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長い沈黙の後、ママは涙を拭いてこう言った。
「そう、もうそんなときが来たのね・・・。」
一瞬視線を落とし、再び目を上げると、そこにはいつもと同じ、強い目をしたママがいた。凛とした表情で、
「それでは、『モンスター鑑別士5レベル』、『地図製作者5レベル』、『シティウォーカー1レベル』、『錬金術1レベル』。これらの全ての称号を獲得していらっしゃい。」
「ええっ、そんなに?」
「ええ、そんなに、よ。」
「分かった、行ってくるね。」
踵を返して村の入り口方向へ向かおうとすると、
「待って!」
振り返るとママはまた泣いていた。
「パパに・・・パパに会っていかないの?」
少し迷ってから、
「・・・やめとく。急ぐから、もう行くね。」
「プッチニア!」
今度は振り返らずに走って村を出た。立ち止まったらもう一歩も動けないような気がしたから。
ごめんね、ママ、ごめん。もう限界なの。本当はさっきママの顔を見た瞬間、抱きついて、泣いて、この旅を終わらせてしまいたい衝動に駆られてしまった。この上パパにあったら、私、きっとダメになってしまう。
「あなた・・・。」
いつの間にかハンスがレティの傍に来ていた。
「あの子が、来たんだね。マスタークエストを受けに。」
声にならないので、レティは首を縦に振り、そのまま俯いて涙を大地に滴らせた。
「大丈夫。あの子は私たちの娘だ。信じようじゃないか。」
ハンスはそういってレティの肩に手を回し、そのまま強く抱きしめた。
赤山の頂上まで来たときには私の顔も涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「どうしたんだ、プッチニア」
「っく・・・スルタ・・ン・・さん・・・。」
「よしよし、お前はいい子だ。本当にいい子だ。」
しばらくそうしてこの優しい聖獣の暖かな炎の中で泣いた。
スルタンに礼を言って赤山を後にし、ブリッジヘッドに戻った。
「もう気は済んだか?」
ぶっきらぼうに比翼が聞いた。
「うん。ごめんね。」
「とりあえず、計画を立てよう。さっき言われた中でまだ取ってない称号はどれ?」
几帳面な性格の連理がメモを取り出した。
「ええと、シティウォーカーはこの前取ったし・・・あ、あと錬金術師も。あれは苦労したな~。」
「ああ、あのくそじじいのクエな。何度も何度もやり直しさせられて、最後は『ふざけんな、暗殺くらわすぞ』って思ったぜ。」
「こら、比翼!」
軽く睨むと、比翼がニヤニヤしながらこう言った。
「お前らもそう思っただろ?」
「う~・・・うん、実はちょっと・・・。」
「確かにあれはふざけてたと思う。剣ちょっと出しかけたよ。」
ふと目があい、3人でふきだした。大丈夫、私は1人じゃないから。
「モンスター鑑別士はもう3まで取ってるから、後はロマ村で二人の先生にお話を聞くだけだよ。」
「じゃあ、それは他の称号が揃って村に戻ってからでいいね。」
「うん。残りは地図だけだね。地図は2レベルまであるよ。3のクエ受けるのは・・・あ、ここ、ブリッジヘッドだ。」
「さっそく行こうぜ。」
テレポーターの近くにその人は震えながら佇んでいた。薄汚れたねずみ色のシャツ、焦げ茶色のズボンをはいている。それらはところどころ擦り切れ、破れ綻びている。この温暖な気候の港町で震えているのは何故なのだろうか。
「こんにちは。」
声をかけると延び放題の前髪の隙間からおどおどした目でこちらを見つめてきた。
「あの、地図製作者のクエストを受けに来たんですが・・・。」
「分かりました。ブラウンベアーの血と古代ヴァンパイアの目を持って来ましたら私が効き目のいい薬を作ってあげましょう。ケホ・・・。暗いところでも良く見えるし、記憶力も良くなります。ケホ・・・。地図を作る人なら一度は使うべき薬には間違いありません。しかしコリンやアサスが認めた人じゃないと作ってあげませんよ。ケホ・・・。」
「あの、大丈夫ですか?ひどい風邪をひいてらっしゃるように見えるんですが・・・。」
コジは驚いて一瞬表情を固まらせた後、慇懃にこう言った。
「いえ。何でもありません。それよりあなたは自分の心配をした方がいいのではないですかね。」
「どういう意味ですか?」
「ブラウンベアーはともかく、古代ヴァンパイアはかなり手強い相手です。数え切れないほどたくさんの冒険者があそこで命を落としている。ケホ・・・。充分過ぎるほどの準備をして行かれることです。」
「分かりました。ご忠告、ありがとうございます!」
ふたたび、彼は驚いてこちらを見た。
心配してくれてありがとう。彼が元気になれるように、とびきりの笑顔で別れを言って街を後にした。
まずはトワイライト滝へ。ソルティーケーブのすぐ近くにあり、中の様子もとてもよく似ている。ファミリア、インプ、ゴブリン、デスピンサー、ソードスパイダー。とにかくたくさんの敵がいて、行く手を阻んできた。
お願い、そこをどいて。用があるのはブラウンベアーだけなの。
しかし、敵の攻撃は容赦ない。仕方なく連理と比翼に攻撃命令を出し、行く道々のモンスターを倒しながら進んでいった。ソルティケーブと違い、いくつか道が分かれており、間違った方向に進むと行き止まりになってしまう。地図をしっかりと確認しながらB6まで進んだ。
B6にはたくさんの小部屋が配されていた。入ってすぐ右に曲がった小部屋に・・・いた!とても大きな熊、ブラウンベアーだ。褐色の毛、太い手足の先には先が鋭く尖った大きな爪がついている。肩の筋肉が大きく盛り上がり、それが彼の力の強さを物語っていた。
小部屋に入る前に充分な準備をし、連理と比翼に攻撃命令を出した。大きな体、硬そうな表皮だが、彼らの剣はそれらを容赦なく切り裂いていった。いつものように一撃とはいかないが着実に熊は弱っていき、ついにその体を地響きとともに地面に横たえた。
大きく割れた肉・・・。生きていたときにはそこから血が勢いよく噴きでていたのだが、今は惰性のようにただ静かに流れて出でていた。
その傷口にコジがくれた瓶の口を当てる。血が冷めないように魔法がかけられているという小さなその瓶は熊の温かい血液でみるみるいっぱいになった。
⇒
つづき
本当はマスタークエを受けるときにはシティウォーカー、錬金術、地図クエ2はやっていませんでした。まあ、フィクションということでw( ^ω^ )
実際のマスタークエの様子は↓
シティウォーカー http://plaza.rakuten.co.jp/nijinoki/diary/200612240000/
錬金術 http://plaza.rakuten.co.jp/nijinoki/diary/200612250000/
地図クエ2、3 http://plaza.rakuten.co.jp/nijinoki/diary/200612260000/
地図クエ4、5 http://plaza.rakuten.co.jp/nijinoki/diary/200612270000/
特に錬金術・・・( ゚д゚)、ペッ 本当に苦労しましたよw。デスノートがあったらジンちゃんの名前書いてたと思うくらいです (〃^∇^)o_彡☆あははははっ
ネタがないから小説第七弾~翼の行方編そ… August 21, 2009
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