうとした。がロボットが怒り、口を開けて、中に隠していたレーザー銃で男を撃った。レーザー弾は男の腹に当たり、彼はそこにうずくまった。ロボットは倒れて痛そうにしている男を置いて、ニーナ女王の所へ急いだ。
倒れている男はロボットが姿を消したのを確認してから、安心して服の中から小型無線機を取りだし、番号を押し始めた。番号を押す音に気付き、ロボットは引き返してきた。男はロボットが自分の所に近付いてきたことに気付いたのと、先程撃たれたことでロボットが恐くなっていたこととが重なったため、悲鳴を上げた。「うあぁぁぁ」ロボットは男の顔寸前で止まり、手に持っていた小型無線機を踏みつぶした。無線機は男の手の中で爆発し、男の手が焦げた。彼は気絶した。
男を置いて、今度こそロボットはニーナを助けに行った。
大ホール。クルタウロン軍とソロ軍が腕を縛られ、集められていた。もちろんメサドとミドナカもそこに居た。しかし2人は他の隊員と一緒にまとめていると危険と見なされ、離れた舞台の上にいた。そして彼らの横の豪華な椅子にニーナが手を縛られ、座っていた。彼女は恐怖と自らの責任を責めて、涙を必死に堪えていた。ニーナの椅子の横には覆面をかぶった女性が立って、全体を見張っていた。
ミドナカは女性の顔をしばらく見ていた。何処かで見たことのある顔(覆面でよく見えない)だ。
女はニーナの横でしゃがみ、彼女の顔を覗き込んだ。「さっさと答えないと、隊員が死んでいくぞ」ニーナはクルタウロン国を背負い、そして今、帝国から不利な条件をのませられようとしているのだった。それでも彼女はこの国と共和国の正義の為、自らを犠牲にする方法を考えていた。「困ったものだな」女は立ち上がり、後ろに控えていた男に耳打ちした。男は静かに納得し、何処かへ消えていった。メサドはずっとそれを見ていて、すぐにでも助け出そうとしていたが、何もできないで居た。
ミドナカは思い出した。アナスタシー・ホルン=ディッド。もし彼女なら、これは彼女の作戦か。しかしここまでする意味など無い。では、帝国に操られているのか。ミドナカはしばらく考えていたが、歳の勘というものだろう。彼女が帝国に動かされているという意見が強くなり、そう決断した。「のぅ。お前はアナスタシー・ホルン=ディッドではないか」女とメサドは彼を見た。しかし彼女はすぐにホール全体に目を移した。完全に無視。「何故お前がここにいて、こんな事をしている」女は全く聞こうとしない。「もし帝国に脅されているのなら、私が助けてやる」それを聞いていた帝国軍の男が注意した。「そこ喋るな。次喋ると口が飛ぶと思え」ミドナカはその言葉を完全に無視し、続けた。「お前は今まで共和国でいろいろやってくれた。そして帝国内でもしっかり動いていてくれたのではないか」メサドは小声で言った。「そんなことここで言っては、もし彼女の作戦だった場合」「それはない。もし帝国を信用させようと思って、意図的に動かされていたとしても、ここまでする必要など何処にもない」ミドナカは冷静に反論した。
アナスタシーはミドナカの方へ歩いていき、しゃがんで彼に顔を近づけた。そして顔を隠していた覆面を顎まで下ろし、ゆっくりと言った。「黙れ。私は歴とした帝国軍長だ。今度無駄口叩くとその老いた脳が吹っ飛ぶことになる」ミドナカは笑った。何か自分の予想していたことが確信に変わったときのように。「その特徴のある口とホクロ。やはりお前か。アナスタシー」彼女はその事に気付き、後方に下がった。「くそ!黙れ」女は銃をとりだし、ミドナカの額にあてがった。「ミドナカさん!」メサドはミドナカが早まった行動に出た、撃たれると思っていたが、どうやら撃たれはしなかった。
メサドはアナスタシーの後ろに誰か男が居ることに気付いた。その男は低い声で言いながら、彼女の突き出した銃を下ろした。「やめろ。A」そしてアナスタシーは深く礼した。男は前に出てきた初めて見る日系人。「はっはっは。共和国の無敵戦士と謳われた八方議員ではないか。私は寺井大助だ」男は手を差し出した。どうやらミドナカに握手を求めているらしいが、手を縛られているからできるわけもない。もちろん彼はそれをわかっての行動だった。「あぁすまないすまない。手が動かせないんだったね」
寺井は差し出した右手を引き、もう一方の手で右手の乾燥肌を撫でた。男はいつまでも下心のある中年男性の笑みを浮かべていた。そしてアナスタシーに手で合図をし、その場を去らせた。アナスタシーはもう一度深く一礼してから、そのまま後ろへ1歩引き、後ろへ振り返って、何処かへ消えていった。
男は笑いながら、彼女を見送り、今度はミドナカに顔を向けた。「彼女のことはご存じかな。いい女でしょう。あの刃向かう態度、私を見下ろす目つき、背筋がゾクゾクしてたまらない。調教がいがありましたね」ミドナカはその言葉に怒り、卑下な笑みを浮かべている目の前の男に襲いかかろうと前へ乗り出したが、後ろを繋がれているため、力が上手いこと働かず、そのまま転んで、額を床にぶつけた。「はっはっはっはっは」寺井はミドナカの惨めな姿に大笑いした。「そんなに悔しいか。えぇ?八方議員の御老人?」ミドナカは額を床で擦りながら、起きあがった。そのせいで彼の額は赤く火照っていた。「黙れ、禿げた早漏日系人が」ミドナカは男を挑発し返した。その挑発に男はまんまと騙され、頭に血が上ったらしく、銃をミドナカの血が出始めた額に押しつけた。「黙れよ。お前は今そんなこと言える立場じゃねーだろ」流石のミドナカも身の危険を感じ、黙った。
ずっと隣で見ていたメサドはふと目線を他に移した。大ホールの入り口。ちょうどニーナの座る椅子の遙か後ろ。そこから黒装束の男達が並んで歩いてきた。その中に先程アナスタシーが耳打ちした男もいる。どうやら彼女は彼らを呼べと命令したらしい。メサドはそちらに目線を奪われていた。
男達は静かにニーナの周りを囲んだ。そして不安で困惑している彼女を無理矢理立たせ、ホールを出ようとしていた。メサドはニーナが危ないと判断し、我を忘れて叫んだ。「やめろ!ニーナ!ニーナ!ニーナ!放せ!ニーナから手を放せ!!近寄るな!」メサドは先程ミドナカがしたように立ち上がろうとしたが、同じ事になった。彼の叫び声と転んだことでミドナカと寺井の会話は止まった。メサドは右頬を強く床で打ちながらも、その痛みを我慢し、ニーナの所へ駆け寄ろうと必死でいた。「ニーナ!」ニーナも男達に手を引かれていたが、そこから逃れようと必死だった。「メサド!お願い、やめて!助けて!」しかしニーナの小力な抵抗も虚しく、彼女は男達に引かれて、大ホールを出た。
彼女の姿が消えた後、メサドは唇をふるわせながら、放心していた。
それを見ていた寺井は笑いながら、メサドのところへ来た。「お若いの?彼女と恋にでも落ちたかな?それは困ったなぁ。彼女はこれから命を落とすというのに。残念なことだ」メサドの怒りは頂点に達していた。「くそぉぉぉぉーー!」喉が嗄れるくらい、叫んで、前に乗り出した。その勢いが強すぎたため、先程よりも強く床に叩き付けられた。そしてメサドは目を強く閉じ、そのまま動かなくなった。寺井はそれを嘲笑いながら、彼女の座っていた椅子に座った。ミドナカは横で冷静に見ていたが、しばらくして倒れて動かないメサドの耳元で囁いた。「彼女は大丈夫だ」まずは彼を落ち着かせること。「彼女は個室に行かされ、ここの状況を把握できなくさせられただけだ。心配するな」メサドの目が少し開いた。「帝国軍のあの男は、集められた人々に『女王も認めた。この国は帝国のものとなった。これから我らの指示だけを聞け。』と言うだろう。全ての責任は隔離された彼女に押しつけて」今やメサドの目は大きく見開かれていた。「なら、いますぐ助けだそう」メサドは倒れたまま、小声で返事した。「了解だ」ミドナカは賛成した。
ニーナは男に挟まれ、白い廊下を歩いていた。ここは我が国のはずなのに、もう帝国のものになってしまったような感覚になっていた。そして彼らは長い廊下の端にある部屋に着いた。厳重な鍵に大きな扉。「開けろ」男が彼女に命令した。彼女は嫌々ながらも身の安全を守るため、従った。手錠の付けられた腕でぎこちなく、彼女は指紋をスキャンし、次は網膜。すると番号の並んだ薄い板が引き出された。ちょうどアナスタシーが帝国大型船RAVENの掃除道具入れ(ZERO)で見つけたもののように。その板の番号を彼女にとっての順に押した。周りで見ている男達にとってはランダムとしか見えなかった。最後にEnterボタン。大きな扉が開き、中が明らかになった。真っ白い、窓のない壁一面と並ぶ棚。棚には幾らかの金庫。いや、この部屋自体が金庫のような物だった。「さぁ中に入ってろ。我らの条件をのむまでは出すことは許されない」男はニーナの背中を押し、部屋に押し込んだ。そしてすぐに扉を閉めた。ニーナは無理な条件をのむしかここから出る方法を失ったのだ。無論、国民は彼女が認めなくとも、認めたと思わされ、無理な労働を強いられる。
ミドナカ、メサドは落ち着いた様子で並んで座っていた。寺井はその様子が気に食わないらしく、指を椅子の肘掛けに当て、苛立つ音を出していた。表情も機嫌の悪い顔へと変わっていった。ついに退屈が過ぎ、彼は立ち上がった。
その時。
大ホールの壁が爆発した。大爆発。いきなりのことで皆は心臓が破裂するかと思われた。もちろんミドナカ、メサド、そして寺井も。この爆発は帝国が計画したものでは無いらしい。皆が爆発した壁を見ているのに、1人だけ、メサドだけ逆方向を見ていた。壁は爆弾で爆発したのではない。誰かが大砲を撃ち、それが壁に当たったのだ。そう推測してのことだった。
案の定、逆方向に、誰もいない影に大砲があった。しかし撃った者の姿がない。メサドは辺りを見回したが、それらしき人は見当たらない。不審に思っているその時にメサドの後ろで組まれている手錠が取れた。そして足にも付いている鎖もがとれた。彼は後ろを見た。
そこにはあの、6本足で顔が特徴的なロボットが立っていた。メサドは目を疑った。こんなロボットがこの世に居るなんて。しかし自分を共和国の者だとわかって助けてくれたのは間違いない。メサドはすぐさま立ち上がり、この騒動で誰も自分の手錠が外れたことなど気付いていないことを良いことに、そのまま気付かれないようにニーナの所へ行こうとした。「メサド」誰かに呼び止められた。帝国軍か。メサドは振り向いた。そこにいたのはミドナカ。彼だけ唯一、気付いたらしい。メサドは彼が何を言いたいのか即座に理解し、手で返事をした。そして物陰に隠れながら、帝国軍の1人の背後に行き、そいつを一瞬で殺した。武器を奪ってから、また隠れながらミドナカの所へ戻り、手錠と足を解いた。「感謝感謝」ミドナカはメサドの後を追って、物陰に隠れた。「あれは何ですか。あのロボット」「彼女の直属護衛さ。CO23 Angel。エンジェルと言っているらしい。それよりもこれからどうするつもりだ」「僕は彼女を助けに行く」「なら、私は集められた国民を上手いこと動かそう。帝国軍を追い返してみせる」「了解」メサドとミドナカは逆方向へ走り出した。
すでに寺井の姿はそこになかった。メサドはエンジェルにニーナの場所を教えて貰おうとしたが、もうエンジェルは彼女の元へ行き、姿を消していた。
十六、
共和国ソー。ホルンディオンで良き友クリフとジョニーが亡くなったこと、共和国軍第1番隊、第2番隊、第3番隊が全滅したことを知らず、リードとウォーミアムは戦っていた。
「あれが、帝国船か」リードは帝国軍を切り倒し、群れからから抜けだし、その先にある大型船を見た。如何にも帝国軍本部と言わんばかりに堂々と立っている。そんなとき彼の後ろで帝国軍が次々と倒れていった。そして帝国軍の中から1人の青年が飛び出してきた。カイトだ。身体に傷を負いながらも必死に前まで来ていたのだ。カイトはリードの横にまで来た。「八方議員にしては遅いですね」彼は余裕な笑顔を見せた。「上に言っていい言葉か」リードも笑って返した。カイトとリードは背中合わせになり、周りにいる帝国軍を美しく切っていった。「あれは!」カイトはようやく気付いた、帝国船に。
リードとカイトは手を止めた。周りにはもう帝国軍はいなくなっていた。2人とも大型船に目を奪われていた。「あんな巨大な船が入ってきていたとはな。気付かないこちらも鈍かったようだ」「あの中にこの帝国軍隊長がいるのですか」「多分な」
「待たせたな!」リードとカイトの後ろで群れている帝国軍の中からマントをはためかせた黒人男が飛び出してきた。ウォーミアムだ。また彼の前に帝国軍が立ちはだかる。ウォーミアムは帝国軍をバッタバッタと力だけでなぎ倒していった。そしてようやく2人の横にまで来た。「待たせたな」一度大型帝国船を見てから。「あれは帝国船か」「あぁ」とリード。
リードは時計を見てから言った。「よし、行くぞ。30分で戻るぞ」「オーケー」ウォーミアムはふざけて言った。そして3人は帝国船へ走っていった。
それ程時間もかからず、船に到着した。入り口には警備軍が5人ほど巡回していて、カイトは岩陰に隠れ、その様子を伺っていた。彼の後ろではリードとウォーミアムが銃の準備をし、船の地図で構造を確認していた。「第1ホールの横のこの通路だ。ここをこのまま進んで、3階にある操縦室に行く」リードは指で構図を辿りながら言っていたが、途中でウォーミアムの口が挟まれた。「それなら、第3ホールの廊下を使った方が近いのでは」「ここか?」「はい」リードは顎髭を撫でながら考えた。数秒考えてから口を開いた。「いや、ここを通るには、横のこの部屋に見つけられてはならない」「そうか」なぜなら、横には通信室があり、そこに見つかれば、簡単に帝国ギマールへ情報が知られるからだ。リードは手を休め、カイトの方を見た。そして音を立てないように横にしゃがんだ。「どうだ?カイト。警備軍は、どんな間隔で巡回している」カイトは警備軍を見ながら、言った。「2人が扉の左右に立っていて、他の2人が直径10メートル範囲で巡回しています。残りの1人が扉を頻繁に出入りしています。つまり常時扉には人がいます」「そうか」リードはまた髭を撫でた。「なら、周りを巡回している男達が離れたとき、扉を出入りしている奴が中に入っている内に、始めるぞ」リードはウォーミアムの方へ目を向けた。「わかったか」ウォーミアムは親指を立てた。「先程の話聞いていたのですが」カイトが言った。「通信室に発見されてはならないのなら、俺が囮になって、注意を向けておく。その内に奥へ進んでください」リードは驚き、彼を見た。彼の目は勇気に満ちていた。それだけでリードは納得させられた。「わかった。そのかわり、しっかりやれ。中途半端なものは、我々も気付かれる。(死なないで欲しいが)死ぬ覚悟でやれ」カイトは無言で頷いた。リードはウォーミアムの方へ戻り、構図を懐へ入れた。「よし、行くぞ」3人は岩陰から外の様子を見た。ちょうど周りの2人は離れている。ウォーミアムはその1人の所へ行き、陰から撃った。リードも同じようにもう1人を。どうやら扉の横にいる2人には気付かれなかったようだ。カイトは岩陰から出て、2人の前に姿を現した。「誰だ・・・」男達の横の陰に隠れていたリード、ウォーミアムは2人を撃った。
残りは1人。扉が開いた。3人はまた陰に隠れている。男は周りに誰もいないことに気付き、すぐに中に戻ろうとした。そこをウォーミアムが撃った。
扉は開いたまま。どうやら面倒くさい鍵も暗証番号で外さなくて済んだようだ。3人は中に入って、構図通り、第3ホールへ走った。
十七、
共和国クルタウロン。メサドはニーナが消えていった道を走っていた。見たことのない通路に迷いそうになりながらも、まずはエンジェルの姿が見えることを祈って走っているのだった。メサドは通路を曲がった。すると、そこには待機していた帝国軍が雑談していた。メサドは彼らと出会い、すぐに道を引き返した。雑談していた彼らはしばらく見つめ合ってから、状況がわかったらしく、メサドの後を追って走っていった。
メサドは引き返した道をすぐに左に曲がり、後ろの男達も曲がった。メサドは後ろに集中していたため、前にも軍がいることに気付かなかった。「あ!」メサドはようやく気付いたらしく、急ブレーキをかけて、止まった。挟まれた!しかし、メサドは全く焦らなかった。すぐに銃を抜き、前に居た男の1人を撃ち、回転して、後ろから追いかけてきた男の1人を撃った。一瞬の出来事に帝国軍は何が起きたかわからなかった。そんな間もメサドは隙を与えず、追ってきた奴等の2人を撃ち、前に居た男に刀を投げはなった。これで残るは前に1人、後ろに2人。彼は壁に駆け上り、宙返りしながら、追ってきた帝国軍1人を蹴り、もう1人を銃床で殴った後、撃った。「あっ」メサドは2人を倒すのに集中していたため、もう1人を忘れていたようだ。メサドの後頭部には冷たい銃口が当てられていた。
どうも、(大事なところで)最後の最後で、何かを見落としてしまうようだ。一度あったような。僕が気を失ったとき、後ろに居た女に気付かなかったこと。
そんなことを危ない状況ながらも考えていた。気絶させられたとき。そうだ、あの時ニーナは部屋に帝国軍が居ることを分かっていながら、自分を入れた。彼女は、もしや僕を帝国に売ったとでも言うのか。「!」メサドはあることに気付いた。自分は、彼女のことを疑っているのではないのか。何て事を!愛する彼女を疑うなど、決してしてはならないことだ!それなのに、僕は何て過ちを!「くそ」メサドは気持ちを張り裂けそうな胸からこぼした。
「何だ?」後ろで、銃口をあてがっている男はメサドが何を言ったのか聞き取れなかった。もしくは、メサドの自らに対する『くそ』を、自分に言っている暴言と誤解してしまったか。「僕は、何て事を」今度はしっかり聞こえた。「何て事を?さぁな。そんなこと知らねぇーよ」男は引き金をゆっくりと引いていった。メサドは、男を無視して呟いた。「なぁ、エンジェル」メサドに銃を突きつけている男は、後ろで自分と同じ事をしている者に気付いたが、後ろに振り返れない。メサドの言葉に返事するように、エンジェルが音を発した。「ピィー、オーケイ」男は、電子音でそれが人間ではないことに、ようやく気付いた。「はっはっは。焦らすなよ」男は笑いながら、後ろに振り返った。振り返った直後、安心して出た笑みが一瞬で消えることになった。彼の目の前、言葉通り目の前に銃口があった。「うあああああ」男は悲鳴を上げた。今まで穏やかだったエンジェルの顔が今、怒りで歪んで見えた。銃を突きつけられて、身動き取れなかったメサドはようやく動けるようになった。「『俺』は本当にクズだ。今すぐにでも彼女に逢い、疑ってしまったことを謝りたい」「ピィー」
ダンッ。
エンジェルに撃たれた男はそのまま、崩れた。そしてメサドは銃を腰に提げ直し、投げはなった血の付いた刀を死体の服で拭いてから、拾い上げた。「すまない、遅れた。エンジェル。さぁ行こうか」メサドは歩き出そうとしたが、道の先を見て、立ち止まった。「何処へ行くつもりだ」
遠い昔、戦士が同力の仲間と闘わなければならない状況があった。何故、仲間同士闘わなければならないか。そこには、醜い国同士の睨み合いがあった。1人は仲間だから闘いたくない、もう1人は国のためなら闘う、と言う。
今、そんな状況なのだろうか。メサドの前に現れたのはアナスタシーだった。「何処へ行くつもりだ。ここから先は行かせない」
十八、
共和国ソロ、中央階段電源中枢橋。アントニオは剣をサルファードへ向け、構えた。サルファードもいつもの高慢な笑みを浮かべながら、剣を構えた。「行くぞ、しっかり受け止めろ」サルファードはアントニオに突進していき、身体を回転させ、下から剣を振り上げた。アントニオは無理な姿勢ながらも、刀を重ね、身を守った。サルファードは回転の余韻でアントニオの防御を流し、彼の腰に剣を切り入れた。無理な姿勢で守りながらも、次の攻撃も見事に受けた。そして何とか自分のペースに持っていこうとアントニオはその攻撃を受け流し、刀の向きを変え、サルファードの喉へ振り切った。しかし、その攻撃も虚しく、サルファードは余裕で避けた。一方、アントニオの方はダメージが大きく、振り切った後、膝を折り曲げ、荒く呼吸した。
「どうした、アントニオ。もう終わりかな?」アントニオは既に手をついて、咳払いしていた。「黙れ。小僧!」
アントニオは曲げている足をバネに、サルファードに突進した。そして、彼は無理な姿勢を我慢しながら、サルファードに攻撃を繰り返した。サルファードも口から声が漏れるほど、彼の攻撃を必死に防いでいた。サルファードはこの状況から抜け出そうとアントニオの刀を振り払った。そして、アントニオの刀はサルファードの刀に飛ばされていった。そこを狙って、アントニオは銃を腰に提げたまま、連発した。彼のレーザー弾は何発か見事、サルファードの腹に命中した。サルファードは口から血を噴き、足は骨が無くなったように彷徨い始めた。そして、何か頼りを見つけたかのように、足の震えは止まり、しっかりと立ち止まった。
口から垂れた血を拭わず、剣を振り下ろした。その刃はアントニオの左肩から右腰へ直線を引いた。その直線から紅い血が威勢良く噴き出した。「ぐあぁぁっぁあ!」アントニオは左肩を抑え、よろめき、後ろへ倒れた。ナマ物が床に叩き付けられたように――グチョ――、音を立てた。足を踏ん張っているサルファードは口に溜まった血と混ざった痰を暴言と共にアントニオの右手に吐いた。
「糞、この老いぼれ爺が。俺の高貴な赤を無惨に出させやがって。ただ殺すだけで済むと思うなよ。禿げ」サルファードはアントニオが落とした銃を取り上げ、彼の股間に突きつけた。「はっはっは。どうだ?」アントニオの反応は無い。サルファードは顔をしかめた。今度はアントニオの顔を踏みつけた。
裏でアントニオの顔をこちらへ向けた。アントニオは今まで閉じていた目を開け、サルファードを蹴り飛ばした。「何!」サルファードは蹴りを直接、血の出ている傷に受け、下の橋へ落ちていった。腹を抱えながら、無事下りた。「糞野郎!」サルファードは銃でアントニオのいる橋を撃った。アントニオに、こちらへ来い、という合図だ。アントニオは何とか起きあがり、サルファードの待つ橋へ落ちた。着地したとき、震動が身体に駆けめぐり、全身の痛みが増した。
ディールはシリウスとの睨み合いを続けていた。白い戦闘服に茶のマントを羽織るディール、黒い黒衣で全身をまとうシリウス。老いと若いとが対照的な2人を浮き彫りにしていた。「来い、ディール爺。貴様の心意気もろとも粉砕してやる」シリウスは三日月のような口で囁き、煌めく瞳でディールを睨んだ。
ディールも全く怯むことなく、睨み返している。「ほざけ、母の乳をしゃぶって、頼っておる青二才が」ディールは目にも留まらぬ速さで銃を抜き、シリウスを撃った。シリウスはレーザー弾をいつもの掌で余裕にはね返した。しかし、はね返したときには既にディールは彼の間合いに入っていた。小刀でシリウスの胸を一突き、と思ったが、シリウスは何とか剣の柄で受け止め、身体を回し、攻撃を流した。
ディールの身体は前乗りになり、背中が無防備となってしまった。シリウスはそこを狙い、剣を立て、振り下ろした。しかし、ディールに触れる前に遠くから来たレーザー弾をはね返し、シリウスの反撃は止められた。彼はレーザー弾の来た方を見た。塔の壁の崩れた跡が残っている。ということはミッドか。しかしその場にミッドは居なかった。
「!」シリウスは頭上を見た。ミッドが彼の上まで跳んできていたのだ。そして今にも剣をシリウスに振り下ろそうとしていた。シリウスは掌をかざし、再びはね返そうとした。が、そのまま倒れたディールの小刀に邪魔され、出来なかった。ディールの小刀を左手首の防具で防ぎ、仕方なくミッドの攻撃を自らの剣で受け止めた。「殺してやる!」ミッドの目は異常なほど膨れあがっている。シリウスは、ミッドの攻撃を流せないと判断し、後ろへ跳んで引いた。ミッドも続いて跳んだ。先に着地したのはシリウス。体勢を立て直し、跳んできたミッドに剣を突き刺した。ミッドは無理な姿勢でそれを返す。耳の痛くなるような金属音と擦れる音。
ミッドはシリウスの攻撃を受け止めたせいで、姿勢を崩し、橋から落ちそうになった。落ちれば、本当の地獄。それでもシリウスの攻撃は止まらない。ミッドは片足立ちで何とかそれら全てを自分の剣で受けた。
シリウスの攻撃はまるでミッドを弄ぶかのように続けられた。それが徐々にミッドの体力と集中力を奪っていった。「そろそろ終わらせてやろうか?」「黙れ!」シリウスはミッドが反撃した一撃を無視した。そのせいでシリウスが受け止めるとすっかり思って、した体勢が崩れ、足が無抵抗となった。シリウスはすかさず、そこを狙い、切り込んだ。ミッドは跳ぶしか避ける方法がなく、とんだ。
「馬鹿」シリウスは呟き、掌を宙に跳んだミッドにかざした。「しまっ――」ミッドは大きな透明な掌に叩かれるように、吹っ飛んだ。ミッドのマントははためき、主人から離れ、剣は奥底へ落ちていった。そして本人は壁に届かず、3段ほど下のスロープに落ちた。「お前に構っている暇など」シリウスはミッドに言葉を残そうとした、その時背後に気配を感じた。「今度は爺か」ディールとシリウスの剣が交わった。2人の剣が交わる金属音とは別に金属音がなった。
奥底へ落ちたミッドの剣が何かに当たった音だろうか。反響する音が妙に合っている。シリウスはディールの刀を振り払った。2人に距離が置かれた。それでもディールの荒い鼻息は聞こえてくる。「大丈夫か、爺。もう無理じゃないのかな?」「黙っておれ!その口切り刻んでやる」ディールとシリウスの剣が再度、交わった。何度も交わる剣。
ディールはシリウスの剣を振り払い、身のこなし良く回転し、シリウスの腹に剣を振り入れた。しかし、その攻撃は流された。そして先程と同じように背中に剣を立てられ、振り下ろされた。それでもディールは怯まなかった。自らの左腕にシリウスの剣を切り入れさせ、それを犠牲に右手に持った剣をシリウスの顔に向けて、振った。しかし、その攻撃も虚しくシリウスに効いた攻撃は頬の切れ込みだけだった。
ディールが振り切ったと同時に、彼の左腕はもぎ取られたように、ちぎれた。腕は血を噴き、宙を回転しながら、下へ落ちていった。「なっ。自らの腕を犠牲に」シリウスはすっかりディールの技に感心させられていた。とうのディールは、してやったりの微笑みを浮かべていたが、正直攻撃は成功と程遠かった。
「だが、終わりは終わりだ」シリウスはディールを上回る笑みを返し、刀を振り下ろした。
その時、バチッ。という音が聞こえた。彼の振り上げた剣から煙が立ち上る。銃を構えるミッドの姿が見えた。「やめろ!シリウス!議長は殺させぬ!」ミッドはそこからシリウスの立つ橋へ跳び移った。まだ足がふらつく。相当のダメージなのだろう。それでもなお立ち向かっていくその魂、シリウスはほころんだ。「そこまで傷ついてなお、立ち向かってくるその魂、私は真に嬉しいぞ。その魂を今ここで潰してやりたい」シリウスの笑いが止まらない。「来い!潰してやる」シリウスは初めて叫んだ。「くそおおお」ミッドはシリウスに突進していった。
そのとき彼の胸元のブザーが鳴った。シリウスの笑いが止まった。「すまない。時間が来たようだ。もう遊んでやれない」シリウスはミッドに手をかざした。しかし、その前にミッドは上へ跳び、シリウスの視界から消えていた。流石のシリウスも面食らった。ミッドは上から銃を連射した。しかし、シリウスにとってそんな小さな攻撃、全くと言って良いほど、通用しなかった。いつものように手をかざすだけだった。上に。
レーザー弾は無惨にも全てはね返され、ミッドに命中した。「くそ」ミッドは口から大量の血を吐いた。しかし、いつまでもミッドの身体は宙に浮いている。
「人類の1つの夢。空中浮遊など、只の遊びにしか過ぎぬのに」シリウスは挙げていた手を前へ向けた。するとミッドはそれに引かれるかのように、空中を飛んでいった。「お前は良かったなぁ。空を飛べるのだぞ。喜べ」シリウスは身体を反対方向へ向けてから、勢い付けて、手を振った。ミッドは先程よりも強く、引かれ、そして壁に激突した。壁の金属部品が凹み、崩れた。「うああああああああああ。やめろ!!!!」ミッドは壁にどんどん押されていき、圧迫されていった。壁が軋む音、骨の砕ける音。
ミッドの悲鳴を聞き、ディールは目を覚ました。しかし、そこに立ち上がる体力は既に無かった。「やめろ!」ただ負け犬まがいに吠えるしかなかった。「はっはっはっは」ミッドの悲鳴に競演するようにシリウスの笑い声が反響した。「これはどうだ?」シリウスは本当に残酷だった。もう片方の手でディールの剣を浮かばせ、ミッドの方へ向けた。ミッドは潰されながらも、今の状況を目にし、驚愕した。
ディールは這いつくばりながらも、シリウスの足首を掴んだ。「やめろ!シリウス!」しかし、シリウスは全くディールを相手になどしていなかった。害虫を蹴り散らすように、ディールの手を振り払った。「お前の愛しい爺議長の剣だ。喜べ」シリウスは遂に行動に移した。剣をミッドに向けて、飛ばした。一瞬のことだった。
ミッドの口から漏れる声、服を紅く染めた血、喉から壁にかけて貫かれている剣。それに伝っていく同じく血。彼に突き刺さったと同じく命は絶えた。ディールは唇を震わせながら、頭を抱え込んだ。それらを見て、笑いを止められないシリウス。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ」ディールは体を震わせながら、腹の底から叫んだ。「シリウス!!!!!!!!!!!!」
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