[BOWLING]~その6~



今日で一週間が終わった。予定より遅れているが、予想よりいい感じだ。ジュリアスとビリーは積極的に動いてくれる。なにより真剣なのがいい。今年の一月に彼らが日本に来た時、3人で仕事をがんばった、そして夜は一緒に飲み明かした。意志の疎通は大変だが、言葉が分かっても意志の疎通が出来ないヤツらよりもずっと居心地がいい。
しかし、みんながみんな、というわけではない。特に品質管理のコリン(インド人)。初めて会った時から『俺たちはバイヤーだな!』(何語か知らないけど兄弟という意味らしい)なんて調子のいい事を言う。そして次の言葉が『お前のペンをくれ』だもん、うさんくさいたらありゃしない。ある日、仕事中にすれ違うと『バイヤー!お前に見せたいものがあるから俺にデスクに来てくれ』と言うのでいくと美しいインド人の写真をもったいぶって見せる。『この子はミスユニバース、次の子はミスワールド、どうだ?インド人は美人だろ?次の子は・・・』『・・・わかったよ、それでどれがコリンの奥さんなんだ?』『・・・。』
今日は朝から『もしお前がオンナ欲しい時は俺に言ってくれ。飛び切りかわいい子を安く紹介するぜ』などと言うから『サンキュー、コリン。お前はホントにナイスなヤツだ!日本ではクールな男の事を【スケベオヤジ】と呼ぶんだぜ!』と教えた。『そうか、俺は【スケベオヤジ】なんだな!よし、今日から俺の事を【スケベオヤジ】と呼んでくれ!』とかなり御満悦だった。

仕事を終え、ACに戻ると今夜はデビットさんがボーリングに連れていってくれる話になっていた。僕だけ日本人のいないSDという名の工場にいて、他のメンバーはACで働いている。あまりボーリングに行く気はしなかったが、一緒に行かないと夕飯が食べられない。いったんホテルに戻った後、デビットさんと合流し、中華料理を食べに行く事になった。中華ならメニューも読めるだろうと思っていたが、難しい漢字ばかりでわからない。理解できるのはせいぜい麻婆豆腐くらい。中華料理は世界中にあり、食に困ったら中華を食べれば何とかなる、と思っていただけにメニューが読めないとは誤算だ。これからは中華料理の漢字ぐらいは覚えておかなくては。とりあえず、「これは肉炒めじゃない?」「麺ってラーメンかなあ」などといいつつ注文した。
ボーリング場は金曜の夜という事もあって、結構な人だ。僕はボーリングをパスしてレーンの横にあるバーで生ビールを飲む事にした。一杯R10、\200しないのがうれしい。
しかし、僕はなんだか毎日の団体行動に疲れてきていた。仕事中ならともかくプライベートまで敬語を使って話たり、たいして知らない人達と「仲良しグル-プ」を演じつづけるのに苦痛を感じはじめていた。たぶん、協調性が欠けているんだろうなあ・・・そんな事を考えていた。二杯目を注文した時、自分が英語しか通じない職場や日本食が食べられない状況にはあまり不満が無い事に気がついた。ほとんど英会話なんて出来ないのに、『南アフリカにいること』よりも『日本人と団体行動』する事のほうがずっと苦痛だなんて・・・。
なんだかおかしくて一人で笑った。

BARでひとり・・・


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