おるはの缶詰工場

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甘い僕

   「甘い僕」



「ほら、気持ち悪いって言ってただろ」

 そう親切なフリをして手を差し伸べてくる和哉を僕は睨んだ。

「もう治ったから平気」

 さっきと同じセリフを繰り返したけど、和哉は聞き入れてくれそうにもない。

 銀色の包みに入った独特の薬。……そう摂取のしかたの独特な、あの薬はなんとか諦めさせたけど、今度は頷いてくれないかも。

 よっぽどあの薬が使えなかったのが不満だったのかな。

「座薬使わなくてもいいくらい回復したなら、お風呂に入りたいだろ?」

 と言われてついつい頷いたのが運のつき。

「一人では入れるっ」

「どうして? もし入浴中に具合が悪くなったらどうするんだよ。大丈夫、ちゃんと隅々まで洗ってやるから」

 にっこり笑うところが怖い。

 毛布をギュッと握り締め「だったら、お風呂いらない」と抵抗するも、あっさり抱き上げられてバスルームに運ばれてしまった。

「さっぱりして、ぐっすり眠りたいだろ? それに、何を恥ずかしがるんだか、見てないところなんてないし、前は秀から誘ってくれたこともあったのに」

 あのときは、ちょっと和哉をからかっただけで、本気で入る気は全然なかったのに。

 けど、いい気になって誘ってしまったことは事実で、反論できない僕を和哉が手早く剥いてしまう。

「……病み上がりなんだけど」

「大丈夫、ちょっと触るだけ」

 艶っぽい視線で僕を見る和哉に、僕はもう抵抗できなかった。



「あんっ……ダメ、そこ」

 バスルームに響く自分の声に、耳を覆いたくなる。

 和哉は僕を抱き抱えて、背後から左足の内腿の辺りを撫でてくる。すると、くすぐったいようなじっとしていられない気分になってくる。右足を洗われているときはなんでもなかったのに。

「面白いね、こっちだけ性感帯があるんだ」

 と和哉も感心したように、ぐいっとそこを掴む。

「あぁっ、やっ……」

 バスソープまみれの手で掴まれて、僕はビクッと身体が跳ねる。腰が無意識のうちに揺れてしまう。あっちこっち触られてグズグズになってしまい、もう和哉のされるがまま。逃げ出すこともできない。

 しかも、僕のモノは硬く張り詰め、蕾は物欲しげに震えていた。

 背中で自己主張をしている和哉が欲しい。硬くて熱い……。

「かずやぁ……」

 情欲に濡れた瞳で振り返ると、和哉が満足そうに笑っていた。

 悔しいと思いつつも、その顔に見惚れてしまう。

 甘いなぁ、僕も。

 反省しながら、和哉の望む淫猥な言葉を口にした。



「健気な男」の続きでございます。
和哉はあの薬は使えなかったけど、しっかり遊んでます。
もう~、甘いんだから秀くんは。          2005/12/10


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