能登の手染め日記

能登の手染め日記

Feb 12, 2007
XML
カテゴリ: 染色

アノニマスアート「誰のものでもない皆んなのもの」

京都で染の仕事を10年間学び田舎に帰って20数年の歳月が過ぎた。身の周りにある植物を染めてデータを取り始めて15年以上になり、地区のおばあちゃん達と1998年4月に草木染教室を始めて今年で9年になる。
「お婆ちゃんたちの草木染」
「草木染教室受講生作品集1998~」

ある時
「お金出すさけ、教えてくだっしま」
というお婆ちゃん達の言葉で、この教室は始まった。

自分たちで「お金を出してでも、やりたい」という言葉が気に入って、私も「無料でいいし、1ヶ月に1回か2回やるぞいね」と言ってタマネギ染めの簡単な教室を始めた。

「センセ、もっと違ご色も染めたいがね~」
と言うので、簡単に染まるインド藍で割り箸の板締め絞りを教えた。何気なく「食べ物に使とる木やったら木のアク出んぞいね」と言ったらアイスクリームの木のスプーンやキャンディの板や蒲鉾の板で締めてきた。少しナイフで削ったらおもしろい形の折り込み絞りができた。

「センセ、こんなが、どうやいね」と鹿子の絞りを縫ってきた。
「ほんなら、図案かくさけ、これ縫うてらっしま」と言ったら、花びらの絞りをたくさん縫って持ってきた。

私はローケツと友禅が専門で、実のところ絞りはあまり知らなかった。手持ちの本をひっくり返したが分からないことが一杯で、図書館へ行ったり新たに専門書を買い求めた。おかげで知らない技法や染めの理論がよく分かってきた。

草木染ハンカチ



「ハンカチばっかり飽きたさかい、ノレンでも作りたいぞね」と言うので図案を描いたら、
「やり方、教えて下いまね」と、電話がかかってきた。私も面白くなって、いつの間にか絞りに熱中し始めた。

一人が大きなノレンを染めたら他の5人にも図案が必要になった。できあがったら嬉しくて、また電話がかかってきたので、また別の図案を描いた。作品が増えたので、その冬に町の料理旅館のギャラリーで展覧会をした。お客さんに呼ばれて20cmの新雪の山を越え、車で30分かけて説明に出かけた。

「梅の木剪定したが染まらんがぁ?」本で調べて染めてみた。
「ビワ染まらんがけ?ピラカンサの実はダメかいね?」試し染めをして確認した。
「まだ染まるが無いけ?」おかげで、いつの間にか試し染めをした草木は200種類を優に越えた。

作品が増えたので皆んなで金沢のギャラりーで草木染展を開いた。噂を聞いて他の市町村から見学に来るようになり、テレビやラジオの取材も受けた。やがて県の「緑化フェアー」や「加賀博」などから打診が来て出展するようになった。

いつの間にかお婆ちゃん達は他の人に教えられるまでになった。
旅行に行くと、必ず草木染を見てくるようになった。帰って来ると「雑な売り物しかなかったぞね」と言うようになった(笑)


おばあちゃん達の草木染はコツコツと時間をかけて絞り上げ、1色2時間かけて染め上げる事を何度も繰り返す。気の遠くなるような作業の積み重ねの作品の数々だ。

そんな草木染教室のおばあちゃん達が
「一緒な植物の液を使うても家ごとに違うモンやねぇ」
と言う。教室で一緒に染めると同じ色になるが、家の水にも色々あって、水に含まれる鉄分などの含有量が違うので同じ植物によっても染の発色が変わってくる。

「あんたの家の水てが、よぉ~染まるぎねぇ~」
「なんと、不思議なもんやね~」と言う(^^

泥大島はテーチギ(テカチ木、シャリンバイ、ハマモッコク)の抽出液で染めた糸を泥の中に通すことによって、泥に含まれる鉄分で発色させる。
上村六郎氏は「日本染色辞典:東京堂出版」の「重炭酸鉄」の項目に、泥染めは八丈島の黒染め、大島紬、久米島紬の黒染めに天然産の重炭酸鉄を利用している。テーチギに含まれるタンニン剤を薬として煎じるのに鉄の容器を使ったことから来ている。泥水、井戸水を発見することが必要である(要約)と記している。

土地と人々の経験と長い時間の中で、より発色の良い水を探し、工夫を重ねて染め続けてきたのが泥染めの歴史。家によって違うのも産地によって少し色合いが違うのも色素と反応する金属イオンの成分の違いだから、その土地の特色が出てその土地ならではの染め色になる。

泥染めは20回以上も染と泥の中に浸される。草木染の手間を惜しんで良い色は染まらないし、染めた色は長持ちしない。

教室のお婆ちゃんたちは気が長く、色を重ねて10工程も20工程も手間をかけたて作品を染め、惜しげもなく孫や知り合いにプレゼントしている。この欲の無さ、おばあちゃん達の草木染は、それで良いのかもしれないと思う。

2006作品-01

2006作品-02



そして、かっこよく「アノニマスアート」と言う。

雨は誰にでも降り注ぐし、川や池、湧き水は誰でもが使ってよいだろうし野山の雑草や雑木は誰が使っても文句は出ない。図案も皆んなで使い、わいわい楽しくやっている。自然が誰のものでもないように、自然から得られたものは誰のものでもない皆んなの作品だ。

でも、やっぱり水の違いと取り組み方の違いで染め上りが違うのが現実。皆んな少しずつ違うのがアートらしくて良いようだ(^^

2007/02/13 草木染のハンカチ写真を追加






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Feb 12, 2007 10:36:36 PM
コメント(7) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: