お空のあいちゃん

お空のあいちゃん

帰国



飛行機のなかから、真っ白な雲のじゅうたんを眺めていました。 <この雲のむこうに、あいちゃんがいるのかな。。。> そんなことを思いながら。。。

成田に着くと、父と母が迎えにきていました。 “おかえり”二人はそう言って私を出迎えてくれました。 私も、“ ただいま”と笑顔でかえしました。

留学して以来、冬に日本に帰国したことはありませんでした。 久しぶりの日本の冬でした。 街はまだ、かすかにお正月のなごりが残っていました。

6月に日本からアメリカに買える時、“赤ちゃんが生まれたら、しばらくは戻ってこれないかもね。” と、母とは話していました。 本当なら。。。まだ、あいちゃんは私のお腹のなかにいるはずでした。 本当なら。。。いまごろベビーベットを用意しているはずでした。

でも。。。私はからっぽのお腹で、帰りました。 あいちゃんではなく、あいちゃんの写真をもって帰りました。

写真はみんなにみせました。 写真をみせることに悲しみは感じませんでした。それより私の娘よと言って写真を披露することに、うれしさを感じていました。“かわいいでしょ。”そう言って、私は胸をはって写真をみんなにみせました。

いとこの子供達に何気なく手をつながれたことがありました。 右にあきちゃん、左にあすかちゃん。 あきちゃんが私に聞きました。“あかちゃん、どこにいっちゃったの?” 私は“あのお空の上にいっちゃったんだよ。”と答えました。 あすかちゃんは“ あかちゃんの名前なんていうの?”と聞きました。“ あいちゃんっていうの。”と私は答えました。 ふたつの小さな手は私の心をすこし暖めてくれました。

家族や友達の前では元気にしていました。だからみんなは口をそろえて“ 思ったより元気でよかった。”といいました。でもやっぱり夜1人で眠る時には、涙がたくさんでました。毎日、毎日、夜、ベットに入ると、あいちゃんの写真をみて“ごめんね”と言いながら泣いていました。

アメリカに帰る日はあっと言う間にやってきました。帰りのスーツケースにはたくさんのおみやげと、家族や友達のくさんの愛情をつめこみました。

今でも私は飛行機にのると、空を眺めて思います。<この白い白い雲のうえで、あいちゃんは楽しく遊んでいるのかな> と。。。


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