陣痛室


11時に婦長が点滴をしにやって来た。それまでは婦長が来ると夫にしがみつくのをやめていたのだが、もはや恥もなくなりつつあった。
陣痛は徐々に強まり、陣痛の合間には次の痛みの恐怖に怯えた。痛みのたびに夫の腕を握り締め、顔に力を入れ、叫んでもいた「痛いよ…痛いんだよ…助けて…」。最後のほうでは「お願い殺して」と言っていた。さぞ夫も困ったことだろう。婦長は「赤ちゃんも頑張っているんだよ」と言っていたが、もはや私にはこの苦しみの意味も分からなくなっていた。出産という認識がなくなっていた。痛みのたびに黄色い袋が出てくるという変なイメージがあった。
お昼過ぎまでそのようにもがいていた。しかし途中婦長が「力を入れないほうが子宮口が開きやすいのよ」と言ったので、私は出来るだけ力を入れないように試みた。朦朧とする頭の中で「痛みを受け入れよう。痛みを感じないようにもがくから余計苦しいんだ」と悟りを開いたような境地になり、腰にも力を入れず、陣痛の波に素直に従ってみた。すると叫ばないでいることができた。しかし周りには私が急に黙り込んだため、陣痛が弱まったように見えたらしい。
午後2時ごろ先生の診察があった。「いきんでみていいよ。そしたら全開大になるかもしれないから」と言われた。私はまだそんなにいきみたいわけでは無かったがやってみた。「うんちも出ちゃうよー」と叫びながらいきんだ。果たして出てしまったと思う。陣痛促進剤の内服も併用するように支持されたが、私は拒否した(こんなに痛いのに!ヤダ!と)。その後は再び叫ばずにはいられない状況となった。さっき悟りを開いたつもりだったのにぃと泣き叫んだ。痛みのたびにいきまずにはいられなくなり、いきむとその後に猛烈な腰の痛みがあり、もう何が何だか分からなくなった。
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