おいしい　千葉　～ponの食べある記～

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幼児期にトンカツに対して何かコンプレックスを持つような強烈な体験があったのではないか、と疑うくらいこの食べ物にはぞっこん弱い。代替品は存在しない。肉汁したたるポークソテーでもプリプリのエビフライでも、私をなだめることは不可能だ。身体のいちばん奥底の、生存欲から生え出たトンカツ用スペシャルバージョン食欲が、喉から腕を出してきそうな最大最高テンションで、その専門店に足をむけることを強要するのである。

ボートピア正面口にある「おぎ」に向った。

小上がりとＬ字カウンターのみのこじんまりとした店内だ。二人だけできりもりしている。ロースカツ定食を頼んだ。夕方５時だというのに、盛況だ。場所柄だろう、競艇新聞を見ている人が何人かいる。

二人は客の話をまともに受けながら、カウンター内でそれぞれの仕事をこなしている。全部わかりきってるさと言わんばかりの、ロスのない動きっぷりだ。肉をカットする、広げて整型する、切れ目を入れる、上から叩く。片やむこうでは先客の味噌汁を準備している。

それでも１０分くらい待ってやっと目の前にやって来た。どうりで時間がかかる訳だ。厚みが３センチ強はあった。ふだん（安いとんかつばかりねらっているので）厚みなんてどうでもいいや風に言っている自分が、実地に実際の十分な厚みをみてしまったら、ころりと豹変して（う、うまそう）と、そのボッテリした彼の体型に一目惚れしてしまっている。

じっくりと、なおかつ、そーっと、しっかりと噛む。噛みに行く。敵は想像より硬かった。というか、自分のとんかつ歴の中でこんなに調子の良い厚みの経験値が少ないために、噛み荷重をうまくコントロールできなかった。肉断面の縦筋がギュッと圧縮されて、ジュッと音をたてたようだ。うまみの実質が豪勢に押しよせる。肉よありがとう、フライの衣よありがとうと叫びだしたくなる瞬間。トンカツだからこそ実感できるこの充実。コロッケでは駄目だ。柔らかすぎるし、繊維を感じない。エビフライでも駄目だ。淡白すぎるし、肉的な充実を感じない。イカフライなんて論外だ。ヘナヘナで、場合によっては伸びきった皮でパッチンされるかも知れない。トンカツだけだ。唯一トンカツだけがなし得る境地だ。歯の表面が、歯ぐきが、舌の接触面が、口蓋の関係部署すべてが、油でギトギトになりながら、その独特の歓喜の味わい咀嚼にのたうち回っていた。熱い厚いトンカツは理屈なしにうまい。

「おぎ」

アクセス：白金通りボートピア向い/八幡宿駅より徒歩１０分　Ｐ有
電話番号：０４３６－４１－０３７３
営業時間：１１：００－１４：００/１７：００－２１：００
定　　休：不定
メニュー：ロースカツ定食１２００/ヒレカツ定食１４００/
　　　　　かつ丼９００/海老フライ定食１４００/串カツ定食１２００/
　　　　　上カツ丼１０００/しょうが焼定食１２００/
　　　　　味噌焼定食１２００/ライス２５０/味噌汁２００/
　　　　　単品は定食より－３００/
評　　価：☆☆☆☆

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