男は生気のない顔でニヤリと笑った。
俺は何もないまっ白な世界に立っている。 いや、立っているというよりは、浮いているという表現・・・ただそこに存在するというほうが正しいのか。 はっきりといえることは、俺は夢をみているということだ。 目の前の空間・・・白の空間が白の歪みを生み出し、ねじれ、人の形を作り上げる。それは― 「ぁ・・・おふくろ?」 俺の母親、だった。 どうやら目標は寝ているらしい。好都合だ、狩らせてもらう・・・
あの事件・・・両親が死んだ事件より前の記憶は俺には無い。 母親の写真やビデオはあるが、何故か父親に関するデータ、映像資料などは一切ない。 それゆえに、俺は親父の顔も声も知らないことになる。 やがて母親はゆっくりと口を開き、歌を口ずさむ。 「Una stella di argento brilla sul mare e la luminosità cambia anche notte a giorno,,,」 その歌は・・・どこかで・・・ 男は一振りの短剣を取り出し、刃の鋭さを確かめるように、吹き付ける雪の光にかざす。
突然俺の意識が飛ぶ。
意識が戻る。吐き気がする。 思い出した。俺は・・・死んでいるはずなんだ。 暗く湿った地下室には、地面に書かれた魔方陣が光っていた。その向こうには階段。 気づけば俺は、懐かしい歌を歌っていた。父親が、苦しいときに歌え・・・といい、寝るときいつも歌ってくれた歌。 「Una stella di argento brilla sul mare e la luminosità cambia anche notte a giorno. Prima di aiutando stesso e dare il potere a stesso Spirito-di-un-passato-persona Maxwell che è leggero in aspetto!!」 (よくぞ。よくぞたどり着いた・・・)
地下室は風が荒れ狂い、光が舞う。 暗い地下室は光で満ち、俺をも飲み込む。 俺の体は光、俺は光で満たされる。 やがて・・・俺の両手首には腕輪、手のひらには光り輝くダイヤ。