non*non's diary

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暴れん坊さんより(理学療法士、黒崎一護)


いつもありがとうございます!!


理学療法士、黒崎一護


・・・巨大基幹病院、BLEACH。

この病院の最先端の医療技術は常に注目されている。
その注目は殆どが、手術に関することだ。

もちろん、手術の技術は重要だ。
しかし、多くの患者にとって、己との戦いは手術の時だけで終わるものではない。


真の戦いとは・・手術後に始まるのだ。

重大な事故、もしくは病気のにより手術が成功したとしても・・元の生活に戻れないのでは意味が無い。
完全に元に戻れなくとも・・少しでも元の状態に近づけるよう・・最低限の日常生活が送れるようになることが最大の目標なのだから。


患者は身体機能を失う前と失ってしまった現在のギャップに苦悩し、時には希望すら失いそうになる。
それを理学的見地からサポートする者こそが、理学療法士なのだ。


・・とある病室から悲鳴が聞こえる。

「痛い!!痛い~~!!」
悲鳴の主は、80代の女性患者だ。
階段から転倒し、脊髄に損傷を追った。
手術は成功したものの、この年代で障害を追うことは、入院した後に歩行できなくなる可能性が極めて高い。
一日も早い、歩行へのリハビリが必要な時期であった。

その患者の足を持ち、腰を回転させるように動かしているのが・・この病院の理学療法士、黒崎一護だ。

階段から落ちてしまったショックから覚めない内に、手術を受け、まだ痛みが残っているはずだ。
しかし、高齢者において、1日歩行しないことは、寝たきりへの道を10日歩むことに近い。
医師の許可の下、今日から歩行へのリハビリが始まったのである。

涙を浮かべ、苦痛を訴える患者。
一護の胸は当然痛む。
しかしながら、これをしなければ患者は歩行することは出来ない。
リハビリの施術は常に、一護の内面との葛藤でもあった。

一護は特に高齢者の患者からの人気が非常に高い。
裏表のない言動と、くじけそうになる心を引き上げる天性の才能があるからだ。
まるで自分の孫のように皆接してくれるものだ。
しかし、その患者たちに、治療の為に苦痛を与える施術をしなければならないのも事実なのだ。

施術が終わり、放心状態になってしまった患者に一護は言う。
「よく頑張ったな、ばあちゃん。
わりイけど・・明日もコレやんないといけねえんだ。
それでよ・・始める前に俺とちょっと散歩しようぜ?
いい加減、病室にも飽きただろ?」

・・・次の日。
散歩と言っても、患者が歩けるわけでもないし、外に出る許可も下りてはいない。
病院内の一番大きな窓から、病院の庭が見える所に、車椅子で押していく。
しかし、病室の白い風景しかこのところ見ていなかった患者の眼が輝きだすのが分かった。

「・・なあ・・ばあちゃん。」
「何だね、看護師さん」
患者は理学療法士と看護師の違いが未だに分かっていないようだ。
それに苦笑しながら、話を続ける。
「ばあちゃんは・・散歩は好きか?」
「ああ、好きだとも。よく畑や田んぼのあぜ道を散歩したもんさ。今の時期はそうさね、大根が大きくなる頃かねえ。」
「大根か。そりゃいいな。」
「これからの大根は美味しいからねえ。」
「なあ、ばあちゃん、また外を自分で歩けるようになるには、昨日やったみてえなことを暫く続けなきゃなんねえんだ。
いきなりは・・歩けねえんだよ。
俺も頑張るから、いっしょに頑張ってくれねえかな。」

話す一護の声はあくまで穏やかだ。
だからこそ、一護の真剣さが分かる。
外を見ていた患者が言う。

「看護師さんに、そう言われちゃったら・・あたしも頑張るしかないねえ。」
そして、一護を見上げてにっこり笑った。
「そっか。・・サンキュ。」
「何言ってんだい。礼を言わなきゃいけないのは、あたしの方だろ?」

そして、また機能回復の施術が始まる。
患者は人が変わった様に、痛みに耐えた。

そして、1週間後。
「・・驚いた。・・・立てるようになるもんだねえ。」
ふらつきながらも、ベットから立てるようになった患者がいた。


そんな秋の晴れた昼の時間。
病院内の公園でベンチに座り、病院内のコンビニで買ったカツ丼をかき込む一護の姿があった。
食うのは早いほうだ。5分もあれば、カツ丼の容器は空になる。
「ああ~~うまかった~~!」
ペットボトルのお茶を飲み干すと、イチョウの木が黄色く色づいてきているのが分かった。

「・・もう、11月だもんな・・。」

一人つぶやく。
イチョウや紅葉が色づくこの頃が、一護は好きだった。
黄色や赤に色づく木々の間にいると、自分のオレンジの頭が目立たなくなるような気がするからだ。
一護は不思議だった。
なぜ葉は散る前に、こんなにも暖かい色になって散っていくのだろう、と。
葉が色づいていくのを楽しみにしつつも、惜しくも思う。

・・・色づき終えた後は・・・散るだけなのだ。

人間は死期が近付くと分かると、本性が出ると言うが・・木々もそうなのだろうか。


「・・縁起でもねえな・・俺たちは散らさないように頑張ってんだからよ。」
リハビリが上手くいく患者もいれば、いかない患者もいる。
それだけに、リハビリを導く一護のモチベーションは重要だ。
午後からも一護の指導を待つ患者が控えている。

立ち上がり病院の建物へ歩き出そうとしたときだ。。

不意に後ろから声が聞こえた。

『・・・頑張ってね・・。』

とっさに振り返るも誰もいない。
ただイチョウの木があるだけだ。
驚いたような表情を浮かべていた一護だが・・次には笑ってこう言った。

「おう。・・オマエもな。」

そして、また病院内へと戻って行く。


秋の日差しが優しく照る。




色づきかけたイチョウの葉が静かに揺れていた。




そして12月も終わりの頃。


病院付けで一護に宅配便が届く。
ダンボールを開けてみると・・・見事な冬大根がぎっしり・・そして一通の手紙が添えられていた。




なんちゃって。




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