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2006.09.18
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島田荘司『天国からの銃弾』
~光文社文庫、1995年~

 ノンシリーズの三編の短編(中編?)が収録されています。久々に再読しました。
 では、いつものように感想を。

「ドアX」
 私がいつものように舗道を行っていると、なじみの易者さんに声をかけられた。『X』と書かれているドアに、夢をかなえてくれる人がいる、というのである。これで本格的に女優に、いや、大スターになれる。ギャグニーさんに送った脚本も採用されたのだ―。嬉しくなった私はドアを探すが、あちこちにDAITOと書かれた建物が目につくばかり。バスに乗れば、乗客たちが私の体を触ってくる。なんとかなじみの珈琲屋にきて、マスターの森田と話をするが、どうも森田の様子がおかしいようだった。

 なんというか…。痛ましい話でした。ただ、最後に救いはありますが。

「首都高速の亡霊」
 雨の夜。桃代はマンション5階の自室のベランダの椅子に腰掛け、足を伸ばした。妙な感覚の後、下から悲鳴が聞こえた。手すりのそばに置いていた植木鉢を、足で落としてしまったのだ。この事態に気付いている人は誰もいない。桃代は一階におり、事態の打開をはかる。


 こういう話は好きです。本作の寺田さんみたいな人間は大嫌いですが(腐った天下り官僚さんです)、しかしまぁ誰もが気付きながら黙認して過ごしているのも事実でしょう。いろいろ嫌な事件を思い浮かべますが、なかなかよくなりませんね。

「天国からの銃弾」
 退職した私は、富士山の望める元消防署に新居を構え、見張り塔はそのまま残し、ひそかに「空中庵」と称して夕方にはそこで過ごした。富士山の夕焼けがきれいに見えるのである。ところで、「空中庵」から富士山の方角を見ると、近くにソープランド街がある。六つの店が、その屋上に自由の女神を立てており、富士山の方を見ると、六体の自由の女神が全てこちらを向いているのだった。夕焼けを写真に撮るのを日課にしていた私だが、息子はその写真のノートを見てあることに気付いた。ときどき、自由の女神の目が赤く光っているというのである。興味があるとノートを借りて調べごとをしていたらしい息子が、私にノートを返して出かけたまま帰ってこなかった。やがて警察が私の家を訪れ、息子の死を告げた。

 この作品集の中では、一番面白かったです。自由の女神の目がなぜ光るのか。そして、それと息子の死の関係は。 75歳の「私」は仕事をしている頃はあまり息子のことをかまっていなかったと考え、自分の力で息子がなぜ死んだのか調べようとします。最後の「私」の行動には問題もあるかもしれませんが、一つの物語として考えると、かっこいいと思いました。





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Last updated  2006.09.18 16:08:51
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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