おいしい　千葉　～ponの食べある記～

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話題の一軒家レストランだ。通りからは完全にはずれていて、このロケーションである。お忍びっぽい雰囲気満載で、八幡北町の「きよみづ」より更にグレードアップしている。お店に来たというより、ほとんどこのお宅によばれた感覚に近い。

テーブルの上にメニューはない。予約のときに決めてあるので、何も言わないまま厨房では支度がすすんでいる。奥さんがおしぼりを手渡してくれる。

半蔵門に「三城」（さんじろ）という蕎麦の店があった。店名の表札が表にあるだけで、入口ドアを引くのに勇気がいった。席につくと、同じように黙っておしぼりが出された。メニューがないので、訊こうとするがその間合いもなく（どうぞ）と酒と突出しがやってくる。チビチビやっていると、目の前にざるがやってくる。メニューも注文受けもないまま、席についたお客すべてがそのやり方で通される。ざるそば一品しかないお店で、客もそれを承知しているから出来るのだろう。２０そこそこの若僧が何も知らないまま訪ねたのだから、面食らうのは当然だった。味のほうは、これまでに食べたうちで最高だった。（そのときは１５００円だったが、今は値上がっているかも知れない）

しかしその経験のおかげでメニューがない店というのは、いい物を出すというのはよく分かった。そのときの趣向・腹具合など関係なく自分に選択権がないのは、一見不自由で外食の愉悦を味わえない気がするが。そうではない。今の季節、旬の素材、今日の仕入れ等で、そこの板さんがプライドと意地をかけて（おまかせ）を組むのである。下手なものが出てくるわけがない。（「三城」の場合は一品だけだが）おまかせこそ至高のメニューであると、私は固く信じている。

この店のおまかせ和膳がやってきた。刺身はこちとイカ。旬のこちが嬉しい。艶々で、食べるとぷりぷりしている。天ぷらはいんげん、玉ねぎ、蟹爪など。揚げたてがすぐ供されるので、うまいことこの上ない。ほかに鱧の木の芽あえ、飛竜頭など。京風の上品な味つけで、それぞれ丁寧な仕事が感じられた。

別に上品を気取るわけではないが。こうやって大胆に小柄ミニモニ系で細工をして供される場合、食べるほうも普段より数段控え目な口のあけ方・食べ方・咀嚼の仕方で応じるようだ。「ちばから」とか「味覚」のラーメンと格闘しているときとは、絶対にちがう。ずっとトーンダウンし、ひっそりと厳かに粛々と格調高く食をすすめている。

最後に、アイスコーヒーをサービスで出してくれた。窓外の景色に目をやりながら、それをゆっくり楽しんだ。

気持ちの良いお店だ。店のサイズも無関係ではないのだろう。無理に親愛ぶったり、あちらから積極的に話しかけてきたりはしない。こちらから話しかけていって、それからお相手をするという感じだった。つかず離れずの日本的な饗応で、変な湿度がなくて心地良い。座敷もあるというので、静かに食事を楽しみたいときは、そちらが良さそうである。

「日本料理　傳」
住　　所：市原市五井１９３４－１
アクセス：五井中央通り　踏切に向かう道に曲がりすぐに右折　突当り　Ｐ（６台）
電話番号：０４３６－２１－２７６７
営業時間：１１：００－１４：００/１７：００－２１：００/（要予約）
定　　休：月曜日
客　　席：テーブル２卓/座敷６畳２間/
利用種別：個人向き/少人数向き/家族向き/お忍び向き/接待向き/
メニュー：（昼）おまかせ膳１６００(平日）/昼御膳２１００/傳ミニ懐石３２００/
　　　　　　（夜）厳選おまかせコース４２００/５２５０/８４００/１０５００/
　　　　　　瓶ビール５２５/生ビール５２５/ソフトドリンク３１５/
評　　価：☆☆☆☆

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