Half Full!~PD~

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当時一番の追い討ち-友達-


そんな知識は持ち合わせていなかったのだ。
ただ、「死にたい」というより、発作が増していっていたので「死ぬことに引っ張られて今にも崖から落ちそう」という感じと、発作の多さに(発作という自覚すらなかった)、一刻一刻が怖かった。一秒先が怖いような異常な感覚で、『自分が壊れる』と思っていた。頭の中がおかしいとは自覚があった。
そんな時、それまでしょっちゅう家に集まっていた4人組の一人(「発症のきっかけ」参照下さい)が心理学部を卒業していることを思い出した。
彼女に電話をした。「死にたいというか、死ぬことに引っ張られる感じがして・・・」などととにかく症状を説明し相談した。かなりの頻度合で会っていた友人だ。
電話をして話をするとその途端に彼女はムッとした声になった。
ー一応「心療内科というものがある」ということだけは言われた。でも彼女の様子は今までと急変していた。

その後彼女から、「あなたに私は傷つけられた!」という内容のメールが来た。
彼女は私の発症の半年前に結婚していた。
そしてその後妊娠し、少し前に流産していた。
要するに、彼女が『命』というものに考えさせられていた時期に、私は悪気なかったが、神経を逆撫でしたのだ。特に、「死にたいような、死にそうな」という私の言葉が。
私は謝った。何度も。
週2日ほど会っていた友人だ。親友と思っていた。大好きだったから、傷つけようとして傷つけるわけはない。
しかし、すごい勢いのメールが来た。それを読んだときの発作は忘れられない。

-下記彼女から来たメールの概略-
「あなたは辛いことを誰かにわかってもらおうとしているみたいだけど、私は辛くても絶対に一人で耐える。昔からあなたは自分をわかってもらおうとしすぎだ」
「旦那に慰められても、私は『あんたになんか何もわからないでしょ!』と言っています。それが事実だと思うし、夫婦だから、自分がそうやって当たってしまうのはしかたないこと」
「私は父が亡くなった時に、強く生きていこうと決めている(二十歳位で彼女はお父様を病気で亡くしている。兄弟は彼女を入れて4人。裕福な家庭)」
「あなたが可愛そうな人と思った」
「私の友達は失恋したけど、辛いけど黙って耐えている」
「あなたは二股をかけていて(「発症のきっかけ」参照下さい)、私とは違う世界の人間だと前から思っていた」
「私を友達と思えないなら思わなくてもいい、こういう人間なんで。私は変わってしまったから。(まったくこちらはそんな話には触れたこともなかった)」
「もう4人で会うことはこの先はない」
「新しい何も知らない人の方がわかってくれる」
「あなたとは距離を離したいので」
「昔からあなたはこうっだった、ああだった」・・・・等
全てに反論はしなかった。悲しくて不思議と反論は思いつかなかった。
それに好きだったから反論がなかったし、「あなただってこうだった」なんていうようなことがそれまで一度も思ったことがなかったので、全く反論がなかった。
でもしっかり私にはそれが最後の追い討ちとなり、一気に症状が悪化した。
とにかく、13歳から28歳まで(中学高校が同じ)ずっと一番近い友達だった。

病院に行って、「死にたいような、引っ張られるような・・・」の原因が、私が病気であり、その感覚は症状であることと傷つけるつもりはなかったことさえも謝ったメールしたが、「可愛そうな人だなと思った」的な返事が来た。
謝りたくて電話をしても、休みの昼間でも旦那が出て、「少々お待ち下さい」のあと、「今寝ているから」と言われた。
しばらくして向こうがちょっと落ち着いたのかメールが来たが、
「もし電話してくる時は、必ず『今大丈夫?』と聞いて下さい。今まで、手が離せないのにあなたの話を聞かなきゃならないときがあって迷惑だったから」と。
そんな仲だったのか?『今ごめん、あとでかけ直すよ』と言えないほどの。
悲しい。ただそれだけだった。
それから5年間で彼女からの電話はたった一度もない。
周りの他の友人からは、「彼女はもう気にしてないから平気だよ。あなたが気にし過ぎなんだよ」と言われたが、今でもそうとは思えない。
私だって、マンション販売で相当忙しかった時(その時点ではたぶん仕事の拘束時間は4人で一番長かったと思う)、皆が私が帰宅する位には家のすぐ近所に来ていて、「今から行くから~」と言われ、1時、2時までいて、『うーん、早く帰ってよ~。眠いよ~。トホホ』という気持ちの時はあったが、「トホホ」くらいで、それよりもそんな皆が微笑ましく好きだった。

その一件から学生時代からの友人がの全員がそう思っているようで怖くてならなくなった。ベタベタ会っていたのは4人組だったけど、なにしろ一貫教育の学校だったので、そこから広げた10人前後がかなり仲が良かった。
私は下手に純粋だったのか、家族以上に無条件で皆が好きで、不満を持ったことがなかった。勿論一人一人の短所もわかっていたが、口に出すようなこともなく、私の中では短所も「その子」だった。だから短所って感じにも受け取ったこともなかった。そんなの通り越すほどの友人だった。
でも、その中でも一番近いところにいた彼女の発言に、「昔から○○と思っていた!」とか、「あなたは可愛そうな人」と言われてしまうと、皆が私をそう思っているかもしれないと思えて、皆が怖くてならなくなった。

病を知って友人たちは私に気を使ってか、連絡して来なくなった。
まあ、今思えばどう声をかければいいのかもわからなかったのかもしれない。
だから、「そっとして」おいてくれたのかもしれない。
でもあまりにもベタベタしていたのに一気に引かれてしまい、その反動は私には逆効果だった。
私から他の何人かに電話をした時もあった。でも、「今忙しいからゴメンね」となり、折り返し電話があることもなかった。
「そっとしてあげる」という言葉の陰に、『ちょっと面倒だから放っておく』という考えがある友人と、本当に温かく「そっとしてくれてる」友人の違いが初めて透けて見えた。見たくなかったのに、透けてしまった。
落ち着いてから、例の一件の話を相談しても、「あなたが気にし過ぎなんだ。向こうは気にしてない」といわれることが多かった。だから相談して、私が悪いと言われているような気がした。
でも、もし、皆が学生時代から無条件に大好きな、何をしても許してあげたいくらいの友人に過去の自分のことまで色々言われて、少し落ち着いてからこちらから電話しても、電話も切られたりしたら、気にしないで、ショックを受けないでいられるだろうか。しかももう一切の連絡がないのに。

だからそれ以来、「友達」という言葉に私は敏感だ。

今でも思う。
確かに私が彼女に相談したタイミングが悪かったかもしれない。
でももし私が相談を受ける立場だったら、このあまりにも長くガッチリ仲の良いこのメンバーの中だけでは、唯一小さな仲裁をこころみたと。それだけ大事に思っていた。

そして、とうとうそこから飛び火して同じ年頃の女の子が怖くなった。特に昔から知っている人ほど。
それは今も続いている。

そして、彼女の言葉にちょっとしてから思ったこと。
本当に、自分の辛さを誰にもわかってもらえないし、わかってもらいたくないなら、人間は相手に怒らない。最初から諦めている。期待がある相手だから、「わかってもらえないし、傷つけられた」と思うのだ。
それでも人間はどんなときも自分を誰かにわかってもらいたい欲望は持って当たり前だ。それは悪いことでもない。だから結婚したり恋愛したり、友達を持つ。でもなかなか最後まではわかってもらえないから、皆がどこかで孤独なんだ。だから絵を描いたり、歌を歌ったりする。
距離を置きたいとき、「距離をおきます」なんて相手に教えてあげなくてもいい。そっと離れればいい。
私が良い例だ。
「他人にわかってもらえなそうなこと」は、最初から自分で判断しているからこそ怒ることがなかったんだ。無条件で皆を好きだったんだ。
そして、だからいつでも、悲しいかな、明るかったのだ。
笑い話のように相談や愚痴を言うことがあっても、底の底の自分しかわからないと思う部分はそんなにマジメに話さなかった。
それでも私は満足していた。
どうやったって他人にわかってもらえないことは、皆が持っているって中学生くらいから知ってた。
そして、だからと言って、心配してくれる人に、「私の苦しさは誰にもわかってもらえるとは思わないし、わかってもらいたくもない」と口に出したらおしまいだ。
最終的に自分と同じようにはわかってもらえなくても、「私をわかってくれようとして努力してくれてる人」は、それだけでありがたく大切じゃないか、と。私には少なくとも友達はそんな存在だった。「わかってくれようとしてくれている」ことだけで満足して温かかった。

それをたった一人にだが否定されて、飛び火で大火事になってしまった。
そして何だか学生からの友人の皆と前のように話せなくなった。
私が接触すると私が気付かないで相手を傷つけるかもしれないことも怖いから。特に女同士は難しいと感じた。
そしてちょっぴり、ずっと同じ学校で同じ友達というのも考えものと思ったりする。

それが時がたつと劣等感に繋がった。
今、病気を克服し始めてもまだ、一番の最終的トラウマとなっているのはこの一件だ。

心では割り切っているつもりでも、今でも元のように仲良くなって感激してる夢など見たりしている。
本当はやっぱり皆が好きなんだけど、私だけが悪かった感じになったことがショックで忘れられなくて会うほどまで自信がないのだ。そんな自分に情けなさと、その原因である彼女「一人」以外の皆までを今でも少し避けていることを申し訳ない気持ちがしている。


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