1)何とか到着

そんなに飲んだつもりはなかったんだけど、目覚めは良くなかった。三時間程度の睡眠では仕方がないか。
京成津田沼に着くとすぐに特急に乗れた。これはついてる!・・・こんな単純なことで 一日を判断するのは甘かった。

JALということで 当然のように第二ターミナルに向かう。きっちり出発二時間前。JALJALJALと並んでる出発カウンターでローマ行きを探すが見つからない。インフォメーションのお姉さんに見せると一瞬 怪訝な顔を見せた。イヤな予感はすぐに当たった。
「お客様、こちらはアリタリア航空とのコードシェア便でして第一ターミナルになります」
泣きそうになりながらターミナル間を結ぶシャトルバス乗り場に 急いだが 目の前で出発してしまう。仕方なくハヤる気持ちを押さえて缶コーヒーを買った。

その後、無事にチェックインを済ませ なんとか飛行機に乗れることになった。
ミドリの直線的なラインが鮮やかなアリタリアのボーイングは ほぼ満席。
窓際の僕の席を囲むように若い団体が座っている。
隣りの男の子は テーブルを出したりしまったり コントローラーをガチャガチャいじったり落ち着かない。
「卒業旅行ですか?」「えぇ、外国初めてなんです」と緊張のまじった笑顔で答えた。
そのうち彼は ごそごそと何かを探してつぶやいた。
「イヤホンがない!」 その隣りの男の子も 「オレもない!」 通路を挟んでその隣りは 「スチュワーデス呼ぶか?」 と段々問題が深刻になっていく。
僕はおせっかいかなぁと思いつつも「たぶん 離陸後にもらえるよ」と言うと 「もらえるってよ!」「もらえるってよ!」「もらえるってよ!」「もらえるってよ!」・・・ どんどん隣りに伝わって行く。おいおい、伝言ゲームかよ!
僕はすぐ寝るつもりでブランケットをかけベルトを締めた。
隣りの男の子は ベルトの上からブランケットをかけている。
これまたおせっかいかなと思ったけど「ベルトを上にしないと 寝てる時 起こされますよ」と教えると 「起こされるってよ!」「起こされるってよ!」「起こされるってよ!」「起こされるってよ!」・・・ 予想通りの反応が笑えた。

ほぼ定刻で フィウチミーノ空港に到着し、入国もスムースに済ませ 電車に乗りテルミニ駅に着いた。



地図を見るとスペイン広場まではそう遠くない。歩いて向かうことにする。
ローマは二度目。前回はツアーだったので トレビの泉やコロッセオ、バチカンといった主な観光地はほとんど行ったのだが なぜかそこだけは行かなかったのだ。観光客がうじゃうじゃいる道を通って行くと目指すスペイン階段はあった。
正直な感想は「ふ~ん」だった。『ローマの休日』は好きな映画の一つだが こんな感想になるなんて思わなかった。



その後、地下鉄に乗りテルミニ駅に戻った。することもないのでフィレンェに行くことにした。しかし切符売り場のおっさん、イングリッシュOK?と聞くとNoと答える。やむを得ずイタリア語で「ボレィ ビリエット for フィレンツェ!」(”~へ”と言うのがわからなかったので思わず英語)と言うと、10分後のチケットを見せる。もうそれしかないと言う。仕方なしにそれを買い ホームに急いだ。
しかしホームは1から28くらいまであり どの電車かわからない。いくつか聞いてみても「この電車じゃないね」と首をふるだけ。そうこうしてるうちに出発時刻は過ぎた。
インフォメーションに行き、切符を見せると 一時間後の電車を勧められた。今度は迷わないように 何番から出るの?と聞くと それは我々ではわからないと言う。「ここでわからないならどこで聞くんだ!」と怒鳴りたかったけどやめた。その時刻の電車を掲示板で探せと教えてくれた。
フィレンツェに着く電車なら多少遅くなっても 余分に特急料金取られても いいや、そんな気持ちで乗った電車が合っていたみたい。二時間後には フィレンツェに着いた。

22時すぎの駅は薄暗くあまり良い雰囲気ではなかった。
バスで行く予定だったけどタクシーに変更した。しかし タクシーの運転手、歩いてるかわいいおんなのこを見つけるたびに 品定めをするようにじっくりなめるように見る。イタリア人らしい行動で笑えるが前を見て運転して欲しいよ。

akimoの働くトラットリア Adaはすぐに見つかった。チャオ!とあいさつして入ると、店の女の子がTAKA(akimo)の友達か?みたいなことをイタリア語で言った。「シー!シー!(Yes)」と言うととても歓迎してくれた。従業員が代わる代わるテーブルにきてくれて これ食べるか?ワイン飲むか?と話しかけてくれる。
「こいつらホント働かないでしょ?いっつもこんな調子だもん」
一年ぶりに会うAkimoはずいぶんたくましくなっていた。僕はイタリアに来てから初めて笑った気がした。




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