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2006.09.01
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UFO大通り

~講談社、2006年~

 御手洗潔さんシリーズ新作です。二作の中編が収録されています。

「UFO大通り」
 1981年5月9日。いつものように散歩をしていた石岡と御手洗の後ろに、女の子がついてきていた。御手洗が声をかけると、二人に話があるという。
 少女は、近所のおばあさんの話をした。そのおばあさんは、早朝に、よくUFOを見るという話をするのだという。おととい、5月7日の朝には、宇宙人が戦争をしているのを見たとさえ言うのだ。少女たちのすすめもあり、おばあさんはテレビで宇宙人の戦争を目撃したことを話した。
 このためもあり―おばあさんがボケているということで―おばあさんの子供は、おばあさんを老人ホームにいれようとしていた。しかしおばあさんはそれを嫌がっており、彼女によくしてもらっている少女もそれは嫌だという。そこで少女は、御手洗に、UFOや宇宙人を見たという話がうそではないことを証明してほしいというのだ。彼女はこの話をするために、鎌倉からやって来ていた。
 話に興味をもった御手洗が直接おばあさんを訪ねると、彼女が宇宙人の戦争を目撃という日の二日前に、彼女の隣家の男性が死亡していたということを聞く。現場は、異様な光景だった。男性は、ヘルメットをかぶり、マフラーをし、手袋をし、シーツにくるまっていた。現場である寝室の窓はガムテープで目張りされており、また部屋の天井から無数のガムテープがぶらさがっていたのだった。

 石岡さんが、御手洗さんがまだ日本にいた頃の事件を回想するというスタイルです。また自分なりに事件年表を整理したいなどと思っているのですが…。
 冒頭に、この事件を担当した刑事の手記が出てきます。いかにも傲慢さをにじませる人間で、案の定御手洗さんとぶつかります。事件も終わり、御手洗さんが真相を十分に言わないまま帰ろうとするあたりの、威張りや刑事さんの姿は小気味よかったです。「江戸っ子」発言も面白かったです。あぁ、この刑事さん印象に残っています…。

 本作の中で、御手洗さんが言う好きな言葉があるので、文字色を反転させて引用します。
」(39頁)

「傘を折る女」
 1993年。深夜ラジオを聞いていた石岡は、そこで興味深い話を聞く。リスナーから身近に起こった不思議な出来事を聞き、その謎を解こうという企画だった。
 激しい雨の夜、男性(リスナー)がマンションから外を見ていた。すると、そこを通りがかった女性が、交差点あたりではっと思い返したように少し道を戻り、その傘を車道に置いた。そして、車が傘をひくまで待ち、傘がひかれると、またそれを持って横断歩道を渡り、来た方向に歩いていったというのだ。
 石岡は、この話を御手洗にも聞かせた。

 いわゆる、「日常の謎」テイストで始まりながら、捜査する側から見ればきわめて不可解な殺人事件が描かれています。いままでの御手洗シリーズではなかったような独特の順番で描かれていて、またその順番で描かれるからこそ、読み進めていると、えっ?と疑問になることが出てきて、ミステリとしてとても面白かったです。
 ただ、話自体は重いです。「誰が悪いのか」なんて考えすぎていくと堂々巡りになってしまうのですが、まさにそういう話だと感じました。考え込むとどんどんへこんでしまいそうなので、なるべく考えずに読みました。
 こちらの話に出てくる刑事さんは、すごく感じがよい方でした(笑)

ーーー
 全体を通して。白装束の宗教集団(「UFO大通り」)など、現実の事件を思い出せる話題が出てきてきます。いま例に挙げた方は物語の大きな主題となってはいませんが、「傘を折る女」に出てくるエピソードは、かなり重大な要素で、そして余計に物語への感情を重たいものにさせているように感じました。

 やっぱり島田荘司さんの作品は面白い! 先の「本購入」の記事でも書いた、今後の新刊が楽しみです。





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Last updated  2006.09.01 21:00:38
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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