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Nonsense Story
3
夏祭りの夜に 3
私はいつの間にか泣いていた。膝に力が入らなくなり、少年にすがるようにくずおれる。土の上に座り込んでしまった私の前に、少年がしゃがみこむ気配がした。
「立派な息子さんだったんですね」
静かな声で、彼が言った。少し正人に似ているあの声で。
顔を上げると、自分の膝を抱えるように組んでいる少年の腕に、点々と抉れたような傷があった。それはちょうど各腕に五ヶ所ずつあり、私がさっき爪を食い込ませていたせいだと気付いた。
「たしかに、ぼくよりも正人さんが生きていた方が世の中の為かもしれません」
花火が再開され、時折明るくなる空を、少年は見上げた。田舎の空に咲く華は、ぽつん、ぽつん、と間隔を開けて寂しく散っていく。
彼は花火の音に言葉が消されないよう、間を置きながら続けた。私は声が発せられるたびに動く喉仏を、ただ見つめていた。
「でも、ぼくにも両親がいます。正人さんのように立派な兄弟でもいれば別かもしれませんが、生憎ぼくは一人っ子で、どんなに出来が悪くても、うちの親にはぼくしかいない。今までもこれからも親不孝ばかりするかもしれないけど、ぼくは自ら死を選ぶことはできません。両親に今のあなたのような思いだけはさせるわけにいかないから。だから、仮にできたとしても、ぼくが今死にたいと思ったとしても、正人さんと代わることはできません」
淡々とした物言いだったが、私は冷や水をかけられたような気がした。
そうだ。この子にだって親はいるのだ。犯罪を犯す子やだらしなく夜遊びをしている子にだって、心配している母親がいるかもしれない。そして私と同じように、子供に精一杯の愛情を注いでいるかもしれないのだ。誰だって、自分の子供に犯罪者や世捨て人になどなって欲しくはないのだから。
少なくとも、これだけのことを高校生の男の子に言わせられる親が、彼を大事にしていないはずがない。
私のような想いをする親を増やしてはいけないと思いながら、私は何てことを口にしていたのだろう。
「ごめんなさい。あなたのことを誤解していたわ。あなたは残された者の気持ちが分かるのね」
この世の全てに無関心な瞳をしているようでも、この子は犯罪を犯すような子ではない。
私はこの少年の親が、少しだけ羨ましく、それでいて気の毒になった。
普通なら親を疎ましくさえ思うような年頃なのに、あんな風に親のことを思いやれる子供。しかしその瞳は決して明るくはない。世の中への興味や感心がまるでないかのように。犯罪を犯すほどの衝動すらも持ち合わせていないのではないかと思うほどに。
自分の子供があんなに無気力な目をしていたら。そして親を悲しませない為に仕方なく生きているというようなことを言われたら。私だったらたまらない。
この少年の母親は、どんな気持ちで彼の成長を見守っているのだろう。
少年は私と視線を合わせ、少しだけ申し訳なさそうに眉を下げた。それは、初めて見る彼の感情を含んだ表情のように思えた。
「残された人の気持ちは、ぼくには分かりません。想像や推測することはできるけど、あくまでそれだけです。でも、残された人・・・・・・死者を引き摺っている人を見ている人間の気持ちなら分かります」
死者を忘れられない人ではなく、引き摺っている人ですよ。そう、少年は付け加えた。
「どんな気持ち?」
「・・・・・・辛いです。それに不安にもなります。彼らは時々、半分向こうの世界の住人のように見えます。何かの拍子にあっちへ引っ張られるんじゃないかと怖くなる」
どんっと下腹に響く音がした。終わりに近づくにつれ、花火を上げる場所が少しずつこちらへ移動しているようだった。
「私も、周りからそんな風に見えてるのかしら」
夜空に咲く赤い朝顔に目を向ける。それが散ると、今度は水色の朝顔が花を開いた。一拍遅れて、また地面を震わせるような音がする。
少年は何も言わない。
「私は正人に会うためにここへ来たの。昔、ここの地面に死者の持ち物や体の一部を埋めておくと、その人が盆祭りの夜ここに帰って来るっていう噂があってね」
少年は、あれみたいだ、と言って、私が彼を見た時に思い出したホラー映画の題名を挙げた。私は、そうね、と同意して続けた。
「もちろん信じてなんていなかったわ。これは現実で映画なんかじゃないもの。でもね、正人がこの世からいなくなってしまった時、もう二度とあの子に『おかえり』って言えないんだって思った時、もう一度会えるなら藁にだって蜘蛛の糸にだってすがりたいと思ったの。こんなくだらない噂話にだって、ね」
「それでか・・・・・・」
少年が何かに納得したように呟いた。それは、私に対するものではないような独白に聞こえた。
「何が『それで』なの?」
「ぼくがここに来たのは、ある女の子を見張るためなんです。その子、一緒に行く友達もいないのに、毎年祭の夜になると、花火を見に行くと言って一人で出かけるそうなんです。それで家の人が心配して、彼女に気付かれないように毎年おじいさんにあたる人が後を尾けてるんですが、いつも彼女は祭をやっている神社とは反対側のここへ来て、一人で花火を眺めてるらしいんです。今年はおじいさんがぎっくり腰になっちゃって、家の人が出られないからって、ぼくが頼まれたんです」
少女は実家を出て祖父母の所へ下宿しており、少年はその家のおばあさんとも面識があるらしい。それで自分にお鉢がまわってきたのだと、彼は説明した。
「道中何か危険な目に遭わないようにってこともあったんだけど、見失っちゃって。彼女をナンパするような人間はいないと思うけど、溝にハマったり川に落ちたりする危険があるんですよね。まぁ、懐中電灯持ってたから、強盗にでも捕まらないかぎりは大丈夫だと思うけど」
「その子も大切な人を失っているの?」
「はい。とても大切な人を。だからきっと、彼女もあなたと同じ目的でここに来ているのだと思います」
そう言った彼の表情はどこか寂しげで、洞穴の目には微かな光が灯っていた。それは悲しみを含んでいたけれど、かさかさに乾いた空洞でしかなかった瞳に、感情という水が流れ込んだように見えた。
「あなたの言う死者を引き摺っている人って、その子のことなのね」
少年は、彼女だけじゃないけど、と呟いた。花火はまた休憩に入っており、少々ぶっきらぼうに放たれた小さな声は、本人が思っているだろうよりもはっきりと私の耳に届いた。
私は、先ほどまで幽霊か化け物のように見えていた少年が、急にかわいく思えてきた。
「あなたがなんとかしてあげられるんじゃない?」
私は真っ直ぐに少年に微笑みかけた。しかし、彼はふるふるとかぶりを振る。
「ぼくは死んだ人を知らないから、彼女達と同じ想いを共有することはできないし、その人の代わりにもなれない。ぼくができることなんて、せいぜいあっちに行かないように見ていることくらいなんです」
少年は立ち上がると、旧道に出る方とは反対の草むらへ歩き始めた。
「どこへ行くの?」
「彼女が来たようです。ぼくは何か危険なことがない限り出て行かないことになっているので。だからあなたも、彼女にはぼくのことは黙っていて下さい」
そう答えると、少年は再び私に背を向けた。
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つづく
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