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なせばなる、かも。
Shaggy 3
電車に乗って海岸に程近い駅に降り立った。潮の香りが体を一斉に包み込む。この前海岸に来たときより、ほんの少しその香りが違って感じるのは、季節が移り始めているせいか。防波堤に座りこんで、長い間ぼんやりと海を眺めた。太陽がオレンジ色に変わって、潮風が心地よくTシャツの間をすり抜けていく。横を見ると、ミュウのゆで卵のような頬がオレンジ色に染まっていた。
こいつ、こんなにきれいだったのか。
俺はふと、ミュウを呼んでみたくなった。
「ミュウ」
ミュウは大きな瞳の中に夕日を宿らせて俺の方を見た。そしてそのまま吸い寄せられるように、俺たちはとても自然に長い長いキスをした。その後俺は、ミュウの肩を抱いたまま、満点の星がきらめくまで空を眺めていた。
ミュウにかけた俺の腕が、急にずり落ちた。
「ミュウ?」
見下ろすと、そこには一匹の猫がゴロゴロとのどを鳴らして眠っていた。俺は、なぜか驚く気になれなかった。前から知っていたような気がしたからだ。
「ミュウ、そろそろ帰るぞ」
俺がのどの辺りをさすりながら声をかけると、猫は不満げに「ニャー」となき、あっという間にもとのミュウの姿に戻った。
俺が何事もなかったようにさっさと歩いているので、ミュウもおとなしく黙ってついてきた。帰りの電車の中がすいていたので、俺はミュウに問いただした。
「ミュウ。あの姿を知っているのは誰だ」
「レイナとシュージ。ここではパパとママってことになってるから」
そう言うと、上目遣いにチラッと俺を見た。
「大丈夫だ。お前たちが地球に危害を与えるつもりがないのなら、俺はお前たちを受け入れるべきだと考えている」
それでも不安を隠しきれない様子で、ミュウは俺に擦り寄ってきた。俺はそれに答えるように、肩にまわした腕に力をこめてやった。
家の前まで帰ってくると、俺はつないでいた手を離した。不安そうな瞳で訴えかけるミュウだったが、このままべたべたしたムードを家に持ち込むことはできない。
「シュージたちが心配するだろ」
俺の言葉にしぶしぶ納得して、ミュウは深呼吸を一つすると、ダッと走り出した。
「ただいまー!」
いつもの元気で広間に飛び込んでいった。
夕食の間中、ミュウは遊園地の乗り物や甘党の店の味が変わったことなどを楽しげに話していた。シュージはうれしそうに頷きながら、ちらっと俺を見て「ご苦労さん」と合図を送ってきた。レイナも楽しそうに聞き入っていた。
「助かったわ、ミック。私たち、結構忙しいからこの子を子供らしいところに連れて行ってやれなかったの。気を使わせたわね」
レイナはそう言ったが、それは違っていた。ミュウに引きずり回されていた、が正解だ。
途中でジェフが帰ってきた。今日は早番だったので夕食に間に合ったようだ。
「やあ、お帰り」
シュージが声を掛けてもジェフは返事を返さなかった。みんながジェフを振り向いた時、ジェフは突然、銃を抜き出した。何かブツブツ言いながらにじりよってくる。そして、広間の明かりがジェフに届いたとき、俺たちはその目が血走っていることに気づいた。
「ジェフ、どうしたんだ? しっかりしろよ!」
俺がジェフに近づこうとすると、「来るな!殺されたいのか!」と叫んで銃口を俺に向けた。ミュウが何かをしようとするのをシュージが止めた。それに気づいて、ジェフはまた銃口をミュウに戻した。
「この化け物め! こいつらは騙せても俺は騙されないぞ!」
興奮のあまり腕が震えている。このままでは何かの弾みに撃ちかねない。俺はとっさにジェフの腕に飛びつき、その手に当身を食らわせて銃を弾き飛ばした。
「どうしたって言うんだ。しっかりしろよ!」
俺は、尚興奮しているジェフを羽交い絞めにして叫んだ。
「鎮静剤を打ちましょう」
シュージが急いで書斎に走った。そして銀の箱を持ってくると、さっさと薬を注射器に入れジェフの腕に差し込んだ。
見る見るうちにジェフは静かになった。
「ジェフ、少し自室で休んでください。落ち着いて話ができるようになったら降りてきてください。それから…」
シュージは言いながらさっき弾き飛ばした銃を拾うと、ジェフに手渡した。
「こんな物騒なものは、家の中では使わないでください。」
「立てるか?」
俺はジェフを抱えるようにして彼の部屋まで運んでやった。ベッドに寝転がりながら、ジェフが小声で言った。
「今日、ショットバーの客から異星人のうわさを聞いたんだ。もう奴らはこの街にも入り込んでいる。地球人と変わらない姿で、しかも文明は奴らのほうが進んでいるから大体のことは理解できるらしい。俺は前々からミュウの機敏すぎる動きが気になっていたんだ。だから…」
「だからエスプレッソに睡眠薬を入れたのか」
俺は冷たく言い放った。
「やはり気づかれていたか。すまん、奴を眠らせたら体形が変わるんじゃないかと思ったんだ。だが、それは見当違いだった。俺のいる店に来る客たちは、みんな異星人たちは巧妙な手口で地球を侵略することを狙っているとうわさしている。見た目のかわいらしさや、人当たりの良さだけで安心していると奴らの思う壺に陥れられると言うんだ」
俺は返事に困った。
「酔うくぁかランが、あんな小娘に俺たちをどうこうできるとは思えん。しばらく様子を見たほうがいいだろう。とにかく少し休めよ」
「ああ」
ジェフはそう言って眠りについた。
広間に下りると、ミュウがレイナに慰められていた。俺の姿を見るとミュウはたまらなくなったのかわっと俺のほうにしがみついてきた。レイナは困惑したように俺とミュウを見比べた。
「ミュウ?」
「シュージ、レイナ。今日俺は、ミュウの本当の姿を見たんだ」
俺は盗聴器を気にしながら小声で話した。シュージとレイナは一瞬意味が飲み込めないといった顔をして俺を見つめた。
「さあて。なんだかびっくりしましたね。今日はもう部屋で休みましょうか」
シュージはそう言いながらメモに走り書きをして俺に渡した。
―自分の部屋のテレビをつけてから、気配を消して例の部屋へ来てください-
俺は指示通りにテレビをつけると、シュージの部屋にやってきた。階段を上がると例の部屋にレイナとミュウも来ていた。
「ミック、ミュウの本当の姿を見たといいましたね。ミュウ、本当なのかい?」
ミュウはこっくりと頷いた。
「そういうことだったのね。だから、さっきミックに飛びついていったのね」
レイナは困ったようなほっとしたような優しい表情でミュウの頭をなでてやった。しかしシュージの表情は硬かった。
「それでこれからどうしようと?」
「俺は、べつにミュウが異星人でもかまわないと思っている。好意的に、地球に馴染もうとしてくれるなら、受け入れてやるべきじゃないのか。それに、ミュウが異星人なら、地球人との橋渡しをしてもらうこともできるだろう」
俺の言葉にシュージもほっと肩の力を抜いた。
「よかった。これで君も本当の私たちの仲間です」
「だけどミュウ。これだけは忘れないで。恋をして感情が不安定になると、外観コントローラーの制御が緩んでしまうの。尻尾を捕まれないように気をつけなさい」
心配そうなレイナだったが「はい」とミュウは素直に頷いていた。
「ミック、明日ジェフの勤めているショットバーに行って、どんな客層がいるのか調査してみてください」
「わかった」
俺たちは話が終わるとすぐ部屋を後にした。
俺は気分を変えたくて、一人広間でコーヒーを飲んでいた。すると、ゆっくりした足取りでジェフが降りてきた。
「気分はどうだ?」
「最悪だ」
俺はジェフの分のコーヒーを入れてやった。それを受け取りながらジェフは疲れた様子でつぶやいた。
「俺は、どうしてあんなに興奮していたんだろう」
「確実なものがなにもない時代だからな。中立でしっかり自分をもって調べているつもりでも、あんまり回りが偏った意見ばかりだと、気づかないうちに流されたりするもんさ。だけど、ジェフがそんなものに流されちまうなんて、ちょっとショックだったな。
アフリカまで行って、彼らの惨状を見てきたお前なのに…。
なあ、明日ジェフの店に遊びに行ってもいいか? たまには酒も飲みたいしな」
「ああ、好きにしろよ。だが、俺の二の舞にはなるなよ」
「わかった。じゃあ、明日な」
俺は、ジェフがいつもどおりに戻っているのを確認したので、安心して休むことにした。
翌朝は、ミュウも学校に出掛けていった。シュージとレイナを見送って、俺もトレーニングに本腰を入れることにした。トレーナーがいないと自分との戦いになる。冷静にメニューを作って、こなしていくことにした。しっかり汗をかいてシャワーを浴びると、ジェフがやっとおきだしてきた。
「やっとお目覚めかい?」
「ああ、からかうなよ。なんだか頭が痛いんだ。なにか作ってくれないか、簡単に食べられるもの。それ食べたらもう一度寝るよ」
ジェフは青い顔をして辛そうにそういった。確かスパゲッティがあったはずだ。俺は手早くパスタをゆで、ミートソースを温めるとジェフの前においてやった。
「悪いな」
つぶやくように言うと、ジェフはそろりそろりと頭をかばうようにして食べ、再び自室に戻っていった。
午後は読書に明け暮れた。そして日が傾きかけた頃、俺はジェフの勤めている店に出掛けることにした。出掛けにジェフの部屋をノックしてみたが、返事はなかった。夏風邪でも引いたのだろうか。夕食の頃にはレイナも戻ってくるだろうから、ジェフはそっとしておくことにしよう。
港区にあるジェフの勤める店はすぐに見つかった。雑居ビルの地下にあって、客足も上々。短パンにハーフトップ姿のウエイトレスが客の合間を縫って動き回っている。カウンターに空席を見つけてそっと座ってみた。
目の前にはガラスの棚があり、洋酒のボトルが所狭しと並んでいる。長い髪を後ろで縛った薄い口ひげのバーテンダーが、隙のない動きで注文をこなしていく。一見、柔和な表情だが、銀縁のめがねの奥の視線は鋭かった。
「ジントニックを」
バーテンダーは軽く頷くと、手早くシェイクし、滑らかな動きで俺の前にグラスを差し出した。
心臓まで届くような音楽を大音量で響かせ、それに負けじと客たちは騒ぐ。店の奥にはボディーガードらしき男たちがさりげなく佇んでいる。
スキンヘッドの刺青男、あごの尖ったガンマン崩れ、そして店の一番奥には、ごく普通の成りをしているのに妙に視線の鋭い男がいた。小鼻と左耳にシルバーのピアスをしている。大人しいスーツを着込んでいるだけに、そのピアスは独特の威圧感があった。
俺はさりげなく、しかし注意深くそのグラスを口に運んだ。薬は入っていないようだ。隣の3人組がなにやら興奮しはじめている。
「うそじゃねぇ。俺はこの目で見たんだって!」
「なぁ~に言ってるんだ。どうせ先に何か仕掛けをしていたんだよ。。それともそこに居た連中、みんなグルだったんじゃないか?」
「そうだよ。街中の人間が急にビデオみたいに止まってしまうなんて、絶対にありえないね」
「だから!だから俺もびっくりしたんだよ。あれは絶対に異星人の仕業だ」
へえ、結構巷のうわさになってるんだなぁ、異星人ってのは。俺が感心していると、店の奥でけんかが始まった。
「てめぇ!奴らの肩を持つつもりか? それともお前自身がエイリアンなんじゃねぇのかぁ?」
見ると、腕にコブラの刺青をしたいかつい男がひょろりとした青年につかみかかっていた。
「やめてください。僕はただ、異星人だから絶対地球人の敵だって言うのはおかしいって言っただけです。もし、好意的な生命体だったとしたら、僕ら地球人が野蛮な生命体ってことになりはしないかって思っていただけです」
「るせぇ! おい、こいつを奥の部屋へ連れて行け」
その掛け声と同時に回りにいた何人かがその青年を引っ張っていこうとしていた。
「やめろよ! ムキムキのマッチョマンが3人がかりでこんな子供みたいな奴相手にするなんて、みっともないぜ」
気がついたら、俺はその青年の前に出ていた。
「ほう。お前も奴らの仲間か」
「奴ら?誰のことだ」
コブラの男は獲物でも値踏みするように俺を上から下まで観察すると、急に態度を変えてきた。
「まあ、今日のところはいいだろう。とっとと失せな」
だが、こんな風に開放されたときのほうが、実は危ないのだ。青年がおびえながら立ち去ろうとした時、シューンっと風を切るような音がして、青年は崩れ落ちていった。俺は左の肩にやけどのような痛みを感じながら、振り返りざまに一発だけ撃った。弾はコブラの腹に命中していた。それを目の端に捕らえながら、すぐさま階段を駆け上がり、街に走りこんだ。
つけられないように何度か迂回を重ね、にじんだ血が目立たない暗い通りを選びながらようやく家にたどりついた。
広間では、レイナとミュウが夕食の支度に追われていた。
「おかえりなさーい。早かったのね」
ドアの音に気づいて、ミュウが飛びついてきた。
「ミュウ、悪いが手を貸してくれ」
俺はやっとの思いでミュウに声をかけた。ミュウは俺の姿を改めて見て、はっと息を呑んだ。
「とりあえず、どこかで横にならせてくれ。それから、シュージは帰っているか?」
「うん、今、ジェフの具合を見に行ってる」
「じゃあ、次は俺のところに来てくれるように頼んでくれないか」
ミュウは何度かうなずいて、俺を室内に運び込んだ。
気がつくと、俺は自分のベッドで眠っていた。そばにはミュウが心配そうな顔でこっちを見つめている。俺はどうなったんだろう。
「ミュウ」
俺がかすれた声で呼ぶと、ミュウは俺の手をしっかりと握って「大丈夫?痛くない?」っと矢継ぎ早に聞いてきた。俺はそっと左の肩に手を当ててみた。そして戸惑った。確かに感じていたあの焼けるような痛みは、すっかりなくなっていた。そして、傷口は擦り傷程度が残っているだけで、肩を動かしてもさほど違和感がなかったのだ。
「どうして…」
俺が言いかけると、レイナがミュウの後ろから顔を出した。
「ミュウのヒーリングよ。よく効くでしょう。起きられそうだったら後で広間に来て。食事を用意するから」
レイナはそう言って、部屋を出ようとした。
「シュージは?」
レイナを引き止めて、俺は尋ねた。
「今はジェフの様態が心配だからって、こもっちゃってるの。話は後で彼が降りてからにしましょう」
「ジェフ、そんなに悪いのか?」
「ええ。どうやら普通の病気ではないみたいなのよ。とにかく、シュージが出てきてくれないと、何もわからないわ。ミックはそれまでにゆっくり休んで体力を回復させておいてね」
レイナが部屋を出ると、待ちかねていたようにミュウが飛びついてきた。
「もう!心配したんだから!ミックのバカ!」
大きな目に涙が揺れていた。そうか、こいつはどこまで分かっているか知らんが、結構危険な立場に居るんだ。よく見ると、ミュウは少しつかれた顔になっていた。恐らく俺の傷を癒すために体力を消耗したのだろう。俺はミュウの頭を撫でてやりながら、その行く末を思った。
起き上がってみてもなんともなかったので、俺は広間で食事をすることにした。レイナが俺を見て、厨房に入っていった。食事を用意してくれるようだ。
「ママ、私も何か食べる」
ミュウが言うと、厨房から「太るわよ」と声が返ってきた。
「大丈夫だもん。お腹へっちゃったんだもん」
そういうと、ミュウは厨房に向かった。何かねだりに行ったらしい。入れ違いにシュージが降りてきた。
「やあ、ミック。もう起きても大丈夫ですか?」
「ああ、迷惑掛けてすまない」
「いいえ、あれは私が言い出したことです。こちらこそ、申し訳ない。あなたほどの人が怪我をするぐらいです。普通じゃなさそうですね」
シュージは顔を曇らせて言った。
「ところで、ジェフの様態はどうなんだ? 今朝、っと言っても昼前だったが、起きてきた時は頭が痛いって辛そうにしていたんだが」
俺は今朝のジェフのことを詳しく話した。
「う~ん、さっき診察してきましたが、どうもよく分からない」
シュージは上を指差して、続きは例の場所でと合図を送ってきた。
「食事が終わったら、今日はもう休んでください。ジェフの様態が悪くなるようなら交代で看病しないといけなくなるかもしれませんから」
シュージが話しているとミュウが夕食を運んできた。
「レイナ、熱は下がり始めていますがまだまだ安心できません。ジェフについていてやってください」
シュージは厨房に向かって言った。
「分かったわ。ミュウ、後のことお願いね」
レイナはそう言って2階に上がっていった。
食事を手早く終え、俺たちは例の場所に落ち合った。
「ミック。どう思います、この検査結果?」
シュージが差し出したのは血液検査の表だった。俺はあまり医学に葉詳しくないが、明らかに薬品を含んでいることが判った。しかもこれは昔麻薬として忌み嫌われていたもの。今は精神病患者にきちんと成分を調整して使われているが、それにしても、こんなに大量に体内に入れたれたら死亡する危険性だってあったはずだ。
「シュージ、ジェフの勤めているショットバーは相当危険な連中が集まっている。俺が行ったときも、若い男が回りも気にせずに異星人たちに好意的な発言をしてボコボコにされていた。あまりにもひどかったので止めに入ってこのざまさ。あいつらは人の命なんて何とも思ってない」
「そうですか。私も少し調べて気ました。あそこにいる連中のほとんどが軍隊崩れです。怪我で退隊させられた者、性格に問題があった者、好戦的で秩序が守れない者、そんな連中の吹き溜まりだったんです。だから、ジェフの顔見知りもそこを紹介したようです」
「あんな店じゃ、ジェフの精神状態は軍の現役時代よりはるかに厳しかっただろうよ」
俺はジェフが哀れになってきた。
「かわいそうですが、しばらくジェフをどこかに閉じ込めておく必要がありますね。ジェフの様子から考えて、我々もこの場所を離れたほうが安全かもしれません。例の会議で事を起こしましょう。君たちには別の部屋を探しておきます。私とレイナも別宅に移ります。ジェフは知り合いに頼んで保護してもらいましょう。ミック、事を起こすとなると何がしかの犠牲を生じることもあるでしょう。それでも私たちの考えに同意してくれますか?」
シュージは改まった表情でたずねた。
「ああ。このままでは遅かれ早かれ地球人は滅亡することになるだろう。それなら、ちょっとでもあがいてみればいいじゃないか」
シュージは、しばらく俺の表情を伺っていたが、「ありがとう」っと言って固い握手をしてきた。
「誰にどんなことが起こるかわかりません。ミュウのことは君に任せます。後悔しない時間をすごしてください」
シュージの目に、一瞬悲壮な色が見えたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻っていた。
シュージはすぐにあちらこちらに連絡ととり、うまい具合に彼らの別宅のすぐ隣にあるマンションを用意してくれた。
「すぐに荷物を集めてください」
俺たちはすぐに行動に移すことにした。厨房で洗い物をしていたミュウに引っ越すことを告げ、大急ぎで準備を進めた。シュージに車を借り、早々にマンションに移る。すぐ横にはシュージの話していたログハウスもあった。なるほど、これならすぐに落ち合える。
10坪ばかりの小さなワンルームだが、今の俺たちには充分だった。
すぐに必要な荷物だけを解いて、電器さえつけていない何もない部屋の壁にもたれて、ミュウと2人並んで座った。窓越しに、半月見える。冴えた鋭い輝きが俺たちの足元にも届いていた。
「ミュウ。君の本当の両親は今どうしているんだ?」
明後日には会議が始まる。最悪の場合が起こったら、こんな風にミュウと語り合うこともできなくなるだろう。俺はミュウに関するほとんどのことを知らなかった。心置きなく戦うために、どうしても彼女のことを知っておきたいと思った。ミュウも今の状況を把握しているのだろう。いつになく落ち着いた様子で話し始めた。
「パパは、有名な医学博士だったの。オゾン層の亀裂が広がって、皮膚がんに苦しむ人が急増してきた頃、パパは人口皮膚に紫外線を遮るシールドを埋め込む技術を開発したの。それを移植すれば、ラグーン人の多くの人々が助かるはずだった。
それなのに、同じような研究をしていた他国の開発チームの人たちが、パパの研究を妨害してきたの。パパの実験のモニターになったら殺すってビラを撒いたりもしたわ。おかげで実験用のモニターになる人が見つからなくてパパはとても困っていたの。それで、私がそのモニターになることにしたの。
ママは私を出産するときに亡くなっていて、その後はずっとパパが私を育ててくれたの。だから、どうしてもパパに恩返しがしたかったしね。それに、パパはキチンとお仕事する人だって、研究所の人たちはいつも私に言ってたわ。もちろん私もパパを信じてたしね。
でも、例の他国の研究チームの人たちが、その実験さえも聞きつけて邪魔に入ったの。パパが用意していた人口皮膚を猫のものとすり替えておいたのよ。何も知らないパパは、私にその猫の皮膚を移植したわ。実験が終わってみると、私は猫の遺伝子に影響を受けてあんな姿になっていたの。パパは世界中から非難を浴びたわ。たった一人の家族も失ってしまってついには自殺してしまったの。
それからしばらくして、パパと一緒に研究していた人たちが、他国のチームの悪巧みに気づいてくれてパパの汚名は晴らされたわ。そしてその犠牲になった私に、なんとか元の姿を返してくれようとして、いろんな実験が行われたの。
研究が進んで、外観コントローラーが出来上がった頃、オゾン層は大崩壊を起こし、人口皮膚の移植が間に合わなかった多くの人々は命を落としてしまったわ
ミュウはその頃のことを思い出したのか、肩を震わせていた。
「ミュウ。怖い目にあったんだな」
俺はそのか細い肩を抱いてやるしかできなかった。
「その時に身についたの。ヒーリングや他のいろいろな術」
「そうか。俺はてっきりラグーンの人々がみんな猫のような体形をしていて、魔法使いみたいにいろんな力を持っているんだと思っていた」
ミュウはくすっと笑って、またまじめな顔になった。
「地球には、ラグーン星に近い文化があって、生命体の形状や仕組みもほとんど同じだって、パパの研究チームの人たちが話していたわ。パパの研究所の装置は全部だめになったけど、ここならなんとかできるんじゃないかって。装置さえ揃えば、私を元の姿に戻すことも可能だろうって。それで、私をシュージに預けたの。シュージは地球で一番にラグーン星のSOSに気づいてくれた人なのよ」
そういう事だったのか。俺は、シュージの書斎にある機器を思い出して納得した。
「それで、その装置は作れそうなのか?」
「う~ん、それは私には分からないわ。シュージパパが持っている別の研究施設でシュージパパと研究チームの人たちが開発してくれているみたいだけど…。いずれは地球人にも必要になるだろうからって」
「そうか。早くできるといいな」
その夜、俺たちは駆け落ちした若い恋人たちのように、寄り添って眠った。
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