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August 17, 2003

『リスク』　井上尚登

(2)

テーマ：今日どんな本をよみましたか?(91837)

カテゴリ： ♪本の覚え書き♪

第一話『お金持ちになる方法』急死した父の通帳から退職金などを含む３千万円ものお金がそっくりなくなっていた。いろいろと探した結果インターネット銀行に預けられ、インターネットで取引するオンライン証券で父は株にまで手を出していた。あの堅物の郵便局長だった父がなぜ?!三島は父の心を探すべく株の世界へと踏み出してみるのだった…。

株を始めるときの不安や疑問が面白く読めるもので、株というものから政治や経済にもちょっこと触れたりもしていました。
株を始めるとその動向が気になって一日中アクセスしたりして落ち着きがなくなったりと、現代の電話やメールなどにも当てはめて読んでしまったりしていました。

第二話『住宅病』は、安くて通勤便利だった社宅があと一年でなくなることに！とりあえず住宅展示場めぐりをした家族はマイホーム獲得への戦いが始まった。

夢のマイホームという言葉とは裏腹に、いろいろなことにつまずき苦悩してゆくんです。その間にはやはり政治や経済の矛盾も投げかけられていたり、先に家を買った同僚や同級生達のさまざまな人生模様も絡んできます。
マイホーム。考えさせられる内容でした。

第三話『十五中年漂村記』アトムというスーパーロボットを夢見て入った会社でテツジンというロボットを作った三好。しかしそんな会社からリストラという仕打ちを受けることになり、本社への帰還率０％というリストラ村へと送り込まれる。前に来た連中は１週間しかもたなかったというその場所に集められた１５人の社員達の運命は!!

すごい世界でした～。かわいそうなくらい追い詰められる社員と、無能を絵に描いたような上層部の人間。そんな中から彼らを救った人間は…

そんな３篇からなる短編集でした。作者のあとがきに
「不安定な生活を送り続けて周りからよく心配されていますが、リスクなんか感じたことはないんです。…その存在を知らない、あるいは理解していないことのほうがずっと怖いわけで。リスクがあるからといって日常生活を放棄するわけには行きませんが、リスクがあることがわかっていれば、いざというときに対処できるようにも思います。」
とありました。短編という中でこんなにも複雑な内容を、あっさりと楽しく書いてしまうところがすごいです！

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