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2009/01/05
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カテゴリ: オリジナル小説
女性向けですので、気をつけて読んでください。

でも、まだ男性でも読めるとは思います。

「永遠のアルセン」 第一話 その1


いずれ世界が戦火で覆われるという、不用意に発した預言者の言葉により、各地で戦火がくすぶり始めて十年。

大陸の東側ハイエルク地方では、三年前の大規模な戦争以後、大きな衝突は姿を潜め、束の間の平穏が訪れていた。

ハイエルク地方には大小いくつかの国があるが、その中で最も大きいのがエルン連合国になる。しかし、十五年ほど前に元々のエルン王国の周辺に点在する民族が集まり、エルン連合国と改められたため、まだまだ国としては未完成というイメージが強い。


ただ、この国の縦の繋がりは確かに未完成だが、周辺民族の横の繋がりは古く、戦火の中エルン連合国が勝ち抜けた所以となっている。


そのエルン連合国の村で、オレンジと緑の民族衣装の人物を見かけ、アルセンはふとマインの妻メーネを思い出す。

彼女はエルン連合国に点在する部族の一つ、セーダルの出身者だと言っていた。



二十年前の笑顔を思い出し、アルセンは気づく。

もうメーネも四十を過ぎ、マインも五十前になっているはず。

派手な印象を与えるマインの容姿は、きっと今も変わらないだろう。


「マインとメーネの知り合い?」

マインの幸せを確認したいがためだけに声をかけてみるが、どう見てもマイン達とは世代の違う自分に不信の目を向ける。

アルセンは自分の容姿を最大限に利用し、笑みを浮かべた。

セーダルの青年が軽く頬を染めるのを、内心ほくそ笑みながら言葉をたたみかける。

「ええ、昔お世話になって。」

何とも当たり障りのない言い方だが、青年は納得したらしく、表情を改める。

「残念だが……。」

その言葉にアルセンの体を怒りが駆け抜けた。





元々セーダル族は遊牧の民族で移動可能なテント暮らしだったが、十五年前エルン連合国となる際、ほとんどの部族が定住を決め、町を形成していた。


手当たり次第に話を聞き、マインの元へたどり着く。

勢いよく扉を開けた自分に話をしていた者達が振り返る。

その中で一人中年にしては派手な若々しさがある男がまっさきに目に入った。


懐かしい、十年を共に旅をし、メーネに負けを認め二十年会わなかったマイン。



「マイン、メーネが死んだというのは本当ですか?」

その勢いにマイン以外の者も思わずアルセンに注目するが、マインは質問の内容以上に疑問を持った事を質問する。

「……お前、誰だ?」

マインの妻について質問するなら、込み入った事情なのだろうと勝手に思いこんでいた周りが脱力する。

真剣な内容を話していたのだが、腰を折られてしまった。

「本気で、言ってるんですか?」

アルセンの顔に怒気が走る。実はマインはちゃんと記憶に引っかかる何かがあったのだが、説明しないアルセンに非があった。

「あー、マイン……。」

周りからの視線を受け、とりあえず誰だか思い出せないアルセンを連れ、自分の家へと向かった。

歩いてる最中もアルセンの刺すような視線を受けていたマインは、多少の愛想笑いと共にさっそく話を再開する。

「えぇ~、俺の知り合いのようだけど、すまん。お前を見て浮かぶ奴が何十年も前の知り合いなんだが、あいつの息子か……な?」

違った場合のためにあえて名前は出さず、とりあえず記憶に引っかかる顔と現実的な話を結びつけ尋ねてみる。

「マイン……。」

アルセンの顔が感動に変わる。メーネの事に気を取られて、改めて再会の喜びがおそってきた。

マインを抱きしめたい衝動を抑え、アルセンはマインの誤解を解く。

「マイン、私です。年を取っていませんがアルセンです。」

アルセンは美しい微笑を浮かべるが、村で出会った青年と違い、マインは頬を染めたりはしなかった。

「アルセン?そりゃあ面白い冗談だ!何だお前、やっぱりあいつの息子かぁ。いや~アルセンの息子にしちゃあ、ちょいとばかり華奢だな。」

マインはアルセンの名前が出てきたことで、相手の正体が分かったとばかりに肩をバンバンたたく。

「マイン、違います。私はアルセン本人です。以前にちらっと言ったでしょう、私は、異氏の一族です。」

マインの顔が引き締まった。

「異氏の……?そういえばそんな話を……。」

内心、重要な話だろうが!!とアルセンは突っ込んでいたが、真剣に話さなかったのは自分である。

「異氏の一族って言ったら、あれだろ?とんでもなく寿命が長くて、あーなんだ?相手に合わせて体を変えられる……とか……。」

マインの中でカチリと符号が合ってくる。

「げっ!マジかよ!?」

聞き流していたな、こいつと思いながら、アルセンは引きつった笑みを浮かべる。

「って、本当にアルセンか!どうしたんだよその体!一回りも小さくなって。」

華奢な美少年と見紛う青年に、自分が覚えているアルセンのどちらかと言うとがっしりとした体格と比べて、マインに悪寒が走る。

以前のアルセンは、年を取ったとはいえまだまだたくましいマインと負けず劣らずの体格で、どちらかと言うと無口な男だった。

その違いに寒気がしても仕方が無い。

「しばらく一緒に旅をした女性の好みがこれだったんです。そこまで気色悪がらなくてもいいでしょう?」

以前との体格の差を自覚しているから、何とかマインのおぞましいものを見るような目に耐える。

「そうか!わかった!そのしゃべり方だ。私ってなんだよ、私って!」

言葉遣いが違うのは確かに印象を激しく変える。昔のアルセンの一人称は俺だった。

「今の体に以前の口調じゃ、違和感を与えるでしょう。」

「俺には今の方が違和感を感じるぞ!そのしゃべり方には断固反対だ!!」

いいかげんアルセンも飽きてきて、話の修正に乗り出した。

「わかった、話し方を戻す。これでいいんだろう。

で、最初に聞いたな?メーネが死んだというのは本当か?」

口調が戻ったことで冷静になったのか、マインも話の修正に加わる。

「ああ、死んだよ。病気だった。まっさか、病気で死ぬなんてなぁ、あいつが。まだ四十過ぎだぜ?」

その落ち込む顔に、アルセンはマインにとってのメーネの死の重さを感じ取った。

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ここから先はこのブログに載せるのは恥ずかしいので、載せません。

もし気になった方は、私の 携帯サイト から読むことができます。

「恋人は同居人」のショートマンガなんかもあります。

本当に読んでも大丈夫な方だけご覧くださいませ♪





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Last updated  2009/01/06 10:30:57 PM
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