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ぬるま湯雑記帳
岡田英次編・弐
【岡田英次編】其ノ弐
『青春の門』
筑豊篇上・下巻 自立篇
1977年 監督:浦山桐郎
あたしゃ『青春の門 自立篇』の1分に満たないであろうエイジ出演のために4時間以上を費やしたのか…ふふっ…ふふふっ。五木寛之の原作読んでません。どちらかというと好きな話であるけれども、この映画はいただけませんでしたよ。田中健って大きい国分太一みたい。ハングリー精神むき出しのいくぶんひねた主人公であるべきなんだろうけど、終始いいとこのボンボンみたいでした。
筑豊の炭鉱で生を受け、豪傑な父を早くに亡くし気丈な継母(父の後妻)の女手ひとつで育てられた少年の思春期~青年期を描いた作品。自立篇は大学生として上京、舞台が東京になります。筑豊篇で狂言回しだった小沢昭一はいつの間にか消えちゃったしなあ。いいところもあるんだけど、ワタクシは…なんか消化不良。主人公たちの恋愛事情より、自立篇で挿入されるいしだあゆみの娼婦と、高橋悦史の大学講師の愛の行方のほうが気になる。大正~昭和、エイジはこういった風景の中に生きていたのかあと、全く違うところでしみじみしてしまいました。主人公が子役の頃(筑豊篇・上)は悪くなかったんだけどなあ。主人公、ちょびっと新吾テイスト。
『ふりむけば愛』
1978年 監督:大林宣彦
奥歯をかみしめていないと、歯が全部抜け落ちてしまいそうなくらいヒドい作品。これに比べたらギララなんてかわいいもんだい!百恵・友和コンビの作品のなかで歴史に残る駄作では…。アメリカで凧揚げをする男。旅行中の女。凧で口説く男。それでおとされた女。…あほか。友和が2回ばかしテーマ曲「ふりむけば愛」をギター片手に歌いやがるが、声が小椋佳だ。吹き替えだ。その歌で涙ぐむ百恵ちゃん。なにからなにまで偽モンだ。あんたたちの愛もだよ!
エイジは友和のお父さん。「脱税はするし女は囲うし汚いヤツ」とか友和はいっておったが、あんたのたわごと聞き入れた話の分かるヤツじゃないかっ!と突っ込みたくなりました。どうでもいいことですが、エイジ車の運転してます。免許あるんだー。なんか、出演者も監督も脚本家も小椋佳も、だれもかれも気の毒な映画です。
『大地の子守歌』
1976年 監督:増村保造
原田三枝子、すごいなー。よく走り、よく暴れ。大地から生まれたような野生児を好演。彼女の「ばばー、ばばー」と死んだばあさまを呼ぶ声が耳から離れません。育ててくれたばば様が死んで、慣れ親しんだ山から島の女郎屋に売られたみなしごのおりん。激しい気性で周囲と衝突、それでもまっすぐで飾らない性格と若さで客も多くつくが、失明。伝道師の手引きで島を抜け出しお遍路さんになるまでのお話。これが13~16歳の3年間の話なんだな。なんて過酷な少女期なんだろう。
エイジは伝道師役。彼女を体目当てではなく、抱きしめたはじめての男。これが「慈悲」なんだろうか。唯一ほっとした場面でした。そういえば、『キーハンター』でも牧師さんだか神父さんだかの役をしていたな。真面目で安心感が漂うエイジのキャラクターには神職が似合いますね。それで悪役をするときは悪い顔になるんだから、さすが。田中絹代がお遍路になったおりんにおにぎりを施す役で特別出演。あの方はどうしてあんなに「母」なんだろうか。
『チロルの挽歌』
前・後編
1992年 NHK
エイジにぴったりの役だ!エイジのためにある役だったと思うのよ。技術職一直線だった男が北海道にオープン予定のチロリアンワールドの責任者として派遣されるが、そこの小さな町には駆け落ちした妻と男が暮らしていた…。
主役の寝取られたオトコが健さんで寝取ったオトコが杉浦直樹。このキャストも秀逸だと思った。妻は大原麗子。エイジはチロリアンワールド建設反対で土地を売らない牧場主。親分肌で喧嘩好きの頑固じじい。可愛い。杉浦直樹との会話が笑ってしまう。エイジは若いときからゆったりと噛みしめるような台詞まわしで、絶対早口言葉が苦手だったとふんでいる。私はその口調をたいそう愛しておるのだが、歳をとったらまた味が出た。しかも今回の台詞はセンテンスが短くて殆ど単語みたいだったから、さらに味が出た。いつもの健さんなら「無器用ですから」を売りにするところだが、今回は無器用ゆえに攻撃されたり、誤解を招いたり、さんざん。みんなに「もっとしゃべれ」とか言われてしまう。健さんも努力する。なんだか気の毒。でも可笑しい。
エイジと健さんは立場は真逆だったけど性質は一緒だった。ただ健さんは若かったぶん軌道修正が出来、エイジは出来なくて取り残された感。健さん以上に気の毒というか、私は最後悲しかった。結末がちょっと「ん?」って気もするが、全体的にやさしいドラマでほっとする。おっさんがいっぱい出てるので安心感が。今回の西岡徳馬が好き。
そうそう、健さん・杉浦直樹・大原麗子は『網走番外地』のメンバーらしいですね。あたしゃ健さん・エイジつながりで『南極物語』、エイジ・金子信雄・河原崎長一郎つながりで『白い巨塔』がよぎりました。要するに実力派ぞろいってことですね。市長役の河原崎氏、いい。さらにチロルの民族衣装の健さんはなかなかない姿なので必見。ほんのちょっとだけどね。しかし杉浦直樹、背がデカい。
『南極物語』
1983年 監督:蔵原惟繕
リアルタイムで映画館に見に行った。下敷きもカンバッチも持ってた。タロとジロの話も知っている。テーマ曲もばっちり。荻野目慶子がいたことも覚えてる…こんな話だったっけ?すっかり忘れてしまってました。動物と子どもに弱いはずのワタクシが、この映画では2回とも泣かなかったのは淡々としたコロンボのナレーションのせいなのか、はたまた「動物と子どもに弱い」というのが思い込みだったのか。人間の都合で南極に連れてこられ人間の都合で南極におきざりにされた犬たちの1年2ヶ月。エイジは第一次越冬隊の隊長。もくもくに着ぶくれていてかわいかった。
『子連れ狼 冥府魔道』
1973年 監督:三隅研次
こちらは若山富三郎バージョンのしとしとぴっちゃん。剣客というよりは武闘派。『飢餓海峡』でも原作では剣道の師範という設定が柔道師範になっていたくらいだから、柔道については腕に覚えがおありなのでしょう。
側室をかわいがるあまり、二人の間にできた女子を男子と偽り、正妻との間の息子を幽閉した殿様。事を憂える家来たちが、拝一刀に殿様と側室と女子を殺すように依頼する。依頼金しめて千両(あれ?一刀は一殺五百両ではなかったかと一人ツッコミ。確認せねば)。そのまま逃げちまえとあたしゃ思いましたよ。いろいろなエピソードを盛り込んだため、ややとっちらかった感が。殿様が加藤嘉、エイジは老中。いいひと。加藤嘉エイジペア作品多いですね。あまり登場しませんでしたが、エイジは端正な老中でした。やっぱりいい男だ。
今回砂漠ロケがありまして、手押し車は橇をはかされ、富三郎が馬でそれを引き、大五郎は右に左にゆれながら砂漠を滑らされていました。申し訳ないが大笑い。あれ酔っただろうな、つらかっただろうなあ。さらに手押し車は舟にもなりました。
殺陣は皆々大流血。すごい血糊。やりすぎ。音楽が「プレイガール」みたいで、ちょっとナンでした。
『吾輩は猫である』
1975年 監督:市川崑
こういう舞台のような映画、きらいじゃありません。夏目漱石作品の映画化。仲代達也がクシャミ先生です。あー、明治人って顔してます。この作品の功労者は岡本信人でしょう。オカモチ持ってるイメージしかないけれど、カンゲツ役よかったですよ。猫の目を通した人間観察というのではなかったけれど、人間はみょうちきりんなことを一生懸命考えて生きてるんだなあ、というのは感じました。で、私たちからすればのびやか~に見える明治人も、当の本人たちはあくせくして生きていると思っていたわけで、それを思えば現代のわれわれがイヤになっちゃうのはしごくマトモなことなんだろうなあ、と思いました。エイジはクシャミ先生の勤め先の校長。ちょこっとしかでません。お茶を飲んでドリフのオチのような顔をします。
『君よ憤怒の河を渉れ』
1976年 佐藤純弥
ヤーダヤー、ダヤダヤダヤヤダヤダーっちゅう妙なスキャットのテーマ曲からわき腹にきました。昭和残侠伝では友情厚い渡世人だった健さんと良さんが、検事と検事正というまったく腑に落ちない役をされています。
製薬会社の金の流れを追っていた健さんが、ある日強盗の濡れ衣を着せられ拘束、逃亡。全国規模の包囲網が健さんを追い詰めるが、真実を知る男を捜して健さんの逃亡生活は続く…。あの~、むちゃくちゃです。いろいろ目を疑うことがありましたが、健さんの大規模な無免許運転と、健さんに想いを寄せる中野良子が新宿西口でとった行動が特にひどい。『黄金の犬』と同じく原作が西村寿行。読んでませんが、やはりやりすぎの人々が出てくるのでしょうか。今回も(こっちのほうが先にできた映画ですが)みなやりすぎです。「第三の男」風のとぼけたBGMはあまり映画にマッチしてなかったと思います。健さんのラブシーンは初めてみたような気がします。洞窟でした。なんか敷いてましたが、背中とか痛そう。
エイジは製薬会社と黒幕政治家の息のかかった精神病院の院長。男を探して病院に潜入(?)した健さんを、クスリを使ってつぶしにかかりますが最終的には自殺。西村作品ではエイジはイマイチさえません。動物と、精神病院内での健さんの「あまりみられない演技」に目が釘付けとなること請け合いです。
『渋滞』
1991年 監督:黒土三男
エイジファンとしては、最後の20分が見られれば、あとはよいです。生まれ故郷の岡山の島に正月帰省しようと習志野から出発した男とその家族。渋滞、事故、雪、病気などにはばまれ、なかなか辿りつくことができない。島で待つ両親、焦る家族、その胸の内。エイジはボケのはじまった男の父親。毎日連絡線のつく桟橋まで迎えに行き、魚を釣り、待っている。息子の顔を覚えているかどうかも覚束ないが、子を想う気持ちは忘れていない。台詞は一言もありませんでしたが、かわいくてねー。あんなボケなら許せるなあ、などと思ってしまいました。歳をとったエイジは、長靴とジャンバーがよく似合う。もっくりふくれた姿をみると抱きしめたくなるくらいかわいい。いい歳のとり方をしたなあと思う。
ちなみに主人公の息子はショーケン。顔立ちはぜんぜん違うけど、エイジと親子というにも無理はないなあと思いました。それにしても、あまりにアクシデント続きで車が進まず、見てるこっちがイライラしてきた。精神状態がよろしくないときにみるとほっぺたの内側を噛み切ってしまいそう。妻役は黒木瞳。二人のキスシーンは必要だったか?がんばってはたらいて帰省しようとするだけど、なんでこんなメに遭うんだ、金持ち日本てなんだ、ってショーケンが言う場面がありますが、その言葉は言わせないほうがよかったかなあ、と。
『鮮血の記録』
1970年 監督:野村孝
たぶん今まで見たエイジのなかで一番腹黒(注:この作品を見た当時)。「殺されてしかるべき」って役柄ですな。戦時中、自分の命と引き換えに、部隊を見殺しにした男。戦後もあくどい手を使ってのしあがってゆく。彼にぬれぎぬを着せられ苦渋を強いられたかつての部下が、さまざまな妨害をくぐりぬけ、彼に復讐をするまでを描いたお話。
エイジを追い詰める主人公に小林旭。彼はときたま変な行動を。パペットマペットも顔負けの人形劇。過去には彼女とのデートにサル山へ行ったこともあるようだ。彼女のために用意したケーキはたぶんバタークリーム。うまそう。着たきりすずめだがおしゃれさんで、くるぶしまでのショートブーツも履きこなす。乱闘シーンもあったけど、クライマックスの「静かな殺戮」はなかなかよろしかった。田村高廣も若い。
なんだろうなあ、エイジに対する先入観のせいか、悪役やっててもあんまり悪い感じがしない。顔じゃないな、顔は悪く見えるからしゃべり方だな、きっと。ワタシにしたらとても穏やかな声に聞こえる。水野久美のヒロインは初めてみたような。
『宴』
1967年 監督:五所平之助
エイジ出演作ということだけ知ってて借りてきたら、2・26事件を下敷きにした、青年将校とあるお嬢様の悲恋悲劇を描いたものでした。図らずとも前日にNHKの『その時歴史が動いた』でこの事件がとりあげられ、少々涙したりしてたので、なんだか切ない気持ちで見ていました。
相思相愛であったにもかかわらず、自分は生涯軍人として結婚をしないと心に決めている青年将校は中山仁。彼への愛を受け入れてもらえず意に反した結婚をし、出戻りとなったお嬢様が岩下志麻。主役になるべくしてなった二人。男前。きれい。志麻姐さんは当時の女性としたら積極的に自分の胸のうちを伝えようと努めてるよなあ。中山仁は頑な過ぎた。そして、本当の幸せに気づくのが遅かった。志麻姐さんが不憫。姐さんがちょびっとやりすぎの気もしなくもなかったけど。旦那が気の毒だった。しかしそれはお嬢様特有の一途さだったのかな。
満州行きを甘んじて受けるか、クーデターを起こすか、そのはざまで揺れる青年将校たち。結局事を起こすに至り、中山仁は処刑、志麻姐さんは後を追う。巣鴨での二人の面会場面は涙がにじんだです。
事件の数日前、歌舞伎座デートの帰りの大雪に遭い、凍えて身動きが取れなくなった志麻姐さんをあたためようと、足袋を脱がして足を口に含む中山仁。それよりさすってやったほうが…とも思ったが、よもやの展開にぎくっとしました。やはり名場面かな。なまじなキスシーンよりも鮮烈な印象が残ります。そういやこの映画ではキスシーンはなかったなあ。足指の思い出。 エイジは一青年将校の役です。黒ぶちの丸眼鏡をかけた、まじめな将校さん。クーデターに対して慎重派ではあったが、事を起こした後は一番熱い思いをもっていました。真面目を絵に描いたようなキャラクター。つくづく権
力っていやよ。軍というしくみもね。
『皇帝のいない八月』
1978年 監督:山本薩夫
この後味の悪い話はいったい…。一応渡瀬恒彦が主役なんだろうけど、まったく感情移入ができません。だって論がおかしいんだもーん。
腐敗した日本を憂い、クーデターを企てた故に職を追われた元自衛官が、5年の歳月を経て、自衛隊の賛同者を率いて再びクーデターを計画。その動きを察知した内閣は彼らの阻止をはかるべく制圧をすすめるが、最後に残った渡瀬恒彦班(…班?)は寝台列車を乗客ごと占拠。博多から東京にむかう彼らを、彼の妻と元恋人が止めようと画策。結末は如何に。
…結末、ひじょーに後味悪し。でもそんなもんなんだよな、実際。『宴』と連チャンでクーデターものを見たもんだから、なんだかぐったり。バレバレの尾行シーンやら、思うところはいろいろあるけど、出演者は豪華です。大変に私好みの出演者がぞろぞろと。エイジは渡瀬恒彦の暴走を「止められなかった」自衛隊のお偉いさん。ちみっとしかでてきません。てっきり政治家の役で出るのかと思っていました。
クーデターを起こしたほうも、起こされたほうもなんだかなあ…男の「プライド」と「思想(特に政治思想)」ではメシは喰えません。幸せにもなりません。戦争映画などを見ていて、いつもそう思う。争いを始める勇気よりやめる勇気が必要です。繰り返すけど権力っていやよ。
『また逢う日まで』
1950年 監督:今井正
みに行ってまいりました。どこへ?池袋新文芸坐へ!この作品に対する「思い違い」というか、あれれれ?はいっぱいありましたよ。
1:これほどエイジの独白が多いとは思わなかった
2:ガラスごしの接吻が最初で最後の接吻だと思っていたが違った。
3:しかもガラスは電車の窓だと思っていた。違った。
4:久我美子が死ぬとは思わなかった。
5:しかもエイジより先に。
だからといってがっかりしたわけではなく、ここがファン心理というのか、映画館でワタシより年下のエイジに逢えたことがとにかく嬉しくてにやにやが止まらなかった。可愛かったなあ、二人とも。
戦時下で出会った男子学生とアルバイト女性(←って書くと、フリーターみたいだけど違います)の儚い恋の物語。久我美子の母親役、杉村春子に最後泣かされました。エイジは見るからにすねかじりのボンボンで、少し強引で、甘ったれでもあり、戦争大嫌いで、髪も刈らないで、おしゃれさん。多少くすぐったさを感じるキャラクターで、エイジも若干声を高めにしていましたが、作風の雰囲気にはよく似合っていたと思います。久我美子のしっかりしたきれいな女の子もよかったなあ。
エイジの出征が決まって肩を落とす二人が、エイジが戻ってきたアカツキに築こうとする家庭の理想を、次から次へと途切れることなく話してゆく場面は、さすがに悲しくなった。同じような会話をして旅立っていった人たち、いたんだろうなあ。エイジの代表作といわれるこの映画、見られてよかった。今度は昼間の映画館で見たいです。その時まで!また逢う日まで!
『億万長者』
1954年 監督:市川崑
『また逢う日まで』を見に上京した際の江戸土産DVDその1。パッケ
ージを見たらエイジがランニングシャツとパンツで走っている姿があったため、これはなんだという気持ちとスケベ心で買ってみました。ブラックコメディ。
「貧乏人の子沢山」家族がわんさと出てきて、お金と原爆をめぐるドタバタ劇を繰り広げます。久我美子も出演してて、彼女は「平和のため」原爆をつくろうとしているアブないねえちゃんで、エイジは若干軽薄のきらいのある18人兄弟の長男にして売れないニューフェイス。つい半日前に見ていた『また逢う日まで』ではあんなに健気だった2人がこんなになっちゃって…と心をきりかえるのに一苦労でした。
今回のエイジはのびやかーに演技してます。比較的クチがすべらかに動いて「おおっ」と思いました。木村功も思い切ったタコ踊りを披露。気のよわーい税吏官役に見事ハマってました。山田五十鈴も北村谷栄も出演。加藤嘉も。そうそうたる出演者だよなあ。山田五十鈴って表情が豊かですね。ものすごい美人ていうのではないけど色気もあってね。
最後、エイジの家族が家を差し押さえられにっちもさっちもいかなくなり、一家心中を迎えるにあたって「記念写真」を撮る場面はじいんときました。最初見たとき「ビキニのマグロ」なんて言われてもどうもピンと来なかったけど、当時にしたらものすごくタイムリーでものすごい風刺だったのではなかろうか。一度見ただけだと「???」だったけど、エイジのパンツ姿目当てで(!)繰り返し見ているうちに少しずつ分かってきました。クセになる風刺劇。ま、この作品が借金の引き金になり、エイジも木村功もその後苦労したみたいですが、見ている側としては楽しめました。皆さんハチャメチャやってます。しかしまあ、国会議事堂の周りがのっぱらだった時代があったんだねー。
『人間魚雷回天』
1955年 監督:松林宗恵
江戸土産DVDその2。泣かされた泣かされた。ワタシはこのテの話に滅法弱い。しかしメンツが『億万長者』とほぼ同じであるので、これまた心のきりかえが大変。見る順番は考えましょう。
エイジ、木村功、宇津井健が回天に搭乗する予備仕官の特攻隊員。彼らの訓練、出撃前夜、いざ搭乗の3つの場面を丁寧に描いています。帝大出身のインテリ哲学者エイジ、恋人を残して出撃が決まって苦悩の木村功、過去2回の出撃で「本懐」を果たせず、生き残ってきた宇津井健。三者三様の事情と背景ではあるけれど、どれもが戦争のむなしさを指し示すようになってます。なんかもう、これは見てほしい。たとえ特撮がちゃちくても、これほどメッセージ性が強く、印象に残った戦争作品は過去ワタクシが見たなかではありません。名言はエイジが一番言ってます。これ、主役はエイジ…だよね…。ものすごくカッコいいです。顔も役柄も。加藤嘉・殿山泰司演じる自由兵とエイジの交流が胸うたれます。
龍谷大学出身の特攻隊員には高原駿男。自分の乗る魚雷の潜水鏡にお数珠をかける場面はやりきれません。人を殺したりモノを壊したりすることが名誉になるなんて、そのしくみはどう考えてもおかしい。難しい思想はわからんが、そういう単純なことが立派な戦争反対理由になると思うんだけど。霊界丹波のお座敷芸が好き。
『山びこ学校』
1952年 監督:今井正
木村功版『熱中時代』。東北地方の貧しい農村を舞台にして、児童に貧しいことは恥ではないという認識をもたせたうえで、貧しさをばねに学び、綴方を書き、成長してゆく生徒と教師を描いた作品。原作はひとむかし前‘子ども電話相談室’でご存知無着成恭氏の『山びこ学校』です。とにかくフィルムの状態が悪いので、画像もせりふもよく分からないところが多々。しかたありませんが、そっちに気をとられてしまったことも事実であります。
くりくりの坊主頭で垢抜けず、東北弁で話すキム兄やん(←いきなりぞんざいな扱いに)。熱血というよりは一生懸命な先生役を好演してると思う。かんなをかけるのがうまくてびっくりした。貧乏で修学旅行に行けない子らの為にクラス全員で木の切り出しを手伝ったり、家の仕事で学校を休みがちの子に夜勉強を教えたりと、今では想像できない当時の事情がうかがいしれます。布団で寝たことがないからと、修学旅行の宿屋で畳に寝る子とか、胸が詰まるところも随所にあります。先生の投げかけに対して、児童が賛同するときの相槌が「んだんだ」なんだよなー。かわいいなあ。みんないっせいに言うの。
エイジはなんていうのかな、教師ではあるんだけど今でいう教務主任みたいな感じでもあるのかな、キム兄やんたちの相談役兼指導役でありました。言葉は悪いけど、彼らが田舎教師であるのに対して、エイジはスーツを着て髪には櫛目がとおり、丸眼鏡をかけている。言葉も時々東北弁時々標準語。きっと東京かどこかで学んできたっちゅう設定でしょう。ちみっとしかでてきません。
話が尻切れトンボの感は否めませんが、気持ちの伝わってくる作品です。キム兄やんは若いときがいいですね。フィーバー!
『昭和のいのち』
1968年 監督:舛田利雄
エイジが鼻ほじったー。しかも人差し指ではじいたー。でもこういう役大好きだあ。のちの『白い巨塔』の里見兄役にも通じていくところがありますね。
時は昭和初期、ある政治結社に属する石原裕次郎は首相暗殺を命ぜられるが、首相に己の過ちを指摘され、そのまま逃亡。裏切り者の汚名を着たまま特高と仲間に追われ、逃げる途中に怪我を負って列車から川へ転落。たまたまその付近に墓参りに来ていたヤクザ(テキヤ?)の親分父娘に助けられ、それが縁で浅草の彼らの家に身を寄せる。この親分がまたイイ人でねー、やくざな家業をしてるのがもったいないくらいの人徳者。世が世ならフリースクールなんかの校長先生にもってこい。
エイジはこのおやびんお抱えの医者。のんだくれでばくち好きのアウトロー。口は悪いが腕は立つ、ってところでしょうか。鼻ほじってもかっこいい。なんでか知らないがおやびんの墓参りについてきていて寺のおっしゃん(注:ワタクシの住む地域語かしら、住職のこと)と碁を打ったりしている。そこで川流れの裕次郎の命を救ってやるんだな、これが。怪我が回復して浅草でやっかいになることになった裕次郎はやくざのもめごとの仲裁したりおやびんの娘に惚れられたりと人気者に。
時は2・26事件にむかう暗い時代。ここらへんで軍の腐敗、仁義を欠いたやくざの抗争、政治思想犯への不当な圧力、当時の赤線で働く女の悲しさ等々、盛り盛りだくさんにつめちゃったから話がとっちらかっちゃって、最後はすべてが尻切れトンボでなんだか消化不良。気持ちは分からなくはないんだけどなー。行き先不透明なもやもや感、そこを突き進む男たち…ってとこなんでしょうが、もやもやしたまましゅーりょー。ちなみに裕次郎は憂国の思いをどこで消し去ったのか、任侠の世界で生きていこうというところで完。
中村賀津雄と高橋英樹がやたらに若い。娼婦にまで身を落とした裕次郎の元恋人が浅丘ルリ子、おやびんの娘が浜美枝。裕次郎は設定年齢よりかなり老けてたため、ちょっとヘンだったかなあ。高橋英樹は軍人として、もうちょっと考えて行動しましょう。
『純愛物語』
1957年 監督:今井正
「わかってくださいこの気持ち」っていう主人公の口癖は、当時の何か流行語なんでしょうか。歌の歌詞かなんかかしら。
不良少年と不良少女が上野の「お山」で出会い、共にスリを働き捕まって別々の施設に入れられ。お互いまっとうになりたいという気持ちはあるのに、うまくいかずに歯がゆい二人。そのうち少女に原爆症があらわれ、施設を脱走。その後退所した少年は彼女を励まし支えるが…。ううんと、実はあまり感動せず。ただ、方法はどうであれ、頑張ろうとしている人たちの努力が実を結ばないっていうのは、見ていてもどっと疲れますね。やっぱり正しい方法で頑張らないといかんのかなあ、などと思ってしまいました。
エイジは少年を更生させようとする、なんていうの?監察官でいいのかな、の役です。ちょっとくたびれた背広を着た、いいヒトです。キム兄やんは少女の治療にあたるお医者さん役。なかなかよい感じ。そうだ、主演のお二人は、江原真二郎と中原ひとみ。中原ひとみ、かわいかったあ。昔、歯磨き粉のCMしてませんでした?なんかそれを思い出しました。
『雲ながるる果てに』
1953年 監督:家城巳代治
エイジとしてはこの作品の役が生涯一番嫌な役だったかもしれないなあと思いました。この憎むべき役をエイジはまたほんとに憎ませてくれる。でワタシも嫌い。『人間魚雷回天』の内容を神風特攻隊に変えて、話の流れはさほど変わらない感じかな。
特攻隊員として出撃を待つ彼らだったが、天候不良のため「その日」が先延ばしになってゆく。そして「その日」は突然にやってきて、大好きな両親と恋人の面会日に浮き足立っていた鶴田浩二は会うこと叶わず、独り林の中で号泣、その後空の彼方へ飛び立ってゆく。
『魚雷』も『雲流るる果てに』も特攻隊員は悩んでいるけれど、後者ではいっつも暗い顔をしていたのはキムにいやんだけで、他の隊員は無理っくりに明るくしようと努めていて、そのカラ元気ぶりが余計に悲しくなるといおうか。隊員の周囲の描き方も丁寧だった。ただワタクシは魚雷の方が泣ける。泣けるからいいってもんでもないでしょうが。さらにそういう比較は無意味なんでしょうが。
キム兄やんは唯一女性とからませてもらえるんだよな、いつも。『七人の侍』でも『魚雷』でもこの作品でも。今回は山岡久乃です。たしかに女心をくすぐるタイプかもしれない。鶴田浩二とは親友という設定で、鶴田浩二の男らしさと対照的に繊細な役でした。
さてエイジはというと、出てこないなーと思ったら、なななんと海軍のなんていったらいいのか、まあ幹部なんでしょうなあ。「特攻隊のかわりはいくらでもいる」などといいながら笑って酒を飲んでいるようなヤツで。戦争体験者のエイジ自身が、たぶん唾棄すべき人間として胸にきざんできた、その役ですよね。考えたらエイジは結構ヤなヤツの役多いです。
ちなみに神風特攻隊って海軍だったのね。すみません何も知らなくて。ゼット旗出てきて、空飛ぶのに海軍なのー?とびっくりしたのですよ、ワタシ。
『修羅雪姫』
1973年 監督:藤田敏八
エ、エイジやるぅ~。なんかすごい。すごいぞこれ。何がすごいって、やっぱし題名でしょう。当初は言葉遊びだったんだろうけど、よくぞここまでふくらましたなと。「しゅらゆきひめ」だもんなあ。原作が『子連れ狼』の方々。考えてみたら『子連れ狼』もやりすぎだもんね。
時は明治。徴兵免除の金を盗んだと身に覚えのない罪を着せられ旦那は惨殺、息子は撲殺、自分は三日三晩おもちゃにされた女が、刑務所で父親の分からぬ女の子を出産。修羅雪と名づける。女は自分たちを不幸のどん底に突き落とした首謀者4人に復讐するためだけに生き、男1人を殺して投獄。残りの男2人、女1人についてはその子に復讐を託して死亡。修羅雪は寺に預けられ立派な刺客に育て上げられ復讐の旅に出る、蛇の目に仕込んだ刀をたよりに…。
寺の住職が刺客を育てちゃっていいのかな。またハンパじゃない鍛え方。「立て!立つんだ雪!」などとどこかできいたようなセリフを吐き、修羅雪を樽につめて坂を蹴転がすなんざ並みの住職ではありませぬ、西村晃よ。成人後の修羅雪は梶芽衣子。薄幸の女がよう似合う。
エイジは悪党4人のなかでも最も悪いボスキャラで、要は修羅雪に見事に殺されるためだけの役ですわ。強姦するところなんか、ちゃんと?下だけ脱いでいて、おもらしした小学生みたいだったわい。
修羅雪はいざ殺しに行くとき、必ず白い着物なのです。赤い着物なら血が目立たないのになー。ナポリタン食べるときですら白はご法度なのにー。でもそれじゃ映画になりませんねー。また、血糊が赤というより朱色。ビュービュー血が出るので、逆にこわくないです。
さて、そんなエイジの最期はというと、舞台は鹿鳴館。刀で串刺しにされてはメいっぱい血を吐き、首を斬られては噴水のごとく(友人は「間欠泉のようだ」と言った。笑った。)血を吹き上げ、ベランダから落ちるにあたっては日の丸の旗をつかんでから、床ではもんどりうち、やるだけやったあとは大の字できめっ!…すみません、大爆笑です。梶芽衣子が「因果応報!」と言って切りかかるまでピストルを撃つのを待っててやるというヒトのよさも見受けられました。あの、まあ、いろいろツッコミどころ満載の作品で、楽しかったことは楽しかったです。ハスにかまえてみてくださいね。
『陽炎』
1991年 監督:五社英雄
主題歌が聖飢魔II。昔好きだったなあ。この映画の主題歌を歌うってデーモンがオールナイトニッポンで言ってたなあ。樋口可南子がゲストできたような気がするけど、それはやっぱり気のせいかもしれないなあ。そんなことを思い出しました。いつもエイジの出演作品リストを持ってビデオ屋さんに行ってたんだけど、なぜかそのリストにはこの作品が載っていなくて、『陽炎』に出てることを知ったのはだいぶ後になりました。
ばくち打ちの父親がいかさまで殺され、旅館を営む優しい夫妻のもとにひきとられた少女が、自分のためにいじめられている義理の弟を目の当たりにし家出。博徒となり数十年後弟と再会するが、ばくちのカタに家はヤクザに差し押さえられ、遊郭へと姿を変えていた。恩になった家をばくちでとりもどすべく彼女の奮闘がはじまるが、向こうも腕利きの博徒を送り込んできた…。
やっぱりきれいですね、樋口可南子。紅い口紅、さらっと着た着物。すっとした背筋。義弟はモッくん。彼がもうちょっと考えて行動すりゃ、おねえさんは苦労しなかったんですけどー。梨乃姐さんは今回も着物着て乱闘。高品格、拓ぼんお懐かしや。竹中直人は今よりはふさふさ。白竜はやはり怖いやくざ顔。仲代達也も若かったなあ。エイジは樋口可南子の身の上を知り、彼女のために花会の後見となった、大物やくざの親分。若頭?が夏八木勲。二人ともかっこよいです。エイジは年とともに眉がうすくなり、ちょっと女性化しました。
クライマックスはモッくんを殺された樋口可南子が喪服で遊郭に乱入、ダイナマイトに火をつけ、遊郭、ぼっかーん。切って撃っての大乱闘となりました。やった!五社監督。ラスト、話が終わって主要人物のカオがばんばんばんと映し出され、「陽炎」と出てクレジットへ…なぜエイジが出ん!彼より出番がなかった霊界丹波も神山繁も出たというのに、おねえさんは怒ったど!
『弾痕』
1969年 監督:森谷司郎
ヤマなしオチなし意味なし。やおいって決してホモ漫画だけをさす言葉じゃないよなあ。なんかこの映画見ててその言葉がよぎりました。淡々としてるからかなあ。冷戦が終わって久しいからかなあ。アメリカVS共産圏っていうのが今の時代にはあわないもんね。ワタシの心にはあまり残らない作品でした。
加山雄三はアメリカの諜報部員で、腕利きのスナイパーでもあり、日系アメリカ人の設定らしいエイジの元で働いている。自分を狙った銃弾がたまたま近くに居合わせた太地喜和子演ずる女流彫刻家にあたったことから恋に堕ちる。そして武器商人の商談をぶちこわす仕事を最後に足を洗って、彼女と日本を離れ外国へ行こうとするまさにその時、銃弾が彼を貫く…。
テーマは「愛」だったかな。うろおぼえのため自信がないけど、どこぞのおっさんが太地喜和子に「愛について」説いていた場面があったはず。会話がややお高くとまった感じで、いわゆるハードボイルドっぽい雰囲気をかもしだしたかったのかな?と思う。エイジがしていたチロルチョコみたいな指輪が印象的でした。
『エスパイ』
1974年 監督:福田純
エイジ、あなたはナニ人の役なんですか?名前はたしかサラバッド。どこの国のおヒトで?こらまた大変思い切った映画。ある意味『修羅雪姫』を超えましたな。爆笑映画でした。どこまでマジなのか。
超能力によって世界の平和と各国の要人を守る国際組織「エスパイ」。超能力によって世界征服をたくらむ悪の集団が「逆エスパイ」。逆って一体…。まあ、たしかに逆なんだけど。この作品を一言でいってしまえば超能力戦争ですな。外国人も吹き替えにより、みんな日本語しゃべってます。ギララもそうだったなあ。…ヘン。トルコやらスイスやら、舞台がやたらインターナショナルなんだけど、この作品が海外で撮られたのかと思うと、ちょっと悲しくなりました。
エスパイ日本支部(?)のメンツは藤岡弘・由美かおる・草刈正雄・加山雄三。濃っ。逆エスパイのボスが若山富三郎。ロシアチックな名前で、ウルロフだっけ。もう、なんていったらいいのかなあ、皆様、お疲れ様です。
テーマは「超能力は、愛」。由美かおるのお色気シーンあり。加山雄三が「リョウバのケン」って言ってたのは「モロバのツルギ」のことでしょうか。彼は敵にぼっこぼこにやられた藤岡弘が目覚めた際、まずタバコをすすめた思いやりのあるようなないような日本支部リーダーです。
さてエイジですが、あれはインドとかネパールとか、そちらの方のつもりでしょうか。顔がまだらに日焼けして(今で言うところの特殊メイク?)、昨日山から下りてきたとか言われてて、でもカッコはヨハネパウロ二世みたいで、老師と呼ばれ、超能力をもち、最後その力を使い切って死にました。…仕事選んでください。合掌。あ、原作は小松左京。主題歌が尾崎紀世彦であることを付け加えておきましょう。
『悪女かまきり』
1983年 監督:梶間俊一
あ~、今回のエイジは『エスパイ』よりはましかなー、とかしょもない比較をしてしまいました。うー、でもやっぱりひどいですけど。
父親の借金のカタに母親はやくざにヤられ、絶望した二人は子どもを残して自殺。そんな過去をもった女が金目当てに男に近づき、自分の野望を叶えるために男を食いものにし、直接手を下さずに消してゆく。このビデオなかなかなくて、一時は買おうかとすら思ったんだけど、やっとみつけました。…買わなくてよかった。
悪女には五月みどり。手玉にとられた男がエイジと速水亮。えー、なんで五月みどりにみんなよろめくのかなあ。そんなにきれいじゃないじゃんかー(←失礼)。映画だからかあ(←さらに失礼)。ソフトポルノ路線らしくて、何回かコトに及ぶ場面がありました。ま、世の男性のお役には立ちますまい。エイジもなー、みどりのマタに顔を…。かんべんしてください(T_T)。 相変わらずエイジはガタイがいいです。役どころはみどりの愛人で会社社長。彼女のもう一人の愛人速水亮に殺されました。みどりは生命保険がほしい。速水はエイジが邪魔に。それでエイジが殺されました(怒)。
結局速水もみどりに殺されそうになり、罠にはめられたことに気づく。そしてみどりは姿を消す、完。…ちゃんちゃん。はっきりいって、エイジはなにも悪いことしてません。愛人かこっててナンですが、ものわかりのいい、よい人ですよ。あー、よい人を殺すから「悪女」なんですな。ふんふん。しかし、エロならエロ、サスペンス(?)ならサスペンス、メロならメロ、もう少し絞っていただかないと見るほうとしてはどうも。着地点がわかりません。
ちなみに『南極物語』と同時期の作品。あれほど仕事は選んでねって言ってるのに…。あと、エイジのセンターラインを跨ぎっぱなしの運転が気になりました。安全運転をこころがけてください。
『無常』
1970年 監督:実相寺昭雄
結末を楽しみにしてたので、最後の最後でぽーんと放りなげられちゃったような、ぽかーんとした気分にさせられました。あとは自分で考えろってことかなあ。
京都近郊に住む青年。商家のぼんぼんで大学にも行かず、家業も手伝わず、仏像にのみ情熱を注ぐ毎日。日々の生活自体はそれほど破天荒というわけではないのだけれど、彼と接する人々は彼の悪魔的要素に魅かれて、触れて、不幸に見舞われてゆく。彼だけが変わらない、いわば触媒のような青年を演ずるのが田村亮。2時間ドラマなんかでしか見たことがなかったので、見直したぞお。こういうアブナい役、いいじゃないか。
エイジは仏師。一見飄々として悟りきった人格者のように思えるが、ある日転がり込んできた田村亮によって、家庭も自分も乱される。表面上は終始穏やかな京都弁エイジです。エイジの息子がささきいさお(当時佐々木功)で笑ってしまった。初めは気づかなかったんだけどねー。ヤマトー!
実相寺監督作品ってことで、ご存知の方はご存知でしょうが…エッチです。ワタシは品がないので「あれ?これだけ?」などと思ってしまいましたが。そもそも話の出発点は近親相姦だし。
田村亮演ずる青年が、自分の仏教観を滔々と述べる場面があります。腰に手をあてて。主張するべきものを持つということは、強いな。その主張があっていても間違っていても人をひきつけることは確か。演説って(本来は)ものすごく力があるものなんだなと今更ながらに認識しました。映画自体も‘強い’感じがしましたよ。
『土曜ワイド劇場 江戸川乱歩シリーズ』
1978年~ テレビ朝日
どう書いたらいいかなと、ずっと思いあぐねておりました。というのはこのシリーズのうちエイジは3作に登場しているからです。なので、今回はちょっと書き方をかえて、いろいろまとめたり箇条書きだったりしてます。
<まずは土ワイ>
このころの土ワイって、総じてエッチだったのねえ。江戸川乱歩シリーズもお色気シーンがいっぱいだ。よいこの皆さんがそばにいないか確認してから、鑑賞するように致しましょう。
でも確かにこの枠ってだいたいソレ系の話が多かったなあ。当時ワタシもまだ「よいこの皆さん」だったので、ほとんど見てないのが残念ですが(?)、たまたまチラ見した土ワイは誠にキワどくて、えらいこっちゃのシーンは今も覚えています。ここでは言えません。内容はシリアスだったと思うんだけど、まず再放送はムリだな。
<そして江戸川乱歩シリーズ>
天知茂が明智くん。ぱっと見、どんな悪役よりも悪そうだ。変装してた時の服を脱ぐと下に自分の服を着てるけど、竹の子じゃないんだから。暑いし動きにくかろう。彼は真っ白なスーツやおしゃれネッカチーフ、派手なネクタイなどで自分をアピールすることに吝かではなく、時には探偵事務所で働く小林くんや助手の女性にもおそろいのブレザーを着せている。この2人は立派な大人です。おまぬけな警部役は荒井注。おなつかしや。
さてこのシリーズ全25話はDVDとなってます。やっぱり人気あるんだな。一話完結なので、どこから見ても大丈夫。
<では3作品>
一応推理モノなので、内容についてはなるべく書かないように致しましょう。ワタシが見たのは
『黒水仙の美女』『エマニエルの美女』『鏡地獄の美女』
です。題名からも分かるとおり、女性が主人公の形式をとっています。
『黒水仙の美女(「暗黒星」より)』
ヒロインはジュディ・オングってことでいいのかな。でもお色気シーンのお風呂の場面で脱いだのは、違うおねえちゃんでした。この作品の注目はなんといっても江波杏子。綺麗なんだけど…怖い。いろんな意味で怖い。なんなんだこの役は(笑)。
エイジの役どころ:
「億万長者の彫刻家」…のワリにぺろぺろの緑パジャマなんか着ているし、彫刻家らしからぬ風采をしている。前髪を下ろして額を隠していてちょっと珍しいなーと思った。一応女好きってことになるんだろうけど、そんな場面もなくて、あまり話にもからんでこなくて、なんだかなあという役でした。もっとちゃんと使ってくれえ。
『エマニエルの美女(「化人幻戯」より)』
この3作品の中では一番エッチです。周囲に注意を払ってから鑑賞しましょう。ヒロイン夏樹陽子の妖女ぶりは必見。男も女も明智君も手玉に取られます。きれいだもんなあ。あ、虫が苦手な方にはおススメできません。かまきりが死ぬほど出てきます。本物もニセモノも。ワタシかまきりは平気なのですが、さすがに胸が悪くなりました。脚本ジェームス三木。原因はおのれかー。
エイジの役どころ:
夏樹陽子の旦那。推理作家。夫婦揃って見事な変態(笑)。この設定では現在は間違いなく放映不可。エイジの髪型とヒゲはとても妙。でも昔こういう芸術家いた!って思いました。特筆すべき点は、水のなかに沈んでいたエイジががばっと出てくるところがあるんだけど、沈んでいる時鼻がツーンとならないよう、鼻の穴に綿をつめています。で、そこから泡が一つ、ぷくんと出てくる。笑った。
『鏡地獄の美女(「影男」より)』
本編始まる前しょっぱなの登場人物紹介、この時の役名で犯人が分かっちゃうという…どうなのこれー。これは香港ロケもしている、かなり気合の入った回です。ヒロインは金沢碧。脱ぎました。ワタシこの方のデビュー作『北都物語』が好きなので、感慨もひとしお(←?)でした。ワタシは彼女の相手役、二谷英明ファンでもあるのさー。
エイジの役どころ:
女好きな宝石商。金沢碧にも手を出すし、トップレスのショーダンサーを追いかけたりもします。また土の中に生き埋めにされたり、悲惨なメに遭ってます。でもこの回はビシッとした格好が多くて、その点については嬉しかったです。
<まとめ>
文句タれつつ、三種三様のエイジで楽しめました。この「江戸川乱歩シリーズ」はまた見たいです。無茶な話ばっかだけど引力あるなあ。
『水戸黄門 第三部』
1971年~ TBS
この第三部シリーズは全28話。全話を見たわけではありませんが、エイジは第1話『南からきた密使』と最終話『暗雲晴れて』のゲストとしてDVDの裏表紙に名前が挙がっていたので、この2話だけの出演の様子。2話とも見ました。今回は薩摩藩の騒動がきっかけで、黄門様ご一行が旅をすることになりました。エイジは薩摩藩の悪いヤツ(家老だったかな)なので、そもそもの発端の回と結末の回に出ればいいのか。しかし薩摩まで出向いたか黄門よ。偉い!
薩摩隼人エイジ、ナリは大層かっこよいのですが、薩摩弁がちょっとヘン。ほぼ標準語ときおり薩摩弁が混じるといった塩梅で、なんだかハラハラしました。さらにエイジより悪い人柳沢吉保が山形勲、ずっしりとした存在感なので、ややエイジがかすみがち。山形さんは大体毎話に出演されてただろうし、そりゃあ仕方がありません。
この第三部シリーズ、中野誠也さんファンはとうにご存知でいらっしゃいましょうが、悪セイヤです。かっこよいです。準レギュラーです。ぜひ。第1話には有川正治さん、確か第3話には島田順司さん、あとあちらこちらに結束作品の常連さんが。最終巻DVDの特典映像、全話予告編で確認しました。まあ東映作品だから当然なんだけど、そんな楽しみも。成田三樹夫さんの前髪たらしたお庭番もよろしかったわー。
当時の時代劇は年齢を問わず、イケメンをそろえておりましたねえ。今は黄門様に昇格した助さんも、横内正の格さんも(←初めてお見受けしました。ワタシのリアル格さんは大和田伸也から)、本当に男前。うっかり八兵衛まで心なしかりりしく見えました。眼福眼福。
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