Half Full!~PD~

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発症時の日記1


翌日、今度は家でたまたま一人で食事をとっている時、またもや急激な息苦しさを感じ、更に今度は理由もわからない強烈な恐怖が私を襲った。しばらくして呼吸は落ち着いても、いてもたってもいられないような恐怖感は抜けない。それでも「気のせいだろう」としばらくは様子をみることにした。
 ところがその後今度は、その恐怖感が私の頭を少しでも横切るたび、本当に息苦しくなるという繰り返しが始まった。いつ、誰と、どこにいてもその恐怖は抜けず、思い出しただけで実際にそうなってしまうから、一刻一刻が怖い。
 それでも最初の頃は、「気分転換、気分転換・・・」と、何とか家や会社でもやり過ごすことが出来たのに、だんだんに悪化し、それまで平気だったことが徐々に平気でなくなって行くのだ。
 例えば『窓が閉まっていること』『お店の薄暗い照明』『湯気』『地下』などが、異常に気になりだし、それら全てが息苦しさを呼ぶ対象となって行った。また、息苦しさもひどくなり、それによって一時的に手足が痺れて感覚がなくなったり、耳が聞こえなくなったりする。頭では「別に何でもないことのはずだ!」とわかっていても心臓はものすごい速さで動き出し、息苦しくなって、私の意識とは別の部分が勝手に働いてしまう。
 私は完全に私自身のコントロールが不能になって行くことを感じた。まるで何かにとりつかれたように、自分自身の精神をコントロール出来ないのは、今までのどんな恐怖より不安より大きくなって、また私を襲う。
 そして私は二人になった。自分の肉体から魂が飛び出してしまうような感覚に至り、通常生活を送る自分と、あまりにもの強烈な恐怖に動けなくなって膝を抱えている自分と二人の自分が出来上がってしまった。
 全てのものに現実感を失い、目の前にある机や椅子、家族や友人、自分自身までも、本当に存在するものなのか触れて確かめないと、声を聞いて確かめないとわからなくなった。同時に、一秒一秒が怖く、また、その異様な恐怖感を持つ自分自身をこの先も背負って生きていかなくてはならないという自分自身の存在自体が既に恐怖になって行った。「私が壊れて行く」と感じた。
 そんな時、知人に心療内科に行くことを勧められた。『心療内科?』と思いながらも私は翌日一大決心をし、104の番号案内で病院を調べ、病院で診療を受けた。いくつかの問診の後、『パニック障害』と診断され、薬を飲むことになった。すると、発作は確かになくなった。でも、「またなるのじゃないだろうか」という不安はずっと消えなかった。
 だんだん外に出ることも、人と会うことも不安になって、会いたい気持ちはあるのに、時間がせまってくると異常な程に緊張し、「息苦しくなって、いてもたってもいられないようになってしまっても、自分だけ急に帰るわけにはいかないだろう」と思うと、プレッシャーが大きすぎて耐えられなくなった。発作は治まっても、私自身の不安は元には戻らなかった。
 一人で焦っていた。その焦りは苛立ちと悲しみと苦悩だらけで、頼りにしていた五感さえ、何者かに支配されていくようで、好きな音楽を気分転換に聴いても、今まで通り聞けない。テレビを見ていても普通に見ていられない。急に怖くなって消したくなるのだ。
 私へ残された道は、本当に気が狂ってしまうか、それが怖くて「死」を選ぶかどちらかしか残されていない気がしている。』



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